ふたたび、こんにちは。
「
免疫について」シリーズは、引用文の山である。
かかりつけ医を選ぶ場合や突然病院のお世話になった場合、医師の言うことが信用できるかどうか、の判断材料になると思う。
病気になる、ということは、基本的に、エネルギー代謝異常とゴミ処理異常であることを認識すべきである。
私たちの体の中では、常にゴミが生まれ、それを食細胞が処理している。
これらは、無自覚に自動的に、行われているのである。
その数は、何と!毎秒百万個!
これがうまくいかなくなっても病気になる。
(※1)ゴミの中でも厄介なのが、病的状態で発生するゴミ、すなわち炎症ゴミ(mess)である。
これらのゴミが処理されないで残った場合、それは、外部からの侵入者のエサとなる。
結果として、その侵入者は増殖することになる。
つまり、感染症に罹りやすくなる、ということだ。
(※2)食細胞は、ゴミの種類を判別し、リンパ球の攻撃の有無を決定する。
(※3)ここで、またプーファの登場となるが、プーファはミトコンドリアを傷つけ、電子、そして、ゴミを散乱させる。
(※4)もちろん、食細胞も死を免れない。
好中球にも、自然死と細胞死(壊死)の二つがあり、細胞死から炎症が引き起こされたりする。
(※5)炎症ゴミ(mess)の増加は、病気を作る。
食細胞による食作用が働きすぎると、逆に、炎症ゴミ(mess)が増えて困るから、ここで、T細胞やB細胞が活躍し始める。
つまり、従来の免疫細胞であるリンパ球が、ここからの炎症ゴミ(mess)の処理を担うことになる。
これが、抗体の正体である。
ゴミ処理が追い付かなくなり、体内にゴミが散乱して炎症物質が放出されると、やがて、がん化する。
(※6)したがって、素人考えでも、炎症を起こさないようにする、ということが重要であることがわかってくる。
新型コロナウイルス感染症と呼ばれるものの報道で、よく抗原という言葉出てくるが、抗原の正体というのは、炎症ゴミ(mess)のことだったのだ。
これには、ダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs,ダンプス)と微生物関連分子パターン(MAMPs,マンプス)とあるが、どちらも、炎症、抗炎症の両方に働く。
(※7)炎症ゴミ(mess)は、本当に厄介なものであり、心配になってくるが、大丈夫、腸内のインフラマソームなどが、最終的にそれを解決する。
(※8)ここからは、余談的なメモ。
もうすぐ還暦世代の人へ(笑。私もなのだ!)。
加齢により、炎症ゴミが必然的に生まれてくる。
したがって、炎症ゴミの出現を抑制すること。
それには糖質の有効利用が必要であり、糖のエネルギー代謝を大事にすること。
(※9)それから、単細胞にも頭脳みたいなものがあるらしい。
(※10)単純な人に「単細胞!」と言うのはやめよう!(笑)。
(※1)
細胞レベルで“ゴミ”と判断されたものは、食作用(phagocytosis:ファゴサイトーシス)を持つ白血球系の細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、好酸球など)によって処理されます。これらの食作用をプロとして行っている細胞以外にも、食作用を持つものに線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、網膜色素細胞や精巣のサトリー細胞(sertoli cells)などがあります。
食作用とは、文字通り“ゴミ”を食べることを意味します。食べられたゴミは白血球内で消化されて無害化されます。このようにゴミを食べて場を掃除する白血球のことを総称して「食細胞(phagocyte:ファゴサイト)といいます。
様々なゴミに対して活性化した食細胞(phagocyte)はゴミを飲み込んで細胞内のゴミ処理場(phagolysosome:ファゴライソゾーム)で分解します。
(「新・免疫革命」p80)
私たちの血液中の赤血球の寿命は約百二十日といわれています。機能が低下した赤血球は“ゴミ”として食細胞の食作用によって処理されます。もし食細胞の食作用の働きが低下すれば、ダメージを受けた老化赤血球から鉄が血液中に放出され、鉄の様々な毒性によって多臓器がダメージを受けます。
環境の変化に対応して生命体の姿を形成・維持していくことを形態形成維持(morphostasis:モーフォステイシス)といいます。形態形成維持は、環境に適応して生命体の姿を発展・維持していく営みです。その形態形成維持の中心が食作用(ゴミ処理)なのです。
成人の体内の組織では毎秒百万個もの死滅した細胞(アポトーシス、自然細胞死)を処理しています。
(前掲書p81)
私たちは成長の過程で必要なくなった自分の細胞・組織を食作用で処理しています。病原性を持つバクテリアなどを処理するのも、この形態形成維持の食作用を利用しているにすぎないので、免疫というシステムは形態形成維持(morphostasis)の営み全体の一部分が応用された景色を眺めていると考えると理解しやすいでしょう。
形態形成維持の基本単位は細胞です。私たちは受精卵という一つの細胞から多細胞に分裂して臓器が形成され、今の形になっています。この一つ一つの細胞が自分の状態を含めて周囲の細胞を監視しています。細胞同士はギャップ結合(GJ,gap junction)や細胞接着因子(CAM,cell adhesion molecule)と呼ばれるタンパク質で結合されています。細胞間は、ギャップ結合などを通じて、糖などの物質のみならず、電気信号などの情報のやりとりをしています(synchronization 同期、coherence コヒーレンス)。
ここで、細胞の集団の中のひとつの細胞に変調が起こったとしましょう。この細胞は自ら、ギャップ結合などの周囲の細胞との結合を外して(undocking)、細胞集団から離れます。そして自決を選びます。こうやっていわば“自殺死”(アポートシス)を選んだ細胞はその細胞成分が破裂して漏れ出ないように、食作用によって細切れにされて食細胞あるいは近隣細胞にキレイに処理されます。
(前掲書p86)
細胞内の小器官やタンパク質などの高分子も、日々新陳代謝されています。ダメージを受けたタンパク質や異常タンパク質、あるいはダメージを受けたミトコンドリア、ペルオキシソーム(peroxisome)などはゴミ(debris)と判断されて速やかに分解されて再利用されます。
この細胞内リサイクルシステムを「オートファジー(autophagy:自食作用)」といいます。オートファジーは飢餓などのストレス下でも活性化します。機能の低下した分子をリサイクルして新しい材料として提供するのです。たとえば、異常なたんぱく質をオートファジーによって完全にアミノ酸レベルに分解すれば、そのアミノ酸は新たなタンパク質を作る材料になります。また、細胞内に侵入したバクテリア、ウイルスなどもゴミとして処理するのもオートファジーの働きによります。
オートファジーの機能がダメージを受けるとβアミロイドなどの異常タンパクが神経細胞内に集積します。これはアルツハイマー病を引き起こします。このように細胞内外のゴミは速やかに処理されて形態形成が維持されています。
(前掲書p88)
(※2)
ゴミは細胞や間質組織の破片です。これらの破片は、侵入してきた微生物から見ればよだれが出るようなタンパク質、糖や脂肪などで構成された栄養素です。したがって、ゴミが生命場に散らかっていると競合関係にある微生物という“敵に塩をあげる”事態になりかねません。
(中略)
糖尿病や免疫抑制状態(オメガ3やステロイド投与、エイズ)などが危険な理由は、生命場(この場合間質)に糖、遊離脂肪酸(糖尿病)、鉄などの栄養素が浮遊していたり、免疫抑制状態(食作用低下)になったりすることによって、エサとなるゴミ(debris)が散乱することで侵入微生物の増殖に願ってもない環境を作るからです。
(前掲書p91)
同じゴミでも日常のエネルギー代謝によって排出されるゴミは「デブリス(deburis)」と表現しますが、炎症によって細胞が破裂したり、間質が分解されたりするような病的状態で産生されるゴミを「メス(mess)」と呼んで区別します。「メス(mess)」は炎症を引き起こすので「炎症ゴミ」と呼んでもよいでしょう。
この形態形成維持が破綻した状態で放出されるゴミ(mess)は、後述するようにアレルギー疾患、自己免疫疾患、ガンなどを引き起こします。
感染して機能を失った好中球などもゴミ(mess)として他の食細胞(マクロファージ)の食作用によって処理されます(その逆、機能不全のマクロファージが好中球に処理されることもある)。この機能不全の食細胞ゴミ(mess)処理に失敗するとエイズなどの免疫不全やSLEなどの自己免疫疾患を引き起こすことも報告されています。
いずれのゴミ(debris & mess)も食作用によって掃除することは侵入微生物の増殖や炎症を防ぐという生命体の形態形成維持で最重要になってきます。
(前掲書p93)
(※3)
形態形成維持の中心となる食細胞には以下の二つの働きがあります。
1. ゴミ(debris & mess)を見分ける(樹状細胞)⇒細胞内に取り込み(食作用)、リンパ球の免疫記憶・攻撃を助ける(「抗原提示」という)。
2. ゴミを本格的に処理する(食作用)。
この二つの食細胞の働きを橋渡しをするのが、リンパ球系です。食細胞の樹状細胞は、ダメージを与えるゴミ(mess)を認識して、リンパ節にまで運び、リンパ球を喚起します。そのゴミ(mess)によって活性化されたリンパ球はマクロファージ、好中球などの食作用を活性化します(B細胞から産生されるIgG抗体は食作用を活性化させる)。
(前掲書p127)
通常の生命場の維持においては、死滅した細胞は速やかに分解され、ゴミとならないように処理されます。その代表的なメカニズムがアポトーシス(apoptosis)です。このときに核酸(遺伝子)、タンパク質、脂質などの死滅細胞の成分は生命場に散乱することはないために、ダメージを与えるゴミ(mess,damaged debris)とは認識されません。そのために、自分の細胞の成分に対して激しい炎症が起きたり、抗体ができたりすることはありません。
このようにゴミ(debris)の速やかな処理においては炎症は強く抑制されることが分かっています。炎症が起きないのでゴミとなった自分の組織に反応するリンパ球や抗体ができません。これが、現代医学が「免疫寛容(immnune tolerance)」(自分の組織には基本的にリンパ球g攻撃することはない)と呼んでいるものの本質です。免疫学的無視(immunological ignorance)と呼ばれることもあります。
通常のアポトーシス(自然細胞死、natural cell death)のあとの処理、つまり形態形成維持の食作用では炎症が起きないメカニズムが、最近になって明らかになっています。たとえば、アポトーシス(「イート・ミー〈eat me〉」サインを出している)の細胞は、食細胞に食作用を受けた場合に、抗炎症へと誘導します(アポトーシスで死滅した細胞からインターロイキン‐10〈IL-10〉やTGF-βが産生される)。その他にもキレイに死滅した細胞成分には、リンパ球の攻撃や抗体産生が起こらないように様々なメカニズムが働いています。
このように免疫寛容とは、「そのゴミによって炎症が起こらないこと」と理解するとよいでしょう。
(中略)
しかし、病気の場ではどうでしょうか?
激しい炎症が起きて細胞が壊死して破裂したような場合(破滅的な細胞死、violent cell death)を考えてみましょう。このような細胞死は壊死(ネクローシス、necrosis)と呼んでいます。ネクローシスでは自分の細胞が破裂します。それによって細胞内から漏れ出てきた細胞成分(spillage)は、生命場にダメージを引き起こすゴミ(mess)と認識されます。その例が細胞内にある熱ショックタンパク質90(HSP90)、HMGB1(high-mobility group protein B1)、ATP、インターロイキン(IL-1β)、遺伝子(DNA)、プーファ(その代謝産物のエイコサノイド)などです。これらの細胞の構成成分は自分の細胞構成要素ですから、自然死の場合ではダメージを与えるゴミ(mess)とは認識されないはずです。しかし、炎症の場で漏れ出したために「生命場にとってダメージを与える」と判断されるようになります(“ダメージ物質”とタグ付けされる)。
(前掲書p147)
(※4)
プーファ(多価不飽和脂肪酸)などによってダメージを受けたミトコンドリアを放置しておくと、過剰な活性酸素・窒素種(ROS、RON)が細胞内に放出されます。これによって、細胞内の炎症をオンにするアンテナが活性化し、炎症性物質を生命場にばら撒く結果になります。プーファ(オメガ3&オメガ6)はミトコンドリアの電子伝達系での電子(糖から取り出した)のフローをせき止めてしまいます。
(中略)
細胞内のミトコンドリアが機能不全に陥ると、電子というゴミが細胞内に散乱します。散乱した電子はその細胞を破壊するだけでなく、破壊された細胞から散乱したゴミ(mess)がさらに周囲の生命場に悪影響を与えます。したがって、ミトコンドリアに決定的なダメージを与えるプーファは形態形成維持の面からも最大の慢性病の原因といって過言ではありません。
(前掲書p94)
(※5)
自然死した好中球をマクロファージが食作用によって処理すると、マクロファージ内でレゾリンヴィン(resolvins)、プロテクティン(protectins)、マレスィン(maresins)などの「イムノレゾルヴヴァント(immunoresolvents)」と呼ばれている局所ホルモン様物質(autacoids,pro-resolving mediator)が産生されます。こららは局所の炎症を止め、組織修復に働くように作用します。
(中略)
その一方で、好中球が破裂する好中球壊死という状態があります。エンドトキシンやミトコンドリアからの活性酸素種によって活性化された好中球は、核内の染色体や顆粒の網目状の混合物を細胞外に放出することが発見されています。この網は好中球細胞外トラップ(NETs:neutrophil extracellular traps)と呼ばれています。
好中球細胞外トラップは細胞内で消化(貪食)しにくい細菌、ウイルス、真菌を細胞外で網に捉えます。捉えられた細菌は好中球やマクロファージに貪食されやすくなります(NETsそのものにも殺菌作用がある)。この過程はネクローシスやアポートシスとは異なるタイプの細胞死ということで、好中球細胞死(NET osis)と名付けられています。
(前掲書p164)
当初、この好中球のバースト(破裂)による好中球細胞外トラップ(NETs)および好中球細胞死(NET osis)はいわゆる自然免疫に働くと考えられてきました(もはや自然・獲得免疫の概念は意味がない)。しかし、この好中球細胞外トラップの成分そのものが後述するダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs)となり、食細胞のパターン認識受容体(PRRs)に認識されて炎症を引き起こすことで自己免疫疾患の原因になっていることが分かりました。
(中略)
血管に好中球細胞外トラップ成分への炎症が起こると血管炎が起こります(抗好中球細胞質抗体関連血管炎、anti-neutrophil cytoplasnic antibody(ANCA)-associated vasculitis; ANCA-associated vasculitis)。好中球細胞外トラップ(NETs)成分への抗体(ANCAs: anti-neutrophil cytoplasmic antibodies)ができることで診断されます。
好中球細胞外トラップ成分中にヒストンなどのタンパク質にシトルリン化が起こることで、ゴミ(mess)になります。このシトルリン化したゴミによって炎症が起きるのは関節リウマチです(シトルシン化したタンパク質に自己抗体ができる)。糖尿病でも好中球細胞外トラップによる慢性炎症が認められることが分かっています。
この好中球細胞外トラップ(NETs)の成分がゴミ(mess)になることで様々な慢性炎症疾患を引き起こすのは、生命場のエネルギー代謝低下(ゴミを処理する食細胞のエネルギー代謝低下)による不完全なゴミ掃除が原因です。
(前掲書p167)
(※6)
食細胞が活性化されて炎症が激化していくと、白血球系の食細胞の過剰な興奮からリンパ球への刺激へとフェーズ(phase)が移っていきます。そして、リンパ球への過剰な刺激は、食作用を一層活性化させます。
これ以上食細胞が活性化するとさらに炎症が激化して生命場が乱れることから、リンパ球が過剰に活性化されると食細胞の機能を抑えるように作用します。しかし、炎症の場で食細胞の機能が低下すると今度はゴミ(mess)が散乱する一方になります。それは形態形成維持(morphostasis)では一番困ることでした。
そこでゴミ掃除(mess clearance)はT細胞やB細胞が担うようになります。B細胞の掃除役が「抗体」と呼ばれているものです。抗体といえば、病原ウイルスやバクテリアなどの病原体(pathogen)とよばれるものに対するミサイル(magic bullet)のようなイメージがありますが、本来の役割はやはり形態形成維持のためのゴミ処理です。ただし、抗体が出現するのは炎症などの「病気の場」です。
(前掲書p159)
炎症が激化すると細胞(食細胞やリンパ球も含めたすべての細胞)に過剰なストレスがかかりストレス酵素の一つであるホスホライペースA2が活性化します。この酵素は細胞内のリン脂質に含まれるプーファ(多価不飽和脂肪酸)を遊離させます。そして、アラキドン酸などのプーファからイエコサノイド(eicosanoids)を大量に産生します。
炎症が激化するとこれらの細胞内にあるプーファやエイコサノイドが生命場に散乱・溢れ出します(Eicosanoid Storm,エイコサノイドの嵐)。これが最も危険なゴミ(mess)になります。
(中略)
このようなゴミ(mess)が散乱していると、食細胞が過剰に活性化して炎症を起こし、その炎症でさらに分解された自己組織に反応するリンパ球(B、T細胞)が活性化されます。その良い例が代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)です。遺伝子(DNA)、タンパク質(ヒストン)、ミトコンドリアの脂質(カルジオリピン)などの自分の細胞成分に頻繁に抗体ができます。
処理できないゴミ(mess)の蓄積や、最も危険なゴミ(the most dangerous mess)といえるプーファやエイコサノイドが生命場にばら撒かれることが、自己免疫疾患の温床となるメカニズムの一つです。そのベースは生命場に強い炎症が起きてゴミ(mess)が出ることです。
生命場にばら撒かれたエイコサノイドでもロイコトリエンE4(Cysteinyl leukotriene E4)やプロスタグランディンD2(PGD2)は、ヘルパーT細胞(Th 2)や自然免疫に関わるリンパ系細胞(ILC2s,innate lymphoid 2 cells)を活性化してアレルギー反応に関わります。プロスタグランディンD2は、いわゆる頭頂が禿げる男性型脱毛症の原因物質としても注目されています。毛根への炎症が脱毛の原因になっています。
また自己免疫疾患でエイコサノイドによって活性化されるヘルパーT細胞(Th 17)は、炎症の場ではガンの形成、増殖、転移を促進します。プロスタグランディンE2(PGE2)はダイレクトにガンの増殖を促すこともよく知られています。
さらに感染(炎症を引き起こすもの)や炎症の場では、白血球系の食細胞から細胞外小胞(Extracellar vesicles,エキソソーム(exosome)とマイクロ小胞(microvesicle)からなる、EMVsという細胞成分を入れた小胞が放出されます。この小胞の中にエイコサノイト(その他、タンパク質、核酸なども含まれる)があるため、生命場に炎症を促進するエイコサノイドが小胞から生命場にばら撒かれます。
(前掲書p160)
炎症の激化では食細胞の食作用が抑制され、リンパ球系の働きが活性化していきますので、ゴミ(mess)は貯まっていく一方です。このゴミ(mess)は、上手くバトンタッチされたリンパ球系で処理できないと、自己免疫疾患やガン発生・増殖の温床となります。
まさにゴミ(mess)の集積によるいつまでも消散しない慢性炎症(unresolved inflammation)によって、形態形成維持に大きな混乱を起こしている過程(process)、それがガンの正体です。
(前掲書p163)
炎症の場(病気の場)では、通常は自分の細胞の構成成分に対して起こらない過剰な反応(炎症)や抗体の産生が始まるようになります。前者が自己免疫反応(自己免疫疾患、膠原病)、後者が自己抗体(autoantibody)とよばれているものです。
実際に炎症の場では、食細胞である樹状細胞(DC,dendritic cell)は、これらの細胞成分に“ダメージを及ぼすゴミ(mess)”というタグ付けを強く行うようになります。炎症の場では、樹状細胞は細胞成分が免疫原性(immunogenicity)を高めるように働く、つまりそれらの構成成分に対して強く炎症が起こるように促すということです。
自己免疫反応疾患が膠原病(コラーゲン病)とよばれるのは、炎症がコラーゲン線維の多い間質に及ぶからです。そして炎症によって分解される間質成分がゴミ(mess)と認識されて、自己の間質が攻撃を受けることになるからです。
(前掲書p168)
(※7)
ゴミ(mess)と私が命名したものは、一昔前までの免疫学では一様に「抗原(antigen)」と呼ばれていたものです。その抗原という呼び方は、現代の免疫学ではダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs,ダンプス)と微生物関連分子パターン(MAMPs,マンプス)の二つに置き換わろうとしています。
抗原やマンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)と呼称するよりも、生命場に炎症を引き起こす場合は、ゴミ(mess)と統一するよりクリアーカットになります。なぜなら、マンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)と呼んでいるものも抗炎症(免疫抑制)に働く場合もあるからです。
(前掲書p171)
微生物関連分子パターン(MAMPs,マンプス)には、エンドトキシン(内毒素)以外にもバクテリア由来の糖脂質、ペプタイドグライカン、ウイルス由来の遺伝子(ssRNA,CpGDNA)、糖タンパク質、カビ菌のべータ・グルカン、原生動物のリン脂質などたくさんの種類が同定されています。
(中略)
アガリスクやメシマコブは、免疫賦活作用がある健康食品だと謳われています。これらのキノコ類には真菌由来のベータ・グルカンが微生物関連分子パターンとなるために炎症を引き起こす作用を利用しているのです。したがって、原理的にはガンのワクチンと同じで、このマンプス(MAMPs)による炎症によってガンを縮小することを期待しているのです(この作戦が吉とでるか凶と出るかも“生命場”次第です)。
(前掲書p173)
急性ストレスによって、脳内のネクローシス(壊死)に見られる細胞破裂型の細胞死(神経細胞および脳内の食細胞であるマイクログリア細胞)によってHMGB-1(high mobility group box-1)というダンプス(DAMPs)=ゴミ(mess)が放出され、食細胞の細胞内にあるアンテナ(Inflammasome,インフラマソーム)を介して炎症反応を引き起こすことがすでに報告されています。
また、精神的ストレスによって交感神経系が過剰に刺激されると、ノルアドレナリン、ニューロペプチドYが生命場に放出されます。これらの物質は食細胞(マクロファージ)に作用して、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK:Mitogen-activated Protein Kinase)のシグナルをオン(炎症、細胞分裂へ)にし、前述したHMGB-1というダンプス(DAMPs)=ゴミ(mess)を放出させます。このゴミ(mess)によってさらに他の食細胞が活性化し、炎症を加速させることで心臓血管疾患が引き起こされます。
このように精神的という目に見えない“エネルギー”は、体内でゴミ(mess)という“物質”に変換されて生命場の形態形成維持にダメージを引き起こすのです。
(前掲書p181)
(※8)
マンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)といったゴミ(mess)の信号をキャッチするアンテナとしてToll様受容体(TLR)、スカベンジャー受容体(SRs:Scavenger receptors)をはじめさまざまなパターン認識レセプター(PRRs)があります。
その中で、いわゆる非感染性炎症(sterile inflammation)に深く関与しているインフラマソーム(Inflammasomes)という構造があります。骨髄性細胞(食細胞)の細胞質内に存在しています。微細粒子(microparticle,シリカ、アスベストなど)、ATP、コレステロール(尿酸)、クリスタル、エンドトキシン、βアミロイド、リポファッシン(lipofuscin、鉄とアルデヒドの結合体)などの様々なマンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)やミトコンドリアの活性酸素種(ROS)で直接・間接的に活性化されるとされています。ちなみにワクチンのアジュバントに使用される水酸化アルミニウム(alum)は、食細胞のインフラマソームを活性化して炎症を引き起こします。これらの細胞死は細胞が破裂してゴミが散乱するタイプのものですから、炎症を引き起こします。
(中略)
このインフラマソームの活性化による炎症は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患などの様々な自己免疫疾患などの様々な自己免疫疾患と関連しています。
その一方で、腸の粘膜組織ではインフラマソームの活性化は、組織修復などの形態形成維持に必須の働きをしています。この場合は、ダメージを受けて死滅した細胞から放出されたダンプス(DAMPs)=ゴミ(mess)によって、腸粘膜に存在している食細胞のインフラマソームが活性化します。その結果、放出されるサイトカインは組織修復(腸壁バリアーの形成、粘液分泌細胞の維持)、腸内微生物の維持に作用します。
つまり、ゴミ(debris)に対する食細胞の処理機構(形態形成維持)としてインフラマソームという細胞内アンテナが存在していますが、炎症の場で放出された過剰なゴミ(mess)では、食細胞のインフラマソームに過剰反応が起こることで炎症を加速させる方向へ傾くのです。インフラマソームの活性化もコンテキスト依存ということです。
(前掲書p182)
(※9)
加齢に伴う慢性炎症を「インフラメイジング(inflammaging=inflammation+aging)」と呼んでいます。その原因は、外来の病原性微生物にあるのではなく、むしろ自分の細胞が出すゴミ(mess)=ダンプス(DAMPs)が、加齢によるエネルギー代謝低下によるゴミ処理能力低下によって蓄積してくるからです。
加齢にともなる慢性炎症の持続というインフラメイジングは、自分の細胞内の成分に対する制御不能の自己免疫反応といえるでしょう。もちろん、細胞の破裂や細胞内器官のダメージによって、細胞成分があるべき場所にない場合(misplced)に、つまり生命場に散らばった場合に、通常では起こりえない自分の細胞成分がダンプス(DAMPs)になります。
現在までダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs)と同定されたものはたくさんあります。これらのゴミ(mess)が危険信号となって、マクロファージ、肥満細胞などの白血球系細胞の受容体(アンテナ)に信号を送ります。このアンテナのことをパターン認識受容体(PRRs:pattern-recognition receptors)と呼びます。Toll様受容体(TLR)、インフラマソーム(inflammasome)、週末糖化産物受容体(RAGE,receptor for advanced glycation end products)などのアンテナがあります。このアンテナは骨髄系の白血球だけでなく、リンパ球、線維芽細胞、上皮細胞などにも備わっています。
危険信号を受け取った白血球(リンパ球)は、様々なサイトカインやキモカイン(chemokine)を放出し、ダメージを受けている部位に他の白血球やリンパ球を集積させます。この場合、サイトカイン量が多いと、ホルモンと同じく全身に作用します。肝臓に作用してCRPというタンパク質(補体を活性化、炎症、血栓促進)を産生し、脳に作用すると発熱・倦怠感・食欲不振・性欲減退などを引き起こします。
Tリンパ球もこれに加わって細胞障害に働きます。血液中の補体も動員して組織にダメージを与えます。そして最終的なゴミ処理としてBリンパ球が登場します。
この過程で十分なエネルギーがないと、ゴミ(mess)がうまく処理できずに炎症が継続していきます。最終的には組織破壊が進むと、血管新生・線維化が過剰に起こり、組織の機能が失われます(炎症の終末像パターン)。ホスト(宿主)の状態によっては、この炎症の場合が自己免疫疾患やガンの素地にもなるのです。
(前掲書p175)
リンパ球のコントロールに重要な働きをしている胸腺やリンパ節および白血球とリンパ球の産生器官である骨髄は、すべて糖のエネルギー代謝依存です。加齢に伴ってエネルギー代謝が低下してくると、これらの器官の委縮(構造と機能の崩壊)が起こることによって免疫系(形態形成維持)が影響を受けます。これが免疫系に加齢現象が認められることの最大の原因です。
しかし加齢によっても糖のエネルギー代謝が十分であれば百歳を超えても慢性病に罹りにくいように、免疫系の老化によって機能しなくなることはありません。加齢によって免疫系の老化現象(Immunosenescence)というものが必ず見られるものではなく、むしろその個人のエネルギー代謝レベルによって個々の環境に免疫系が変化していく(modified/modulated immune system)と捉えた方がよいでしょう。
(前掲書p186)
(※10)
神経系を持たない単細胞生物や植物には学習や記憶というシステムがないと考えられてきました。しかし、単細胞生物でも「認識・学習・記憶」といった脊椎動物の神経系が担う働きを持っていることが近年明らかにされています。
(前掲書p132)
単細胞生物に苦味のある物質(マラリアの治療薬キニーネなど)を繰り返し与えると“慣れ”が生じて嫌逃行動が減少します。これは、私たちのような多細胞生物に同じ量の薬物を慢性的に投与した場合に、細胞レベルで起こる「ダウンレギュレーション(downregulation)が起こって薬効がなくなってくる現象と同じです。これはある刺激が繰り返し与えられるとやがて感覚が麻痺していくる現象と言い換えると理解しやすいでしょう。
さらに記憶についても単細胞生物では、空間記憶や配置、形状に対しての記憶があることも分かっています。さらに単細胞生物が産生するホルモンによって自身の細胞膜構造がダイナミックに変化します。この細胞膜構造の変化が固定化したものが多細胞生物の細胞にも見られる受容体(receptor,本編ではイメージしやすいように“アンテナ”と表現している)と呼ばれるものです。
ホルモンによって構造が変化するのは、エピジェネティックス変化(epigenetics modification)と呼ばれます。エピジェネティックス変化は、遺伝子の配列は変わりませんが、遺伝子の発現が変化することを指します。ホルモンによるエピジェネティック変化は、「ホルモン刷りこみ(hormonal imprinting)と言います。単細胞生物のテトラヒメナでは、このホルモンによる変化が千世代まで続くことが報告されています。単細胞生物も環境因子の記憶を次世代に伝えることができるということです。
(前掲書p133)2023年10月31日改稿
posted by T.Sasaki at 15:22|
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