日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

日本の漁業が崩壊する本当の理由.jpg

すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2024年11月05日

行政機関の積極的関与を担保(改正漁業法註解シリーズ3)

ふたたび、こんにちは。

減少する魚類資源に対して、行政が積極的に関与して、規制を設けるべきである、とした条文が、第6条として新設された。
私たち小型船の許可漁業というのは県が出すものだが、その県が、前沖の資源に対し、「漁業者を相手に面倒な合意形成するよりも、獲りたいだけ獲らせて、自滅させれば良い」という態度には、あきれかえってしまう。(※1)
しかし、これほどあからさまでないにしても、「放っておけ」という態度は多少なりともあると思う。

岩手県では、かご漁業が周年操業の許可漁業だ。
これに対し、心ある人たちは、「周年操業はよくない」とずっと前から主張してきたが、かご漁業だけに依存している漁師が賛成しないため、県は、合意形成されていないと判断し、この問題に手をつけない。
新条文である6条は、これに「手をつけろ」と言っているのだ!

漁業法を改正するにあたって、各地で地方説明会をやり、意見集約したという。(※2)
この通達は、水産庁から県へ、県から各漁業団体へという手順だとは思うが、それなら、なおさら県は第6条のことを自覚していると思うし、これをもって、積極的に漁業者に関与すべきである。

それにしても、地方説明会をそんなにやったのかね。
震災後のドタバタもあいまって、私は記憶にございません。



(※1)
◆条文
【新第6条】
 国及び都道府県は、漁業生産力を発展させるため、水産資源の保存及び管理を適切に行うとともに、漁場の使用に関する紛争の防止及び解決を図るために必要な措置を講ずる責務を有する。
◆註解
 今回の改正により削除された旧第6条(漁業権の定義)に代わって、新たに第6条(国及び都道府県の責務)が設けられました。
 この新設された条文について、東京海洋大学准教授の勝川俊雄氏が執筆した「臨時国会で議論されている漁業法の改正について」(Yahoo Japan ニュース[2018年11月9日7時30分配信])と題する記事では、次のように記載されています。

 現行の漁業法でも、国及び都道府県は漁獲規制を必要に応じて行う権限を持っているのですが、資源の保全を適切に行う責務は規定されていません。規制の権限はあるけど、規制をする責務が無かったのです。漁業者の多くは、自らの漁業活動が規制されるのに反対ですから、地元漁民の反対を押し切ってまで規制が導入されることはほとんどありませんでした。例えば、私の友人の漁業者が、県に産卵期の漁獲規制を要請したところ、水産課の職員から「漁業者全員の合意をとってきたら規制の導入を検討する」と言われたそうです。行政機関には、「漁業者を相手に面倒な合意形成するよりも、獲りたいだけ獲らせて、自滅させれば良い」という対応が許されたのです。・・・(中略)・・・
 今後は、適切な規制を怠った場合に責任を問われることになるので、非持続的な漁獲を放置できなくなります。法律に水産資源の保全及び管理が責務として規定されたことは、行政にとってきわめて大きな意味を持ちます。
・・・(中略)・・・
 特に管理義務が明記されたことは、行政の不作為に歯止めをかけて、日本の漁業管理を大きく前進させる効果が期待できます。
https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20181109-00103429/
(「改正漁業法註解」p30)

(※2)
現在まで引き継がれて来た「江戸時代に確立した地域共同体による漁業秩序、漁業慣行」が、改正後は崩壊するのではないかと危惧されます。この点について、水産庁ホームページで掲示されている「漁業法等の一部を改正する等の法律 Q&A」と題する文書では、「一、総則」という見出しの下に、「今回漁業法等の法律を改正した理由は何ですか」という質問に対する回答という形式で、次のよに記載されています。

1 かつて世界一を誇った我が国の漁業生産量は、今やピーク時の半分以下に減少しており、また、漁業者の減少・高齢化も急速に進んでいます。水産庁の試算では、このままでいけば約30年後(2035年以降)の漁業従事者が7万人程度と現在の半分まで減少すると予測されています。
2 このような中で我が国水産業を若者にとって魅力ある産業にし、国民に水産物を安定供給するという使命を果たしていくためには、水産改革は待ったなしの状況にあると考えています。
3 漁業法等の改正案の取りまとめに当たっては、水産庁が漁業者団体と連携して地方説明会など様々な機会を通じて漁協や漁業関係者等と意見交換を行ってきたと承知しています。
全漁連も漁業者団体として危機感を共有し、前向きな取り組みをされています。
4 こうしたことを踏まえ、水産政策の改革の内容をなるべく早く具体化し、必要な取り組みに着手すべく、今般、漁業法等を改正することとなりました。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/attach/pdf/suisankaikaku-13.pdf
(前掲書p25)



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「漁業調整」という言葉を抜いた理由(改正漁業法註解シリーズ2)

こんにちは。

改正漁業法シリーズをお休みしてたが、再開しようと思う。
これをぜひ書いてしまって、「今後のこと」にも記したように、保存版として残す。
なぜ、そんなことをするか、というと、わかりやすい漁業法の解説、というのがないからだ。
本にしても、Webにしても。

会社組織で、余裕のある重役たちは、それでも本を読めばわかるかもしれないが、弱い立場の一般漁民は、そういう余裕はないと思う。
しかし、法律のことを少しでもわかっていれば、いざ、権力と闘う時、力となるだろう。
法律だからといって難しく考える必要はない。
基本である目的などの根幹を頭に入れておくだけでよい。
連なる条文は、その目的から考え出されたものだからである。

私が書いた「漁業法の理解」シリーズは、わかりやすい言葉で書いているから、根気強く読めば、一助になると思う。
もし、もっとわかりやくてよい表現があるならば、連絡してほしい。

それでは本題に移り、今日のは、改正漁業法第1条から「漁業調整」の文言がなくなった理由を書く。
この問題は、一度、「漁業調整について」で、私は、漁業法は、「漁業調整」を基本的に定める法律であるから、改正前の第1条の条文のほうが、私は適していると思う、と書いている。
しかし、改正漁業法では、「漁業調整委員会制度が漁業法における基本的な仕組みとして既に定着していることも考慮し」として、削除している。(※)

まあ、言っていることはわからないではないが、一般の漁業者や漁業者以外の人へ理解を促すには、一発目に、この法律は、大きな意味での漁業調整を定めたものとやらないと、理解が遠くなる。
漁業調整機構」の「機構」という言葉はなくてもいいが、「漁業調整」という言葉だけで、みんなが理解できるのだ。
2項目に、改正漁業法第1条の「水産資源の保存及び管理」「水産資源の持続的な利用を確保する」という言葉を持ってくる。
私は、改正前の第1条のほうが良かったと思っている。



(※)
 改正の前後を通じて重要な変更点の一つは、第1条の条文から「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」と「民主化」という文言が消えたことです。この点について、水産庁ホームページの「水産政策の改革について」と題するWebページでリンクが張られている「漁業法等の一部を改正する等の法律 Q&A」と題する文書では、「今回漁業法の法律を改正した理由は何ですか」という質問に対する回答という形式で、次のように記載されています。

1 現行漁業法の制定当時、自ら漁業を営まない羽織漁師といわれた者による漁場利用の固定化といった漁業慣行の解消が大きな課題となっていたことから、漁業者主体とする漁業調整委員会を創設し、目的規定にも「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用し」、「漁業の民主化を図る」ことが定められてたところです。
2 一方、漁業法の制定から約70年の間の運用によって、当時の課題となっていた慣行は解消され、当初の目的である民主的な漁場の利用形態の構築は既に実現されています。
3 このため、現時点でなお漁業の民主化を法の目的とする必要はなく、漁業調整委員会制度が漁業法における基本的な仕組みとして既に定着していることも考慮し、目的規定の改正を行ったところです。なお、漁業者を主体とする海区漁業調整委員会の組織・機能は維持していますので、引き続き重要な役割を果たしていただけると考えています。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/attach/pdf/suisankaikaku-13.pdf
(「改正漁業法註解」p23)


posted by T.Sasaki at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 改正漁業法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月05日

改正漁業法註解シリーズ1

こんにちは。

漁業法は昭和24年にできて、漁業法改正は何度も行われている。
現行漁業法は、平成30年改正である。
それ以前にも何度も改正が行われており、昭和26年の第2次改正で、魚類資源に関して乱獲への危惧が示されている。
すでにこの時点で「乱獲漁業の拡張を停止して操業度の所要の低減を行うこと」とやっている。(※)

岩手の2そう曳きの歴史は新しい。
最初に始まったのは、昭和46年(1971年)だ。
なぜ今でも、この乱獲漁業の筆頭を野放しにしているのか、理解に苦しむ。
「許可してみて、やっぱり乱獲漁法だったから、許可を取り消す」でいいのだ。
こんなに資源が減っても、そのまま。
バカじぇねえの?

情けないことに、日本人自らが考えたものではなく外国人によって考えられたものである。
普通、右寄りの日本ファーストなら、自分たちの海をどうするのか考えるはずである。
日本の魚類資源を減らして外国産の魚を輸入させる、という方策は、日本の国を売っているようなものだ。
大丈夫かね。
ため息が出る。



(※)
 昭和26年、GHQは「日本沿岸漁民の直面している経済的危機とその解決策としての5ポイント計画」を発表した。これは・・・(中略)・・・乱獲と資源枯渇、魚価低下による漁民の困窮に対する根本的抜本的解決を可能にする長期計画として、〔1〕乱獲漁業の拡張を停止して操業度の所要の低減を行うこと(中型底曳網漁業、小型底曳網漁業の年次計画による減船、不法漁具の取り締まり、さんま漁業の操業期間短縮、まき網漁業の大臣許可制による漁船増加抑制)、〔2〕各種漁業に対する堅実な資源保護規則の整備(水産資源保護に関する法令整備により水産資源の保護培養と最高の漁獲率を維持する基礎条件の確立、資源調査研究の充実による資源量と漁獲限度の関係の解明、漁業従事者への資源保護思想の徹底)、〔3〕漁業取締のために水産庁と府県に強力な部課を設けること、〔4〕漁民収益の増加のための各種施策の実施、〔5〕健全融資計画の樹立、という5つのポイントを示すものであった。
https://nipon.zaidan.info/seikabutsu/2001/00794/contents/00084.htm
 このように漁業法の第2次改正は、「日本沿岸漁民の直面している経済的危機とその解決策としての5ポイント計画」で指摘された第1点の「乱獲漁業の拡張を停止して操業度の所要の低減を行うこと(中型底曳網漁業、小型底曳網漁業の年次計画による減船、不法漁具の取り締まり、さんま漁業の操業期間短縮、まき網漁業の大臣許可制による漁船増加抑制)」に対応することが主眼でした。
(「改正漁業法註解」p11)


posted by T.Sasaki at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 改正漁業法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする