日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

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すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2025年08月02日

20年以上前の津波の記憶がよみがえる

こんにちは。

カムチャッカからの津波で、宮古に帰ってきた。
その朝の漁は芳しくなく、浅い水深にしかするめいかがいなかったようだ。
私は皆無で帰ってきた。

他船から聞いた話では、赤前の岸壁や道路が冠水したらしいが、高浜の岸壁に帰ってきたら、ほんの少し、ゴミが上がっていた。
おそらく、岸壁の高さまで海面があがったのだろう。
牡蠣の養殖だなも、いくつか団子状になっている程度で、被害は少なく見えるが、実のところ、海中の牡蠣をぶら下げている綱が絡まっていて、これを復旧する作業がある。
一応、船を使うような時は協力する旨を伝えておいたが、気を使って「大丈夫だよ」と返ってきた。
したがって、本当のところはわからない。

今から20年以上も前、2003年に十勝沖地震が起き、小さい津波が来た。
私は、この時、ムラサキイカを釣っていて、釜石港のお世話になっていた。
水揚げした後は、夕方の出港まで寝るのだが、岸壁の濡れ具合から海面の上下動が1mくらいあるのがわかり、これが津波なんだなあ、と ぼんやり考えていた。
が、疲れているから、もちろん熟睡である。

当時、漁運丸は2隻あって、1隻は高浜へ帰った。
宮古湾の養殖被害が甚大であったからだ。
親父は漁協の理事でもあり、船頭は総代(親父は現役を退き、飯炊き乗組員をやっていた)。
帰らないわけにはいかない。
この時の大きな被害は、宮古湾だけである。
数日後に私も帰ったが、とにかく絶句した。
高浜航路など、跡形もなく、養殖棚は集合して、大きな塊となり、団子状態の棚が無数にある、といった感じ。
航路は、自由航路である。
これをどうやって復旧したかというと、佐賀組に協力してもらって、クレーンで台船に養殖棚を積み込む。
それを陸上へ積み替え、片っ端からバラし、むける牡蠣はむく。
といっても、一気にやる作業だから、その量は限られている。
それが何日かかったか知らない。
回収された浮き玉を再利用して、再び、棚を作り、海へ浮かべる。

当時、宮古漁協は、鮭をたくさん水揚げしていたため、資金は潤沢であった。
佐賀組の台船への傭船料や賃金などは、宮古漁協が出費してくれたようだ。
そうでなければ、あのような状態では、養殖漁家は誰も復活しなかっただろう。
しかし、復旧作業は、すべて個人個人の手作業である。
彼らの手は、擦れて、固くなっていた。

津波といっても、今回と同様、潮位の上下が観測されるだけで、口を開けた波がくるわけではない。
潮位の急激な上下は、海水の極端な移動を意味する。
したがって、固定されている養殖棚のようなものほど、その圧力をもろに受け、耐えきれない施設は壊れる。
宮古湾の養殖棚は、その後、何度も被害を受け、牡蠣棚のアンカーを打ち込み式にしてからは、被害が少なくなった。
3.11の巨大津波でも、棚は流されたが、アンカーは残ったため、復旧は比較的速かった。
流された棚は、ほとんど陸上にあがったため、回収作業は、比較的楽だった。
電柱にぶら下がった棚は、電力会社が切って落としてくれただろう(たぶん)。
したがって、十勝沖地震津波のほうが、復旧作業は大変だった。

私は、今回の津波では、最初から沖合にいた。
潮流計で流速を見ていたが、あまり変化はなかった。
3.11の時は異常な流速であった(何ノットだったかは忘れた)。
昼過ぎには、閉伊崎にアンカーを入れたが、ぜんぜんロープに応えないので、そのまま寝た。
起きてみても、GPSプロッターの位置情報は、ほとんど変化なし。
湾内と違って、沖合は平穏である。
今や、ますますコンクリートの壁を張り巡らしたために、津波は反射しまくり、なかなか収まらなくなっているだろう。
波の干渉で、津波が高くなる場所は必ずある。
それが、冠水の原因にもなる。

20年以上も前の津波であるから、記憶も定かでなかったが、当時、浦河へいか釣りに行っていた人の話が記憶にあったので、その人に電話で昔話をして確認をとった。
ちなみに、甚大な津波被害は宮古湾だけだったので、その記録はWeb上では探すことができなかった。

宮古湾内の養殖魚業者は、非常にタフだったのである。


posted by T.Sasaki at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 津波の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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