ふたたび、こんばんは。
アメリカの経済学は、破綻したらしい。
ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのポール・クルーグマンが、昨年10月10日、ブルーグバーグ紙で、アメリカ経済学者たちは間違った、と白状した。
「私たちアメリカ経済学者は、自分たちが書いてきた美しく着飾った高等数学の、難解な数式を多用した論文を、(人間世界を貫く)真理である、と考えてきた。それは間違いであった」
(「経済学という人類を不幸にした学問」p21)引用した本には、原文の英文まで書かれている。
この本には、ニューズ・ウィーク誌に転載されたマイケル・ハーシュという人の評論文も、英文と訳文で紹介し、それを、副島先生が解説している。
なぜ、ポール・クルーグマンが槍玉にあげられたのか?
それは、彼がアメリカ経済学会で威張っていて、反論意見を徹底的に叩いてきたからである。
アメリカの属国である日本にも、もちろん影響している。
ポール・クルーグマンは、ニューケイジアンであり、一応、ケインズの弟子ということになっているが、ケインズは、かなり逸脱したニューケイジアンを無視した。
副島先生は、ニューケイジアンたちがケインズの理論を悪用した、としている。
その対極にあったマネタリストたち(超規制緩和派)も、結局、役に立たず、むしろ、彼らは、ずるいことをやってきた。
その代表格が、ロバート・ルーカスであり、日本の子分が、竹中平蔵である。
マネタリストといえば、ミルトン・フリードマンであるが、その先生が、フリードリヒ・ハイエクである。
ハイエクは、ケインズのライバル的存在であった。
しかし、ハイエクは、フリードマンの悪意を見抜き、経済学から撤退している。
フリードマンは、正論を吐くふりをして、実は、強欲金融資本主義者だった。
そして、先述のルーカスである。
この部分を引用する。
世界の重要な情報というのは、一握りの強欲主義者に握られているのである。
ロバート・ルーカスを首領(主唱者)とする合理的期待(=予測)派は、「すべての人は、すべての情報が利用できて、完全に正しい予測、間違わない完全な予測(偏りのない予測、外れない予測、歪んでいない予測)ができる。全ての優れた経済理論も利用できる」と考える。
このような全能の神に近い、「完全なる経済人間」というモデルを大前提にした理論が合理的予測派だ。まるでカルト集団だ。このように、日本人の小室直樹先生がズバリと解明した。
誰がいったい、この完全なる「正しい予測、不偏な予測」のできる「完璧なる経済人間」だろうか。それは、まさしく、初めから、競馬の勝ち馬やサッカーの試合の勝敗を知っていること(インチキ、八百長トバク)である。
これを別名で、「情報の非対称性(アンシンメトリー・オブ・インフォメイション)という。普通は情報弱者は劣勢になる、という理論だ。しかし本当はそういうことではない。情報の非対称性とは、初めから情報は権力者、支配者たちに握られているのである。権力者たちは、初めから答(結果)を知っているのだ。
マネタリストのミルトン・フリードマンも、合理的予測(はできる)派のロバート・ルーカスも、ロックフェラー家に操られていたのである。フリードマンもルーカスも「シカゴ学派」である。名門シカゴ大学は私立大学であり、創立資金はジョン・D・ロックフェラー1世が出したことは前述した。
(前掲書p272)「統
計学を知らない人の株取引は、カモにされる」で、株取引の危うさを書いたが、その上、こんな有り様である。
金融バクチに手を出すのはやめたほうがいい、とあらためて思う。
いろいろと外国人の名前が出て、嫌になったと思うが、もう少し、お付き合い願いたい。
ここからは、余談。
ポール・クルーグマンたちが、数学や統計学で見誤った原因の一つに、「スウェット・ショップ・エコノミー」というのがある(
前掲書p182)。
これは、奴隷工場的な低賃金、長時間労働を行なって、モノを生産し、それで商売していること。
グローバル企業は、スウェット・ショップ・エコノミーの商品をアメリカへ輸入し、ついに、アメリカ労働者の失業を増やした。
結局、アメリカ上層部には富をもたらすが、下層労働者には、いい迷惑である。
このことで、いろいろな部分で目覚めた国が、中国である。
もう、工業経済では、アメリカは中国にかなわなくなっている理由が、ここにある。
そして、中国は、形を変え、今でも、スウェット・ショップ・エコノミーのようなものをやっている。
本当のことを書くと、これらの世界各地での鉄道建設には、中国の「生産兵団」という準軍隊が使われる。私は、この「生産兵団」の実態を2008年に、新彊ウイグルの炎天下の岩石砂漠地帯で目撃した。中国は、刑務所の受刑者(囚人)たちを大量に連れて来て、これらの荒れ地やジャングルの開発工事をやらせている。世界中でやっている。数百万人が動因されているだろう。それが「生産兵団」の実態だ。
(「今の巨大中国は日本が作った」p229)こうなると、中国は強い。
仮に、「SARS corona virus 2」で、1億人の中国人が亡くなっても、残り十何億人だか知らないが、彼らが突破する。
引用した著書の題名にビックリした人がいるかもしれないが、中国にアメリカ経済学の必要な部分を教えたのが、日本人であった。
森嶋通夫と青木昌彦という一般に知られていない人なのだそうだ。
これにより、中国は、巨大な経済成長を成し遂げる。
青木昌彦においては、亡くなった時、北京の清華大学で慰霊祭が行なわれた。
日本ではまったく報道されなかった。
森嶋通夫に関しては、マルクスの資本論を、ケインズ流に翻訳した。
それを中国人の秀才たちが学んだ、ということである。
森嶋と、もう一人、置塩信雄という共作者がいる。
「経済学という人類を不幸にした学問」という本には、経済学の基礎をなす数式が出てくるが、私はあまりわからない。
というより、理系人間のくせに、数式を見るのが嫌になった。
あとで、ちゃんと読もうと思う。
この本の中で、外せない文章があるから、ここに紹介する。
この青木昌彦と森嶋通夫の業績はものすごく重要だ。きっと、このことを中国人は日本人に知られたくないだろう。でも私は、このことを日本人に知らせる。特殊な能力を持った日本人学者たちが、今の巨大な中国を作ったのである。このことを、この本で知らせなければいけない大きな事実だと考える。
今のマイクロソフト(ビル・ゲイツが作ったコンピューター会社)やグーグル、アップルなどが開発した、たとえばiTunesは、元はiモードもそうだが、ソニーの日本人技術屋たちが作ったものなのだ。ウィンドウズとうアイデアだって、名古屋の若い学者たちが考えたものだ。そういうひらめきのある日本人が、東洋と西洋白人世界をつなぐ重要な役割を果たしているのである。
ところが、この生来きわめて優秀な日本人たちは、日本国内で正当に評価されることもなく、陽の当たらないところで静かにしょんぼりと死んでいく。
(「今の巨大中国は日本が作った」p156)この愛国心豊かな文章に、産経新聞系列のメディアのたわ言は、かなわない。
彼は、産経系列を大嫌いである。
私は、経済関係の数式が出てくると、そこを飛ばして読む。
副島先生は、私より一回り近く上なのに、よくこんなことがわかるなあ、と感心する。
彼は、社会科学出身であり、法学部出だ。
私は、工学部出身だから、本当は、数式に強いはずなのだが、もう微分積分の式を見ただけで、思考が停止するようになった。
漁師は、文系なのだと思う(笑)。
たぶん、最近、このブログを訪れた人は、何を書いてあるかわからないと思う。
そこで、理解するために読んでほしいものがある。
副島隆彦先生の書いた「世界覇権国アメリカを動かす政治家とその知識人たち」。
アマゾンの書評によれば、間違いの記述もあるそうだが、それでも、政治の大枠は理解できる、と思う。
50代からもっと上の世代だと、「日本の秘密」を読めば、ショックを受け、「世界覇権国アメリカを動かす政治家とその知識人たち」へと読み進めると思う。
日本がアメリカの属国である、と日本人にはっきりと知らしめたのは、副島先生である。
ここまできて、意外な記述が、「経済学という人類を不幸にした学問」にある。
アメリカのトランプ大統領は、若い頃、民主党員だったというのだ。
「スーパー301条」というアメリカが日本に対して、発動した法律を知っている人もいると思う。
特にこの頃、日本の自動車産業の勢いが強く、それを拒否するために、課徴金(制裁関税)を25%かけたというもの。
これに影響され、今、トランプ大統領が、中国にやっている。
トランプは、若い頃(1987年、41歳まで)は民主党員でゲッパート主義者であった。
(「経済学という人類を不幸にした学問」p177)日本を目の敵にした「スーパー301条」は、ゲッパート民主党議員の提出した法案が元になっている。
最後に、MMT理論。
これは、みんな批判されている。
失業者を減らすために、財政出動を積極的にやるべし、ということであり、カネをどんどん政府が使え、ということ。
ケインズの考えを、もっと進めたもの。
このMMTというのは、貧乏人(最低限度の低所得者層)であるすべての国民に、毎月10万円(アメリカなら、月1000ドル、ヨーロッパなら月800ユーロ)を、政府が現金で配れ、という政策提言だ。
政府と中央銀行が、どこまでも、どれだけでも、お札(紙幣)を印刷して国民を救え、である。大借金(即ち、更なる財政赤字の積み上げ。更なる日銀引き受け)をやりなさい。それが正義だ、という漫画じみた経済政策が、公然と主張されているのである。
(中略)
AOCという略称で通用するアレクサンダー・オカシオコルテス(30歳)が旗を振っている。彼女は、今、アメリカで人気のある若い下院議員(ニューヨーク州第14区ブロンクス区選出)だ。両親はプエルトリコ出身。貧困層の味方で、なつかしい映画『ウエストサイド物語』を思い出させる。あの映画はNYに住むプエルトリコ人たちを描いた。
それと、二ユーヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授(50歳)がそうだ。貧困層の味方で、古生代(パレオ、paleo- ペイリオウ)ケイジアンだ。ケインズ思想に、本当は最も忠実な祖形、原型のような学者たちだ。
(前掲書p254)「MMT理論」で検索すると、いろいろ出てくるが、まあ代表的なもの。
https://vicryptopix.com/mmt/(「
クリプトピックス」)
みんな右往左往している感じ。
この新型ウイルスで、もう経済は、ますます底なし沼。
だから、「
東京オリンピックは、きっと中止」で書いたように、「際限なくカネを配れば、財政破綻するが、どうせ破綻するなら、毎月、生活費として、みんなに10万ずつ配る。どうなるかやってみればいい。もう先がわからないのだから。」なのだ。
ここで、「だから」という接続詞を使ったが、実のところ、MMT理論については、今日、本を読んだばっかりなので、「だから」ではない。
思いつきである。
国民に、ただ「休め」と言えば、みんな生活に苦しむだけである。
それよりは、「休め」の代償として、毎月10万円ずつ配って、そして、「外交の安倍」という評価を勝ち取りたいならば、世界同時デフォルト、と各国に提案し、新通貨に切り替えればいい。
通貨は、所詮、人間の作ったものだ。
だから、みんなが生活できるように運用できればいいだけの話である。
金持ちのためだけに、通貨はあるのではない。
「経済学という人類を不幸にした学問」を読んで、私もケインズ主義者、それも、MMTに傾倒しそうだ。
ただし、純粋なケインズ主義やMMT主義なら許せるが、これを利用するずるい人間は許せない。
ずるい人間は、いっぱいいる。
新型ウイルスが解決したら、このMMTの話は、なかったことにする。
(追記)
書いてから気がついたことだが、日本の野党が10万円支給の話を言い出したのは、このMMT理論のことなのか。
いい始めた人は、ちゃんと白状すべきだ。
それが、学者への礼儀だと思う。