日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

日本の漁業が崩壊する本当の理由.jpg

すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2018年03月02日

ミズダコはかわいそう

こんばんは。

事件以外のことを書くのは構わないだろうから、暇なので、少しずつ。

1月21日に行われた、資源管理型漁業かご漁業者協議会で、勉強になったこと。
それは、ミズダコの悲劇である。
毛がにと違って、ミズダコは、1回の生殖行動(交接という)で、オスはそのまま死ぬそうだ。
メスは産卵し、それが孵化すれば、死ぬ。
だから、不幸にも、一発やれば死ぬということ。
何となくかわいそうな気がするが、スルメイカも同じだそうだ。

ということは、でかくなってからミズダコを獲っても、獲ってしまったら、子は増えないことになる。
これをどう考えたらいいのか。

今から、宮古魚市場のたこの規格を記す。
まずは、ミズダコから。

大々  12kg以上
大   12〜5kg
小    5〜3kg
ピン   3〜2kg
ピンピン 2kg未満

ヤナギダコ
小    3.5kg以上
ピンピン 3.5kg未満

マダコ
大  1.5kg以上
小  1.5〜0.8kg
ピン 0.8kg未満

ミズダコの大々の規格になるまで放っておいても、獲ってしまえば、ミズダコは増えない。
しかし、獲らないわけにはいかない。
ここで、産卵機会を多くする、という考え方が必要になる。
つまり、産卵させる確率を大きくしながら、水揚げを伸ばすということである。
いったい、どうやって?

今、岩手県のかご部会では、ミズダコの水揚げに関し、変なねじれ現象がある。
九戸地区では、2kg未満のミズダコを放流しているのに、下閉伊地区以南は、1kg未満放流と甘い漁獲制限をしている。
私は、2kg未満放流を全県でやるべきだ、と発言してきたが、どうなるか、わからない(昨年の会議で言い忘れたこと)。
放流する規格を大きくすればするほど、ミズダコが生き残って、産卵する機会は大きくなる。
もちろん、漁業者の側も、大きくなってから獲ったほうが、収入も大きくなる。
私は、3kg未満放流にしたほうがいいと考えている。
ケチケチするな。
魚類資源が大きくなるということは、結果的に地域全体が潤うのだから。

中には、「ピンピン」が一番高いから反対、という人もいるだろうが、掛け算してみてほしい。
ミズダコの成長は早く、1年で6倍にも7倍にもなるのだし、先ほどの産卵機会も大きくなり、一石二鳥の効果がある。

私が船頭やるようになってからは、みずだこのピンピンなど、ほとんど水揚げしない。
伝票をみてみるがよい(たまに間違って揚げることもあるが)。
ある船主に、「君もやったら?」と言ったら、「ほかの人に獲られてしまうから、獲るよ」と返答された。
そこで、私は、「それでいいじゃないの。大きくなったのを後から獲った人は、幸せになるんだから」と返したら、「それはそうだけど・・・」と。

この意識が、資源の増えない理由の一つである。

ヤナギダコに至っては、そういう制限がないから、かわいそうなくらい小さいのも水揚げされている。
「漁運さんも獲ってくればいいじゃないですか」と市場の職員には言われるが、私は、ヤナギダコもピンピン規格は、漁獲制限である(ただ3kgくらいのは揚げたりする)。

マダコに限っては、暖水や冷水の分布のしかたによって、資源変動が非常に大きく、放流効果があるのかないのか、はっきりしないらしい。
珍しく、回答の歯切れが悪かった。
しかし、おでんになるたこのような小さいのは、放流すべきだと私は思う。
あんなもの。

ちなみに、三陸沖にいるたこ類は、すべて、一発やれば、死ぬことになるのだそうだ。
だから、産卵機会を増やすような取り組みは、必要なのである。

一方、毛がには、孵化後2歳で生殖できるようになるが、交尾も毎年ではなく、成長も非常に遅い。
8cmの毛がにに成長するまで、7年もかかるそうだ。
だから、ミズダコより、資源増殖が難しい。
したがって、この3月から実施される、甲長8cm以上の漁獲制限は、正しいと言わざるをえない。

もともと今回の事件を起こす前から、私は、3月初めだけ見て、切り上げるつもりでいた。
8cm以上の毛がにとなると、水揚げは、6割減となるからだ。
これでは、事業として成り立たない。
そういう時は、道具をすべてあげて、海を休ませたほうがいい。
魚類資源を増やすために。
同じ理由で、4月の特別採捕も申し込まなかった。
あんなもの、資源が減っているのだから、やらなくてもいい。

一昨年のこの会議では、「やらなくてもいい」と発言したが、今回は、会議が行われた時期に、ほとんど毛がにの水揚げがなく、なんとなくかわいそうだったのもあって、何も言わなかった。
でも、やっぱり、特別採捕は、やらなくていい。
ちなみに、昨年は、かご漁業の周年操業はやめるべきだ、と言ってきたが、どうせ耳を貸さないだろうから、その点は何も言わなかった。
彼らは、資源増殖に興味がないのかもしれない。

ここで、北海道日高地区の記事を貼り付ける。

 日高東部(冬島地区を除くえりも漁協管内)の毛ガニかご漁は10日に低調な水揚げのまま終漁した。漁期は22日までだが、資源保護で早期切り上げ。漁獲量は不漁年だった昨季をさらに4割ほど下回った。一方、浜値の高騰に支えられ、金額は昨年を若干上回った。
(2018年2月26日付「週刊水産新聞」5面)


岩手県の漁師は、頭の程度が低いと言われても、しかたがないだろう。

と、県の水産職員たちは、心の中で思っている(笑)、きっと。

せっかくだから、水産技術センターで作ってきた、毛がにの生態とミズダコの生態の図を、スキャンして載せる。
こういうのは、漁業者全員が共有し、勉強し、いろいろ意見を言い合ったほうがいい。

毛がにとみずだこの生態.jpg
posted by T.Sasaki at 20:47| Comment(0) | かご漁業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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