日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

日本の漁業が崩壊する本当の理由.jpg

すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2017年04月10日

日本の漁師は大バカものだ

こんばんは。

さっそく「日本の漁業が崩壊する本当の理由」を読んでしまった。
読んだ感想は、非常に○。
疑問はあるが、○どころか、三重丸以上!

これほどの本なら、水産庁の役人たちはすでに読んだと思うが、全国の漁協の組合長たちは、まだ読んでいないと思われる。
組合長だけでなく、理事、参事、指導課長、市場のある組合ならば、販売課長も読むべき本である。

 FAOや世界銀行の分析を見ると、日本の海とその魚の状態が、世界からどのように見られているのかよくわかります。2013年〜2015年の水揚げ量平均を元に、FAOが予測した2025年の水揚げ量によると、世界全体では17.4%の増加が予想されていて、各国が均衡もしくは増加となっている中で、日本は13.7%のマイナスと突出して悪く予想されています。次に悪いのが韓国で2.9%のマイナス。ちなみにノルウェーは18.9%の増加です。
 また世界銀行は世界の漁業について、2010年時点の漁獲数量と2030年の予測を海域ごとに比較しています。世界全体の水揚げは平均で23.6%増加していますが、表の中で1ヵ所だけマイナス9%を示している海域があります。それが日本周辺の海域なのです。
(「日本の漁業が崩壊する本当の理由」p43)


私は、これを読んで、少なからずショックを受けた。
魚が獲れなくなったのは、海況の変化によるものが大きいと思っていたが、そうではない。
もし、海況の変化だけならば、世界全体の漁獲も減少するはずだ。
日本は、魚を獲りすぎてしまっているのだ。
獲るのがなくなったから、小さいのを獲るしかない、という悪循環があり、そして、それを改善しようとしない日本人を見越して、世界の諸機関は、このような予測を立てている。

日本の漁業者、関連産業、それらを統括する水産庁をはじめ、研究機関まで、みんなバカなのだ。
こんなことも知らなかったのだから、私もバカの一員である。
そして、魚類資源の減少を感じながら、まだ何でも獲ろうとしている人間は、もっとバカである。

持続可能な漁業を行うことにおいて、日本は超後進国であり、大きな差が開いて、他は先進国である。
先進国の取り組みを簡単に書くと、成熟するまで小さい魚を獲らないこと。
そして、魚の再生産を妨げないこと。
集約すれば、ほぼこの二つに尽きる(ただし、するめいかのような短寿命の魚は、再生産のほうに重点を置かざるを得ない)。

それを達成するために、TACをたくさんの魚種に設定し、その消化率を100%になるように設定する。
つまり、常に低めに設定する。
消化しても、漁期中は増枠しない。
IQを有効に使い、IQの不正消化を防ぐため、小さい魚の投棄禁止。

もちろん、資源管理先進国でも、ダメな取り組みがないわけではないが、日本のそれとは、レベルが違いすぎるのである。
数年の禁漁もいとわないほどであり、日本海で行われたハタハタ禁漁を彷彿させる(しかし、その後、漁を再開した秋田では、漁獲量をごまかすことがあったらしい)。
水産行政トップの政治家のリーダーシップも強く、それ対する漁業者の猛反対は、もちろんどこの国にもある。
本の中の対談で、勝川俊雄さんという東京海洋大学准教授が言ったことを引用する。

いまは成功しているノルウェーやニュージーランドも、最初は大反対だったんです。俺たちの生活を破壊するのかって。でも「量より質」の考え方で規制が入って、5年もしないうちに漁業が儲かるようになると、両国で「え、日本って漁獲枠ないの?それはダメだよね。信じられない!」って言われる。オマエらも最初反対してただろって思うんだけどね。漁獲規制があることで自分たちが儲かるなんて経験をしたことがないわけだから、想像するのが難しいのかなって。
(前掲書p103)


TAC設定は、小型船を最優先に設定する。
これは、本の中で、成功しているノルウェーの事例を持ち出しているが、読んで、なるほどなあと思う。
資源量が減少傾向にあるときは、小型船の漁獲割り当ての減少比率を最小限に抑え、中型、大型の順に、減少比率を大きくする。
確かに、漁獲効率が大きい漁業ほど、減少比率を大きくするのは、資源管理のために理にかなった方法である。
そして、逆に資源量が増加傾向のときは、中型、大型の割り当てを大きくしてやるそうだ。
いか釣りをやってみて思うのだが、小型船は、いくら大漁でも、増枠分、獲った試しがないから、そんなものだろう。

岩手県沿岸漁船漁業いか釣り部会では、TAC設定に関し、まき網やトロールの減少比率を大きくすべきだと提案している。
これは、まさのこの事例に相当する。
その後、どうなったか知らないが。

さきほど、日本の漁業者はバカである、とけなしたが、これには、どうも恵まれすぎていることに理由があるようだ。
対談の中で、前述の勝川さんが言ったことを引用する(言われてみれば、その通り!)。

日本は漁場に恵まれすぎていて、漁場を守ろうという意識が低いですね。魚がいっぱいいる海って、世界を見てもそんなに多くないんです。地中海だってそんなにいない。日本は寒流と暖流がぶつかるなど条件がよくて、極めて豊富な水産資源があります。これはアラブの人たちが自分たちの土地から石油が涌いてくるのが当たり前だよねって言ってるのと同じで、日本人は海に魚がいるのは当たり前だって思ってる。でも実際は違って、世界でもこんなに豊かな海はないってことに、日本人は気づいていないんです。あと、豊かな漁場の漁業者ほど、資源を守ろうという意識が低い。いくら獲っても魚が涌いてくるって思ってる。ただしそれは昔の漁具を使っていたころの話。今の漁具では獲りきれてしまう。その点、昔からやせた漁場の人たちは資源を残す工夫をします。日本は恵まれすぎていて、資源を守る意識が全然育っていないんです。このままでは先がないですよ。
(前掲書p112)


つまり、私たち漁業者が、「いつかまた魚が涌いてくる」と勘違いしているわけだ。
本当にバカだ。

しかし、これくらい恵まれた海ならば、資源増殖の取り組みさえしっかりやれば、世界に向かうところ敵なし、ということである。

これを危惧しているのが、漁業先進国ノルウェーなのである。
再び引用する。

 ノルウェーサバの資源管理方法について漁業関係者に詳しく聞き始めた際、ああり教えたら日本のサバ資源が復活して、ノルウェーからの買い付けが不要になるのではないか?と心配されました。ノルウェーにとっては、それほど日本の魚が消えていく原因とその対策は、明白なものなのです。
(前掲書p143)


ヨーロッパから日本へ輸出するのは簡単であるが、逆は、大きな障害がある。
エコラベルである(これはずっと前からやっている。昔「地球白書」で紹介されていた)。
MSC、ASCなどがあるらしいが、これは、持続可能な漁法で獲った魚のみ流通できるようにしたしくみである。

http://www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1136/cat1143/(「WWFジャパン」)

これだと、岩手の2そう曳きは、まるっきり対象外である。

ここで2そう曳きが出てきたから、この問題に触れないわけにいかない。
まず、日本のトロールに関する記述を2点引く。

 200海里漁業専管水域が設定されると、日本のトロール船はアメリカ・ソ連(当時)のEEZ内のスケトウダラ漁場から出ていかねばならなくなります。後に「ドーナツホール」と呼ばれるベーリング公海(公海とはEEZに入らない海域)でスケトウダラの好漁場を発見、年に約100万トンもの量を日本船が韓国、ロシア、ポーランド、中国船とせり合いながら1986年から1990年にかけて漁獲しますが、わずか5、6年で獲り尽くしてしまい、1994年以降、ドーナツホールでのスケトウダラ漁は停止となっています。
(前掲書p17)
 中層トロールの場合は問題ありませんが、網が海底に着底する場合は、海底の環境が荒らされることで砂漠のようになってしまい、資源がそれこそ「根こそぎ」いなくなってしまうことが問題になっています。
 たとえば、九州南部の海域で行われてきた「以西底曳き漁業」の水揚げは、1960年代には30万トンほどあったものの、近年では1万トン弱に激減しています。
(前掲書p84)


三陸沖漁場は、前述のように、私たちが平和ボケして感じなくても、世界屈指の好漁場である。
好漁場であるからこそ、かけまわしを2そう曳きにしても、今までもったのだ。
もし、好漁場でなかったら、今頃、岩手沖合いは、死の海になっていた。
このくらいのことは、自覚すべきである。

アメリカでは、トロールの混獲を、約1%としており、鮭を獲らないシステムもあるそうだ。
「サーモン・エクスクルーダー・デバイス」というものらしい。
2そう曳き業界に心あるならば、ぜひ、導入すべきものである。

その前に、かけまわしに、すべて戻すべきである。



次に疑問点。

p126に「投棄禁止断行でノルウェーのマダラ資源を救った漁業大臣」と題した章があり、小さいマダラを投棄禁止したのまではわかるが、それが、マダラ資源の維持につながるかどうかについての関連がわからない。
自分流に勝手に解釈するが、TACの割り当ての中に、小さいのをちゃんと含めて計算し、TAC消化した時点で、パッと終漁にする、ということだろうか。
小さいマダラの割合が多い場合も容赦なく。
なおかつ、TAC数量を大きくしないことが条件であれば、確かに資源量は上向く。
それとも、小さいマダラが、網を引き上げる前に抜けるよう、漁具の改良をしたというのだろうか。
マダラは、ある程度浮いてくれば、プカンと浮いてしまって、再び潜ることができない魚だ(まれに、産卵の終わったやせた奴は、潜ることがある)。
この点がはっきりわからない文章である。

みんな買って読んだほうがいい。
日本の漁師は、笑いものにされているのだ。
posted by T.Sasaki at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 魚類資源の減少について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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