ふたたび、こんばんは。
東日本大震災の津波で失った蔵書のうち、私の頭を少し利口にした本を買い戻したのだが、その中で最も重要な本の一つが、昨日勧めた「日本の秘密」である。
副島隆彦先生が書いたもので、初版は、1999年5月、弓立社から出版され、新版はPHP研究所から出版されている。
この本を初めて読んだ時、自分自身、「いいものを読んだ」と感激し、市役所の友人にも薦めたほどで
ある。
そして、「漁師のつぶやき」というWebサイトを書いた(今書いているブログ版の前身)。
通信速度の遅いISDN時代であり、もちろんブログなどというツールもなく、自分で「ホームページビルダー」というソフトで、テキストをアップロードした。
学生時代から寮生活をしていたためか、政治にはもともと関心があり、簡単な左翼知識はあった(学生寮というところは、当時、左翼や宗教団体などがうようよしていた)。
先輩たちから、そういう知識を教育された(洗脳?)。
私は、彼らに、この本を読んでもらいたいと思う。
私はその後、漁船に乗り、そんな知識などと無縁の世界を10年くらいは過ごた。
やっぱりどんな仕事にしろ、一人前になるには、10年くらい必要なのかなあ、と思う。
その10年間というもの、パソコンのパの字もないほどデジタルには疎くなり、ウインドウズという製品すら興味がなかった(学生時代には、フォートランという言語で、いちいち自分でプログラムを組み計算させていた。今のような万能OSはなかった)。
そんなブランクがあっても、パソコンをいじれたのは、やっぱり、モノに対する興味が人一倍強いからなのかなあ、と思ったりする。
さて、「日本の秘密」に戻る。
20年前に書かれた本だが、今読んでも通用する。
現に最近出版された「経済学という人類を不幸にした学問」にも引用されている(副島先生の業績であるアメリカ政治思想の骨格は、「世界覇権国アメリカを動かす政治家とその知識人たち」だけではなく、「日本の秘密」にも書いてある)。
ゲームやスマホ、アイフォンに狂った人たちなど、読書できない人には無理だが、ちゃんと社会のことを考える人ならば、ぜひ、読んでもらいたい。
それほど、自分の人生、そして、自分を取り巻く社会情勢に関して書かれており、なおかつ、米軍、ロシア、慰安婦など、20年前当時と比較して読んでも、けっこう面白いと思う。
副島先生には非常に悪いが、私の気に入った部分を紹介しておく。
新版は、旧版に注釈が加えられているものであり、中身は同じである(たぶん)。
今の我々日本人には、気骨のあるジャーナリストという存在がよく分からない。そういう人々がすっかりいなくなってしまった。そもそも、ジャーナリズムの使命とは何か、が分からないのだ。ジャーナリズムの使命とは、「権力の行動を監視し、悪行を暴くこと」である。だから、「暴くこと」がジャーナリズムの本質なのである。この考えは、既に十八世紀のイギリスで確立している。ところが、日本のジャーナリズムは、権力者の行動を暴くふりをしながら、肝心のところになると、権力者といっしょになって、「秩序を守る」方に加担する。メディアの任務は「暴く」ことなのであって、「権力を守る」ことではない。秩序を守る人々はちゃんとそれなりに存在するのだから、要らぬ心配をする必要はないのだ。そしてもし、暴いた内容が間違っていたら、素直に謝罪すればいいのである。権力者の人格を傷つけた、などと騒ぐことはない。権力側は、どうせ必死で秘密を守ろうとする。だから、嗅ぎ回って調べあげて知り得た範囲で暴くことしか他にジャーナリズムの使命はないのである。
(新版「日本の秘密」p93)新聞社は、耳が痛いだろう。
産経新聞は、特に。
ジャーナリズムのかけらもない。
「秘密は墓場まで持って行く」というのは、あらゆる種類の権力者たちがとる行動様式である。しかし生涯を反権力で貫く、本物の左翼であれば、自分の知り得た事実は、事実として全て、表面に出して死んでゆくべきである。この一点で、反権力・反体制の人間は、救われている。いかに幼稚な理想主義に囚われた愚かで貧乏なだけの一生であったとしても、自分の知り得た真実だけを語る、という一点に於て、この人々の魂は救済されるのである。
(新版「日本の秘密」p159)人間は全て、権力者たちを含めて歴史の中で、一定の役回りを演じて消えてゆくだけの存在である。それ以上の深い知恵に支えられて行動するほどの生き物ではない。
(新版「日本の秘密」p134)
「あのときは、そうするしかなかったのだ。あとになってからあれこれ批判するのは、おかしい」という理屈は、幼稚な論理である。弁護者を含めて自らの思惑と行動は政治活動であれば、後々、厳しい評価と判定を受けるべきなのである。
(新版「日本の秘密」p171)
人は人生の年月の中で、五年、十年の単位で、自分の考えが変わってゆく。その変わってゆく自分を、しっかりと記録しつづけることだ。あのときは、ああ考えて、ああ信じていたが、今では、このように変わって、こう考えている、と書くこと。なるべく正直に書くことだ。自分に向かってきちんと文字で書いて確認してゆく作業をすることである。それが、知識・思想・学問なのだ。人間は年を重ねるにつれ考えが変わってゆく生き物だから、それでいい。それが成長するということなのだ。
(新版「日本の秘密」p182)
経済合理性のないものは、いくら頑張ってみてもどうせつぶれるのである。己れの正義感だけを根拠にするイデオロギイ的主張は、経済合理性がなければ、どうせ長期の現象存在としては堪えられないので、必ず消えてなくなるのだ。
(新版「日本の秘密」p349)
「世界中のすべての人の人権を擁護しよう」と叫びならが長年リベラル派を支持してきた白人の中産階級が、目の前に突きつけられた福祉のための重税と、移民の大量流入による絶望的なアメリカ社会の貧困と混乱の現状に対して、黙りだしたのである。貧困者層を助けようと思えば、さらに自分たちに重税を引き受けなければならなくなる。だから従来のリベラルな中間白人層自身が、実態としては、かなり保守化しているのである。
(新版「日本の秘密」p229)
「人間は生まれながらに平等だ」というのは、宣言に過ぎなく、決断なのである、そう決めた、ということである。だからこの立場の考えは、「人間は平等であるべきだ」と正確に言い直さなければならない。いくら平等、平等と言ったって、実際に平等であるはずもない。だから権利が平等なのであって人間が平等なのではない、という考え方が、猛然と、欧米では復活している。
(新版「日本の秘密」p328)
何人の批判も寄せつけないことになっている、現状の福祉優先の制度的な思考や過度の人権尊重思想は、国民生活の実情に対してすでに十分に過酷な重圧と化している。戦争も飢餓もちょっとのことでは起こりそうにもない、日本という平和な国に生きて、今何がいちばん恐怖すべきことかと言えば、それは、生まれてくる自分の子どもや孫が五体満足でなかったら、ということである。あるいは自分がいつか寝たきり老人になって何年も家族にオムツを替えてもらわなければならない痛恨の事態である。こうした極限的恐怖に対して、従来型のリベラル派で福祉優先の人権尊重思想は何の力にもなり得ない。それどころか、かえって国民生活にさまざまの激しい苦痛を強いる支配的イデオロギイと化している。この現象は、真に憂慮するに値する。
(新版「日本の秘密」p297)
家族(血縁者)の愛情のつづく限り、その病者の命を、我がことのごとくいとおしむ者がそばにつきそっている限り、その病者を延命させるがよい。家族の経済力その他が続く限り看護させてやるがよい。しかしそれ以上のことを、医療倫理、人命尊重、人間愛の普遍思想の名を借りて主張していはならない。そのことによる精神的・経済的重圧はすでに、理念としての福祉優先が強制する限度を超えて十分に国民生活を圧迫している。今の日本国民は、福祉思想の奴隷となっている。先進国はどこでもそうだろう。
(新版「日本の秘密」p300)海軍兵学校の校長たちは、すでに戦後を見据えて教育していた。
昔の先生たちはエライ!
海軍兵学校の卒業生は、74期までは将校任官して出征し多くの戦死者を出しているが、開戦時の昭和16年(1941年)以降に入学した75期から終戦の年の78期の学生たちは出陣していない。それまでの定員が年間約二百名だったのに対し、この時期の入学者の数は一気に一期あたり三千名、四千名にまで大幅に増えている。この時期は、佐世保と、横須賀と、江田島の三ヶ所で募集して、各々の地で教育を受けた。そしてこの最後の“海兵”出身者たちが、実は戦後の経済復興の中心を荷なった人々である。敗戦が色濃くなった時に、井上茂美海軍兵学校校長のあとをついだ松代校長が、「日本は戦争に敗ける。従ってお前たちは、戦後の日本社会を築くために、死なせないように特別に温存された人材である」と訓辞した、と海兵卒業者が私に教えてくれた。そして実際、日本の戦後の大企業で、“海兵”出身者で社長、副社長になった人はおびただしい数にのぼる。
(新版「日本の秘密」p264)以上、私たちの周りで起きる身近な出来事に関連することを列挙した。
ここを訪れている漁業関係者には、ぜんぜん関係ない話題と思われるが、そうではない。
経済合理性のないものは、特にお役人組織が関わるものが多く、世の中にはたくさんある。
それを見抜けば、いかに漁業で収入を得ることが、普通の人間として正常なのか、わかってくる。
ただ、漁船漁業の場合、個人の経済合理性を追求しすぎて、魚を獲り尽した。
魚類資源全体を考えて、経済合理性を追求すべきである。
このことは、水産庁や岩手県の水産部局が、もっと真剣に議論すべきものである。
posted by T.Sasaki at 21:20|
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