みたび、こんにちは。
ちょっと通貨のお勉強。
国際通貨とか、基軸通貨とか言われるものは、誰でも知っているドル、円、ユーロなど。
ただ単に、有力な国が発行しているから、というものではないようだ。
では、ドルの「価値」はどのように決まるのか。最もわかりやすいのは、「アメリカ人のアメリカという国家への忠誠度」である。つまり、アメリカ政府が抱えた借金を、アメリカ国民がきちんと働いて返すのか、と言い換えていい。実は通貨の価値とは「借金札」としての有効性なのだ。
その証拠にドル札には「BILL(お札)」ではなく「NOTE(証書)」とある。米国債の引き替え証書なのである。同様に「10ポンド紙幣」には「I promise to pay the bearer on demand the sum of TEN pounds(この紙幣の持参人には10ポンド分の価値との交換を約束する)」と明記されている。
なぜ、借金札なのか。たとえば30歳男性が5000万円の借金をして、それを額面1万円の小口手形にしたとしよう。その場合、就職先、仕事ぶり、家庭環境などで、額面1万円の価値は大きく変動する。
企業でも同じことをすれば、株価とは違う値動きになる。買収を繰り返して業績を急拡大するベンチャーと、三代目が継いだ地味な老舗企業では株価が圧倒的に前者が高かろうが、「借金札」として持つならば、後者となろう。これは借金札が相手の「信用度」そのものであるからだ。
企業発行の通貨(借金札)があるとすれば、表面的な業績より、社員が会社に忠誠心を持っているか、経営者が社員を大切にしているか、福利厚生がしっかりしているか、そこが重要となる。そういう会社なら、会社が苦境になっても社員が逃げ出さず、負債を必至に返すと判断できるからである。
「ハードカレンシー」と呼ばれる国際通貨を発行する国家は「建国神話」で統合し、国民の国家への忠誠度が高く、敗戦のような状況でも国民が逃げ出さない。そして、いずれは国家を再建する。そんな「信用」があるのだ。
(「紙の爆弾」2021年8月号p99)つまり、基軸通貨を発行する国民の大多数が、「借りたものは返す」という社会的に基本的なことを実行することで、貨幣の価値を担保するということだ。
それができない国の通貨は、ハードカレンシーにはなり得ない。
ところが、ハードカレンシーであるはずのドルの価値は下がり、「
アメリカは、ハイパーインフレ前夜」となっていて、ドルは、「子ども銀行券」と揶揄され始めている。
その理由を引用する。
08年のリーマンショックの際、国際基軸通貨としての「ドル」の価値が揺らぎ、世界同時不況となった。サブプライムローンといった「インチキ」を行った結果、ドルの信用崩壊が起こったためである。
その対策としてFRBは西側のハードカレンシー(基軸通貨)と無期限無制限の通貨スワップ協定を締結する。日本(円)、EU(ユーロ)、イギリス(ポンド)、スイス(スイスフラン)、カナダ(カナダドル)との間でドルは無期限無制限で交換(通貨スワップ)できるようにして、信用の揺らいだドルの価値を担保した。
ここで重要なのは、この時点以降、「ドル」が米国内で流通するローカルカレンシーと国際決済できるG7が保障するハードカレンシーの二つに「分離」したことだ。
それには理由がある。たとえば、FRBが勝手にジャブジャブとドルを刷れば、いくらでも円と交換して日本中の資産を買い集めることができてしまう。その対策として先の協定では、当然、「国際決済用のドル通貨」の供給量は、協定を結んだ各国の中央銀行で承認を必要とする。
その管理を担っているのがスイスのBIS(国際決済銀行)だった。もともとBISは第一次大戦時のパリ講和条約(ベルサイユ条約)でドイツの賠償金受け取りの組織として立ち上げられ、以降は先進国の中央銀行とFRBが株式を保有してきた。このBISを使って先の通貨スワップを結び、G7の先進国蔵相会議、別名「BIS株主総会」で話し合っていたという構図があるのだ。
これを理解していれば、バイデン政権以降、市中にばらまかれたドルは「米国内」でしか通用しない国内用ドルであることがわかる。つまりアメリカ国民が保有するドル資産の一部は、海外で使えなくなる可能性が高いのだ。
今現在、コロナ禍で海外渡航が止まり、人・モノ・金が止まっているために気づきにくいが、実際問題として海外渡航者から日本の銀行で一部の「米ドル」の換金が断られるケースが相次いでいる。少なくとも今年印刷された大量のドル紙幣は、BISによる主要国通貨の裏付けのない「子ども銀行券」となるかもしれないのだ。
(「紙の爆弾」2021年9月号p98)日本は、バブル崩壊時に、200兆円もの不良債権を抱えたが、1200兆円の国民預金という資産で、円の信用を維持し、頑張った。
バブル時の不良債権を生んだ人間たちは、もし、現在、復活と遂げていたならば、積極的に、公に寄付すべきである(特に日赤へ)。
一方、現在のアメリカには、ドルの価値を裏付ける資産がない。
だから、いずれ近い将来、アメリカ経済は崩壊する、と予想されている。
隣国の大国、中国も怪しくなっているということは、すでに、「
不穏な中国の空気」で紹介したが、「では、私たちはどうすればいいの?」ということになる。
私たちは、世界経済を動かしている人たちから見れば、超貧乏人である。
カネもないのに、カネの価値が下がろうが、ほとんど変わりがない。
カネの価値が下がって、貨幣価値がゼロに近くなって困るのは、大金持ちなのである。
その辺に食べ物は転がっている、と言っていいほど、飽食の時代であり、デブの天国である。
ご飯を食べていければいいのだから、あとは、超貧乏人たちは、金持ちたちの行動をじっくりと観察していればいい。
と、楽観的に私は思っているのだが。
posted by T.Sasaki at 12:22|
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