日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

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すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2024年06月21日

コモンズとミュニシパリズム

こんにちは。

前回の「正常な自治」は、自治というのは、自ら治める、ということを原点として、その意識の高い世田谷区民、そして、世田谷区長に選ばれた岸本聡子さんのことを紹介したものだ。
だから、「正常の自治」とした。
もしかしたら、正常な自治に戻す運動が、ミュニシパリズムであるのかもしれない。(※1)

ミュニシパリズムは、地域主権主義、自治体主義と訳され、人間が最低限生きていくために必要なものを、コモンズとして捉え、それを新自由主義から、再び地域住民が勝ち取っていこうという運動のことを言っているのではないか、と私は読み取った。
コモンズとは、共有財のことであり、それを住宅や食料まで含めるという立場になっている。
新自由主義の優勢なEUでは、いろいろなものが民営化されたが、それをコモンズ(共有財)ととらえ、再公有化を実現させている。(※2)
それでは、EUでのコモンズの拡大について記していく。

イタリアでは、水道事業の民営化に対して、国民投票で異議を唱えた。しかし、各地でその投票結果に従わず、ナポリ市は先駆けて、公営化に踏み切った。(※3)
民泊事業の企業Airbnbが住宅を買占め、住宅不足に陥ったアムステルダム市は、Airbnbの規制に乗り出した。(※4)
Airbnb(エアビーアンドビー)とは、正式な宿泊施設ではなく、現地の住民が自宅など一般の住宅を宿泊施設として提供し、旅行者との間をインターネットで仲介する米国企業サービスである。
この企業の進出により、住宅価格や家賃が上がり、住民が困ることになった。
EU各地では、大手不動産会社が住宅を買占めた結果、家賃が上がり、一ヵ月4万円だったのが、10年後には、15万円にもはね上がり、3倍以上になった事例もあるほどだ。
3人から4人でシェアすることが、当たり前になっている。(※5)
規制緩和を推し進めるEUに対抗するため、現在、国境を越えた自治体どうしで、知恵をしぼっている。(※6)
中央政府は、困っている住民のために、全く役に立っていない。

水道と住宅をコモンズとするのは、なるほど、と思う。
しかし、それだけではない。
今や、住民の食にまでコモンズを適用し始めている。
それは、大手ネット企業の中間搾取が原因だ。
アルゼンチンでは、アマゾンのような民間のプラットフォームに対抗するため、国営のプラットフォームを設立しようとしている。(※7)

この流れからいけば、2そう曳きトロールをかけまわし漁法にし、沖合底曳網漁業を公営化しても悪くない。
あまりに漁獲圧の高い漁業は、魚が少なくなったら、漁をさせない。
あまりに減少しすぎた業類資源を復活させるためである。
根こそぎ漁業は、社会にとって、「悪」なのである。

最後に、女が搾取されていることにも触れている。
本当に社会に必要な仕事を「ライフメイキングシステム」とし、このシステムには、女性を低賃現で働かせている、という現実がある。
これに対し、非常に強烈な指摘であるが、軍事、武器、化石燃料、車、原発などを、「デスメイキングシステム」と呼ぶ。
「ライフメイキングシステム」で、労働者を低賃金で働かせ、金持ちたちは「デスメイキングシステム」で儲けるとは、何事か!と、いうことだ。(※8)
まったく、その通り!

EUで行なわれている新自由主義による規制緩和は、日本の比ではない。(※9)
EUは規制緩和による市場開放が進みすぎて、世界的な大企業ばかり潤い、住民は生きていくのが大変になっている。
日本は、まだマシだ。
今のうちに、ミュニシパリズムを浸透させていったほうがいい。
これにより、収入格差も小さくなるのではないか。



(※1)
 地方自治体の意である「ミュニシパリティ(munisipalitey)」から来ているミュニシパリズム(あるいはミュニシパリスト)は、政治参加を選挙による間接民主主義に限定せずに、地域に根づいた自治的な民主主義や合意形成を重視する考え方だ。ミュニシパリズムを掲げる自治体は、市民の直接的な政治参加、公共サービスの再公営化や地方公営企業の設立、公営住宅の拡大、地元産の再生可能エネルギーの促進、行政の透明性と説明責任の強化といった政策を次々に導入している。
(「地域主権という希望」p44)

(※2)
 この数十年、世界中で、国や自治体が本来もっていた公共的な役割をどんどん縮小し、水道や電力など住民生活に不可欠なインフラ事業まで、民間企業に委託してしまう民営化の流れが続いてきました。その結果、本来は住民のものだるはずの公共の財産が、営利の営利の論理で支配され、人々の生活を圧迫するといった問題が相次いでいます。
 私が長く暮らしていたヨーロッパでは近年、こうした民営化の流れがを止め、住民が地域の公共財産を自分たちで民主的に管理する仕組みを作り直そうとする動きが各地で生まれています。
 そして、こうした住民運動を母体として自治体ごとの市長政党がつくられ、首長や地方議会の選挙で勝利し、国の政府やEUといった大きな権力にお敢然と物申していく ― このような現象は、「再公営化」「ミュニシパリズム(地域主権主義、自治体主義)」、そして「恐れぬ自治体(フェアレスシティ)」という言葉でとらえられています。
(p4)

(※3)
 イタリア市民は公営水道の一部民営化を強制する法律を覆すために、2011年に国民投票を組織し歴史的な成功を勝ち取った。これによって水道事業から利益を上げることを禁止する憲法改正にこぎつけたが、多くの自治体がその精神に従わず、利益追求型の水道サービスの形態を変えなかったので、市民の怒りと失望は大きい。そのような背景があるなかで、マギストリス市長率いるナポリ市は、全国に先駆けて水道サービスの公的所有を確立し、水をコモンズ=公共財と位置づけた改革を行った。
(p45)

(※4)
 アムステルダム市は、Airbnbの規制にいち早く乗りだし、Airbnbの民泊を年間30日までと限定した(30日以上民泊を提供するということは、そこに居住している事実が薄いとみなす)。企業や資本家がAirbnb用に不動産を買い占めることが問題になっていて、他の首都同様、アムステルダムの住宅不足と価格高騰は深刻かつ緊急課題だからだ。
(p51)

(※5)
 住宅の不足と賃貸価格の高騰は、ヨーロッパの首都や主要都市に共通の、緊急かつ重大な課題になっている。私がかつて住んでいたアムステルダムはその筆頭で、20代〜30代前半の同僚たちは、高い家賃のアパート(1500ユーロ=約19万円)を3〜4人でシェアしている。一人暮らしは贅沢な選択になってしまった。10年前、私が家族3人で住んでいた、小さな公営アパートの家賃は当時400ユーロ(4万2500円ほど)であったのだ。いま、そのアパートは民間所有となり、家賃は1200ユーロ(約15万円)という。これだけ見ても、過去10年間の住宅市場の激変が見てとれる。
 アーティストの天国であり続けたベルリン市も、いよいよその波にのまれてしまった。ベルリンの住宅市場の85%が賃貸住宅であるが、2017年の1年で家賃がなんと平均20.5%も上がったのだ。2013年から2017年で実に2倍になった。もともと家賃が比較的安かったせいか、その変化は著しい。
 そのベルリンで、巨大不動産会社が所有しているアパート群をベルリン市が強制的に買い上げて公営住宅にするという住民投票提案が、にわかに注目を集めている。
(中略)
ドイチェ・ヴォーネン社は、現在11万戸のアパートをベルリンに所有している。全賃貸住宅の6.8%を同社が所有していることになる。これだけの規模で賃貸住宅を一社が所有することは、他都市ではめずらしいかもしれない。ロンドンでは最大手のグレンジャー社でも、所有するアパートは1500戸にすぎない。
 ドイチェ・ヴォーネン社はその巨大な経済力を駆使し、ドイツの比較的厳しい賃貸料金の規制政策の抜け道を探して、賃料を上げる抜群の能力で知られるようになった。規制は同地区内の平均的な値上げ率を基準にしているが、一地区を一企業がほぼ独占すれば、このような規制は機能しない。たとえば同社は、年金生活者が住むブロックを2005年に買い上げて、その途端に月100ユーロ(1万2500円)の値上げをした。年金収入の60%を家賃に充てざると得なくなった人も少なくなかった。
(前掲書p63)

(※6)
 住宅問題に立ち向かうのはベルリン市だけではない。「普通の人が住める街」のための住宅政策は、ミュニシパリズムを掲げる自治体やフィアレスシティの要のひとつである。住宅についてベルリン市は、バルセロナ市、アムステルダム市、ウィーン市などと積極的に協力している。過剰な観光化(オーバーツーリズム)、Airbnbなどのオンライン民泊プラットフォームの拡大、家賃の過剰な値上げ、住民視線ではないジェントリフィケーションは各都市共通の問題だ。
 しかし、ドイツ、フランス、スペインなど多くの国で、自治体は住宅価格や賃貸価格を包括的に規制することはできないとされている。総合的な住宅政策は中央政府の管轄であるしい。その背後にはEUの容赦ない緊縮財政や強烈な市場自由化政策がある。だからこそ自治体が力を合わせて、国家やEUを恐れることなく、学生、労働者、家族、移民が追い出されることなく住むことができる都市を守るために知恵を絞っているのだ。
(前掲書p69)

(※7)
 寡占化したグローバルサプライチェーンは広告とマーケティングを利用して、パッケージ化された食べものを高い値段で消費者に売りつけている。こうした流れに対抗しているのが、10年以上にわたる社会運動を基盤とするロサリオの取り組みである。食べものを公共財ととらえなおし、土地を投機対象からコモンズとして協同で管理する、脱資本主義的な実践といえる。
 コロナ禍で社会経済危機におちいったアルゼンチン政府は、社会運動からの提案を受けて、ロサリオの経験に基づいた国営食料会社と、アマゾンに対抗するような国営電子商取引プラットフォームの設立を法制化しようとしている。イギリスのメディア「オープンデモクラシー」は「国営アマゾンってどんな風? アルゼンチンに聞け」という記事をいち早く配信。記事によると、アルゼンチンのアマゾンに当たるメルカド・リブレに対抗する国営電子商取引プラットフォームは、とくに小規模な生産者と協同組合の製品を流通させるためのインフラをめざしているという。
(p230)

(※8)
 医療、病院、教育、食料(流通)、保育、介護、福祉、自治体サービス、清掃など、社会に必要な仕事のおよそ3分の2を女性が担っている。しかし、その価値は過少評価され、賃金は抑えられているか、もしくは無償である。『99%のためのフェミニズム宣言』(人文書院)に筆者の一人ティティ・バタチャーリャは、このような分野を「ライフメイキングシステム(命を育む仕組み)」と呼ぶ。その対極は、軍事、武器、化石燃料、車、原発などの「デス(死)メイキングシステム」だ。
 資本主義は労働力を得るために、やむを得ずライフメイキングシステムに依存しながら、常にこれを攻撃してくる。賃金を減らし、民営化を推し進める。彼女は、命を育む仕組みを社会、政治、経済の中心にしなくてはいけないという。
(前掲書p166)

(※9)
 まとめるならば、国家主義や権威主義を振りかざす中央政府によって人権、公共財、民主主義が脅かされつつある今日、ミュニシパリズムは地域で住民が直接参加して合理的な未来を検討する実践によって、自由や市民権を公的空間に拡大しようとする運動だといえる。
 具体的には、社会的権利、公共財(コモンズ)の保護、フェミニズム、反汚職、格差や不平等の是正、民主主義を共通の価値として、地域、自治、開放、市民主導、対等な関係性、市民の政治参加を尊重する。ミュニシパリズムは普通の人が地域政治に参画することで、市民として力を取り戻すことを求め、時にトップダウンの議会制民主主義に挑戦する。政治家に対しては、地域の集会の合意を下から上にあげていく役割を、100%の透明性をもって行うことを求める。
 私は本書で、ヨーロッパでの「進歩的な」政治運動を称賛したいのではない。EUというプロジェクトが国際競争を最大化する新自由主義により統合された結果、ヨーロッパ域内は日本では想像を超えるくらい市場開放が進み、行くところまで行ってしまたのだ。そしてその影響は、労働者や若者に深く広く浸透している。EUという組織の構造的な非民主政はいかんともしがたいなかで、戦略的な対抗手段としてミュニシパリズムが成長しているのである。
(前掲書p53)





posted by T.Sasaki at 11:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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