日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

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すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2024年06月08日

半導体工場がもたらすPFAS汚染

ふたたび。

情報通信技術(ICT)は、環境破壊を起こしている」のアップデート。

半導体の生産には、PFASという化学物質が欠かせない。(※1)
以前、3Mという会社が、PFASを製造していたが、環境汚染がひどく、汚染対策などが巨額にのぼったため、製造から撤退することになっている。
その後、PFASをどこの誰が作るのかは、まだ決まっていない。(※2)
このPFASという物質は、水を介して、人体に侵入して悪さをする。
困ったことに、いったん体内に入ると、なかなか排出されない。(※3)
米軍基地からの漏出が問題となったが、半導体生産に必要なPFASのことは、あまり知られていない。

1990年代は、欧米が半導体生産の8割を占めていた。
しかし、徐々に健康被害がわかってきた。
そこで、それらの生産拠点がアジアへ移った。
今や7割が東アジアである。
これは何を意味するのか?
「汚いものは、アジア人に作らせろ!」(※4)

熊本には、純度の高い地下水が豊富に存在するといわれる。
そこにTSMCは目をつけたのだ。(※5)
熊本県は、世界じゅうのPFAS汚染のことを知っていたのだろうか?
完全にPFASの漏出を抑え込まないと、汚染は進行する。
もしかしたら、PFAS製造も、熊本が担うようになるかもしれない。



追記の関連リンク

「永遠の化学物質」を分解して無毒化する細菌が発見される

半導体関連周辺水質調査 PFAS一種の数値増 健康影響、県「現時点でない」

「PFAS」の一種、熊本市の浄化センター下流地点で濃度増加…半導体関連で一般的に使用される物質

腸内細菌が「永遠に分解されない化学物質」PFASを「食べて」急速に体内から除去することがケンブリッジ大学の研究により判明



(※1)
 半導体製造に「ドライエッチング」という重要な工程がある。基盤(シリコンウエハー)や基板上の薄膜をナノメートル(1メートルの10億分の1)単位で図面通りに削り取る工程で、その際に基盤の状態を一定に保つための冷媒として使用されているのが「PFAS」の一種である。
 PFASとは数千種を超える有機フッ素化合物の総称で、自然界に放出された場合、容易に分解されないため「永遠の化学物質」と呼ばれる。その化学物質としての特性ゆえにさまざまな技術に利用されるが、人への毒性が指摘されており、国際条約で廃絶が目指され、使用が制限されている。
 PFASのうち「PFOS」と「PFOA」の二種類は、日本国内ですでに輸入や製造が禁止。昨年6月に国際条約で、泡消火剤や金属メッキなどに使われる「PFHxS」も、製造や使用などの規制の対象となったことを受け、禁止対象に追加されることとなった。日本国内では近年、東京・多摩地域で在日米軍横田基地からの流出による水質汚染が問題となったことで、その存在を認識している人が多いだろう。
 しかし半導体製造においては、他の物質では代用がきかない、必須の化学物質といわれている。
(「紙の爆弾2024年5月号」p17)

(※2)
22年末、これまで世界シェアの約8割を供給していた米3M(スリーエム)が3年後の25年末までに、生産から完全撤退すると発表した。
 同社は半導体製造向けPFASで世界シェアの5割にあたる「フロリナート」をベルギー工場で、3割にあたる「ノベック」をアメリカ工場で、それぞれ生産してきた。ノベックについては、すでに日本では年間1万トン以上の製造と輸入が禁止されている。
 ベルギーにおける生産停止の理由は、フロリナートの生産時に排出される排気ガスだった。フッ化物が工場内で分解できずに煙突からの排気ガスの中に混じって空中を飛散し、その一部が雨となって土壌に降り注いだ。結果、土壌や付近住民の血液中から高濃度のPFASが検出されることとなった。
 3Mの工場の立地するフランダース地方政府が規制強化を通達するも、同社がそれを順守せず、21年末に同工場で一度目の生産停止に陥る。
 ただしこの時は、3Mは2億5000万ユーロをかけて汚染土壌の剥ぎ取りに協力するほか、1億ユーロの排出予防予算提供、政府補助金を受け取る権利を放棄するなど、計5億7100万ユーロ(約724億円=当時)の支出を地方政府に約束したことで、翌年6月末に製造再開をとりつけた。
 しかし、それから半年後の22年末、3M社はベルギー工場だけでなく、全社におけるPFAS事業からの撤退に踏み切った。公害訴訟などの法的負担が300億ドルであるのに対して、事業の売上高は4半期で10億ドル程度。割に合わないということが、同社の判断につながったとみられる(以上、湯之上隆・微細加工研究所所長によるEE Times Japan 22年12月23日付「3Mが2025年末までにPFAS製造を停止、世界の半導体製造はどうなるのか」より)。
 前述のとおり、半導体製造に必要なPFASは8割を3Mが製造。残りの2割はベルギーのソルベイがイタリア工場で生産(商品名「ガルデン」)してきたが、3Mと同じ理由で増産については消極的だ。新たな入手先として中国企業も挙がるが、必要な品質が得られず見通しは立っていない。
(前掲書p18)

(※3)
22年には、アメリカの学術機関である全米アカデミーズ委員会が、5000本以上の論文の結果を統合したメタ分析結果を発表した。それによれば、「関連性を示す明確なエビデンスがある」として、動脈硬化などの原因となる脂質異常症、腎臓がん、抗体反応の低下、乳児・胎児の成長・発達への影響、「限定的または示唆的なエビデンスがある」として乳がん、肝機能障害、妊娠高血圧症、精巣がん、甲状腺疾患または機能障害、潰瘍性大腸炎が挙げられている。血中濃度で1ミリリットルあたり20ナノグラム(PFOSとPFOAを含むPFAS7種の合計)を超える状態が続くと健康被害のリスクが高くなると指摘している。
(中略)
 大阪市内で調査対象となった2地点(地下水・湧水)のPFOS・PFOAの合計数値は1ミリリットルあたりそれぞれ5500、1700ナノグラム。日本政府の定める公共用水域及び地下水における暫定目標値(暫定指針値)が50ナノグラムだから、110倍、34倍の数値となる。
 その原因とみられるのが、1980年代から2012年までPFASを製造してきたダイキン工業の「淀川製作所」(摂津市)だった。この問題を23年6月14日付記事で詳述したインターネットメディアの「Tansa」は、今年3月31日にも「ダイキン元従業員の血液から国平均298倍のPFOS検出」と報じている。
 京都大学大学院の原田浩二准教授が昨年9月から12月にかけて1192人を対象にして行なった調査で、最もPFOSが高かったのは1ミリリットルあたり596.6ナノグラム。この人はダイキンの元従業員だ。
 米国政府が採用する「米国科学・工学・医学アカデミー」の臨床ガイダンスでは、PFOSの合計値が1ミリリットルあたり20ナノグラム以上の患者に対して、「腎臓がんや精巣がん、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患などのリスクを考慮した処置が必要」と警告している。
 そして、ダイキン工業がPFAS製造から12年前に撤退しているにもかかわらず、ここまで高い数値が検出されたことは、PFASの体内への蓄積のしやすさ、一度蓄積されれば排泄されにくい性質を如実に示している。もちろんそれは環境でも同様で、前出の3Mが事業から撤退した理由でもある。
(前掲書p19)

(※4)
 国・地域別に見た場合、半導体の生産能力は、トップの台湾が21.6%、韓国が20.9%、日本が16.0%、中国が13.9%(IC Insights' 19年)。実に72%をこれらアジアの国・地域が占めている。米国は12.8%でも、欧州全体で5.8%にすぎない。欧州は1990年代、世界の半導体産業の44%を占めていたとされる。米国も同時期は37%だった。
 半導体製造の主要地は、なぜアジアに移動したのか。その大きな原因が、半導体工場に勤務する労働者を襲った健康被害だといわれる。
 一例として、1980〜90年代、米国の半導体製造工場の労働者、特に女性労働者に流産などの健康異常が相次いで発生し、社会問題化。その原因が工場で扱う有害な化学物質にあると判明した。
 17年8月3日付のクーリエ・ジャポン「あなたのスマホの部品が、12万の韓国人女性を不妊にしている?」によると、米国で86年までにデータ収集を行なった調査で、工場に勤務する女性の流産率は平均の二倍。その事実が公表されると、調査を担当した研究者は業界団体の攻撃に晒される。それでも、IBMをはじめとした各社が、有害な化学物質の使用を段階的に停止していくと宣言した。
 ところが、実際に行われたのは、コストの低い韓国や台湾に半導体製造工場を移管することだった。
 そして、少なくとも15年まで、韓国の何千人もの女性が、まったく同じ有害物質にさらされ続けていたことが判明する。半導体業界は、「企業秘密」として全ての有害物質を公表していないため、公表せずに有害物質を使用し続けていた可能性が高いとも、同記事は指摘する。
 大手サムスン電子などを抱える韓国では、安全保健公団により19年5月に発表された調査結果で、女性労働者が白血病に罹る危険が労働者全体より1.59倍高く、死亡の危険性は2.8倍となったと発表された。同じ血液がんである非ホジキンリンパ腫では、死亡の危険が最大で3.68倍、甲状腺がん・胃がん・乳がん・脳と中枢神経系がん・腎臓がんなどの危険比の増加も指摘された。これらは09年から10年間の調査結果をまとめたものだ。
 台湾でも女性労働者が半導体製造の過程で発生する有害物質によって、不妊症・流産・奇形胎児につながる生殖発生毒性の可能性が指摘されている。
 個人の人権が確立している欧米でこの種の労働ができなくなった結果、アジアの技術力がある国に移転したのだ

(※5)
 半導体工場からのPFAS漏出が、日本国内でもすでに指摘されている。情報記憶の半導体メモリーの売上で国内最大手のキオクシア(旧東芝メモリ)の工場がある三重県四日市市で、市民団体が昨年9月から11月に河川などを調査した結果、同社工場と河川をつなぐ排水口からPFAS1リットルあたり125.93ナノグラム(PFOSとPFOAの合計値)を検出した。海岸部の排水口では、403.24ナノグラムを計測したという。
 半導体の生産には純度の高い超純水が大量に必要で、TSMCが熊本を選んだ理由が、その豊富さにあった。それゆえに、現地は生活用水のほぼ100%を地下水でまかなっている、全国でもまれな地域とされる。
 そして九州地方は日本全体の食を支える地域でもある。20年度の農林水産省の資料で、都道府県別の食料自給率は生産額ベースで宮崎県が302%の1位。熊本県も162%と高い値を誇る。そこが汚染されればどうなるか、考えないわけにはいかない。
(p16)





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