3回目、こんにちは。
漁業法シリーズのつづき。
漁業法には、「漁業権は物権とみなす」という条文がある。
物権は、妨害排除請求権や妨害予防請求権を持ち、漁業権海域で、権利侵害が起こる場合、これらを適用できる。
(※1)埋め立て事業などの拒否、補償交渉などは、権利侵害が争点になるが、それらを判断する場合、漁業法ではなく、民法の規定によるものである。
(※2)物権は財産権の一つであるから、それを侵害すると、民法のみならず、憲法にも違反する。
(※3)したがって、「
漁業を営む権利」で説明してあるように、自由漁業で実績と積み上げ、慣習上の権利に成熟した場合、それを侵害することは、違法行為となる。
漁業権にしろ、慣習上の権利にしろ、権利侵害となるのである。
(※4)権利というと難しいと思う人は、他人の新規事業により、生活が脅かされると感じた場合、それは権利侵害の可能性があると疑っていい。
(※5)憲法の財産権の規定から、実績と積み重ね、成熟した慣習上の権利を、その人から奪うことはできない。
この流れで考えれば、もちろん、大臣や知事が、実績のあるものに対して、漁業許可を取り消すことはできない。
(※6)私たちの生活上、慣習というのは、非常に重要な地位を占めている。
知事といえども、慣習を地域住民から奪ってはならない、ということが、以上のことからわかると思う。
住民は、生活をしていくのが最も大事であるのだから、許可を出してももらうからといって、知事や県を何ら恐れる必要はないのである。
(※7)一方、法律は万能ではないから、解釈のしかたで、濫用する人たちもいる。
何事も行き過ぎはよくない。
このことから、憲法で、「公共の福祉に適合するように」運用することが明記されている。
(※8)ここで、2そう曳きトロールのことに話を振るが、私は先日、県庁職員に言った。
2そう曳きトロールの許可は、もちろん、すでに財産権になっているから、これを水産庁が取り上げるのは権利侵害になるから、無理である。
しかし、強烈な漁獲圧で魚を獲るということは、日本の貴重な魚類資源に脅威であることは明白だ。
したがって、それをかけまわし漁法へと転換させるのは、公共の福祉となる。
公共の福祉に適合させるための措置であるから、権利侵害とはいえず、合憲となる。
と口説いたが、もちろん、「う〜ん」というだけで、快い返事はない。
面倒なのは、嫌なんだろうなあ。
強烈な漁獲圧で操業して、魚を獲り尽すのは、「悪」なのだ。
この価値判断から、法律の条文を導いていけばいいだけの話である。
旧漁業法でさえ第1条に「漁業生産力を発展させ」と明記されているからには、この考えは有効であり、改正漁業法には、「水産資源の持続的な利用を確保する」と、もっと積極的に書いてある。
あとは、水産庁に対して、論理的に意見するのみである。
水産庁管理漁業(つまり、沖合底曳網漁業)に対して、法の番人であるお役人たちは、非常にのどかである。
もう一つ付け加えるならば、沖合底曳網漁業の許可やその管理は、県がやるべきだ。
農林水産大臣は、県の意向を聞き、それを承認するだけでよい。
現地にいない人たちが、管理できるわけがないからである。
事実、数年前の、TAC制度に対する違法行為に対して、水産庁は何の指導もできなかった。
電話で指摘しても、水産庁は回答を避けた。
違法行為を容認したことになり、法の下の平等に、公務員たちが反したことになる。
これらは、決して消えない真実である。
バカじぇねーの!
(※1)
「漁業権は物権とみなす」という法の規定によって、漁業権は民法上の物権としての取り扱いを受けることになります。漁業法で物権を設定する根拠は、民法第175条の「物権ハ本法其田ノ法律ニ定ムルモノノ外之ヲ創設スルコトヲ得ス」という「物権法定主義」にあります。
このことによって、漁業権は、民法物権編の諸規定の適用を受けることになります。そして、その効果としては、
〇妨害排除請求権
〇妨害予防請求権
という「物権的請求権」を持つということにあります。「妨害排除請求権」というのは、権利の行使を妨害している者がいれば、それに対して「やめてくれ、どいてくれ」と請求する権利です。
また、「妨害予防請求権」というのは、権利の行使が妨害されるおそれがあるときに、侵害のおそれがある状態をなくすよう請求する権利をいいます。
なお、物権的請求権には、もうひとつ「返還請求権」がありますが、漁業権は物ではありませんから、「取られたから返してくれ」ということは起こりえないので、「返還請求権」は除かれることを付け加えておきます。
(「海の『守り人』論」p60)
(※2)
読者のみなさんのなかで漁業関係者であれば、漁業補償は何回かは必ず経験されているはずです。この漁業補償について考えてみましょう。はじめから結論をいいますと、漁業補償と漁業法制度との関係は何もありません。漁業補償に関係をもった人だけでなく、漁業関係者も含めて、ほぼすべての人が漁業補償と漁業法とは関係があると思っているようです。もともと、何の関係もないわけですから、「なぜ関係がないのか」と聞かれても、「関係がない」としかいいようがありません。
こういいきってしまえば、もともこもありませんので、法律的になぜ無関係なのかをまとめてみることにしましょう。それは、漁業補償の根拠法律は民法であって、具体的には、損害賠償の規定である民法第709条がそれにあたります。すなわち、「損害賠償制度」が「漁業補償」の根拠法規なのです。民法第709条は、「不法行為」の規定で、次のように法文が書かれています。
〇民法 第709条〔不法行為の一般的要件・効果〕
故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
ようするに、この規定は、「違法に他人の権利を侵害した者(加害者)はそれによって生じた損害を被害者に賠償しなければならない」ということです。この規定(損害賠償制度)だけが漁業補償の根拠規定であって、他には何の関係ありません。
ここでいう「他人の権利」についてですが、民法でいう「権利」は、法律で「○○権」と書かれた権利だけを意味しません。いいかえると、「生活に深く関係する利益」、これが「権利」と解釈されています。すなわち、生活にかかわる利益を侵害して損害を与えた者は、その損害を賠償しなさいというのが民法の規定が意味するところなのです。
(前掲書p67)
(※3)
財産権の侵害に関しては、憲法29条が定められています。
憲法29条1項は、「財産権は、これを侵してはならない」と規定しています。私有財産制を保障している規定です。したがって、財産権を侵害することは原則として憲法違反になるのです。
(「漁業権とはなにか」p6)
(※4)
海や川に存在する財産権の代表的なものは漁業権と水利権です。
漁業権とは「漁業を営む権利」です。ですから、事業により漁業の水揚げが減少する場合には、「漁業権の侵害」が生じていることになります。埋立で水面が消滅する、ダムにより魚の俎上が妨げられる、護岸の周辺で漁業が営みにくくなり水揚げが減る、埋立工事水域で一定期間、漁業が制限される、埋立工事に伴う濁り等で水揚げが減る等々、いずれも「漁業権の侵害」にあたります。
水利権は「流水を排他的・継続的に使用する権利」です。ですから、ダム建設に伴って、工業用水や水道用水に取水されたり、ダムに貯水することで水が濁りダムからの排水が恒常的に濁ったりする場合には「水利権の侵害」にあたります。
漁業権も水利権も財産権の一種ですから、「漁業権の侵害」も「水利権の侵害」も、いずれも「財産権の侵害」にああります。
海や川や海浜は、だれもが使用できる「公共用物」ですから、それを使用しながら利益を得る行為が可能で、その行為が長年続くと次第に「財産権」に成熟していきます。ですから、海や川や海浜に存在する財産権は、漁業権や水利権に限りません。ほかにも、いろいろな財産権が存在します。
とにかく、埋立等の事業により自分の生活が脅かされる場合には、事業が財産権を侵害している可能性が強いですから、声をあげることが重要です。
(「漁業権とはなにか」p6)
(※5)
事業によって生活が脅かされる実態があれば、調べていくと「権利の侵害」が生じているはずです。権利とは「一定の利益を自己のために主張することができる法律上保障された力」をいうのですから、生活が脅かされるような実態があるということは「権利の侵害」が生じていることを意味するのです。
(前掲書p4)
(※6)
要綱2条5項で「許可漁業や自由漁業を営む実態が漁業権と同程度の地位を有すると認められるもの」を権利と認めていることは前述のとおりであるが、要綱が「権利」と認めているということは、それを侵害する際に補償が必要ということであり、侵害に補償が必要ということは、当該権利が財産権であるということにほかならない。許可漁業や自由漁業は、慣習に基づいて財産権に成熟するのである。
憲法29条1項は「財産権は、これを侵してはならない」と規定し、29条3項は、財産権を収用する場合には正当な補償をしなければならない旨、規定している。したがって、財産権に成熟している許可漁業の更新を拒むことは、きわめて困難なのである。
「海はだれのものか」p84)
(※7)
漁民は、更新や切替えの手続きがあるため知事等に逆らえない、などと心配する必要なない。また、知事等に更新や切替えで恩義を感じる必要もない。漁民は、漁業を営み続けることで「慣習上の権利」を獲得しているのであり、許可の更新や免許の切替えは「慣習上の権利」に基づいて、知事等がおこなわなければならないのである。
(前掲書p86)
(※8)
しかし、財産権を絶対化すると「公共の福祉」に反することになりがちです。そのため、憲法29条2項は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」と規定しています。
(「漁業権とはなにか」p7)