日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

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すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2014年01月31日

釜石沖風力発電は、復興に貢献できるのか

みなさん、こんばんは。

最初に今年の毛ガニ漁についてですが、残念ながら、まるっきり不漁で、今月の水揚げは、昨年同月のおよそ3分の1です。
仲買人からは、「まだ漁がまとまらないんですか?」と電話は来るし、これでは、毛ガニ祭りにならないのではないか、と宮古市の行事を心配しています。
宮古地区の同業船は、ほぼ、私と似たようなもの。
こんな不漁な年を私は知りません。
昨年秋のスルメイカ大漁の反動かな?

昨年の話は、山ほど書くことがあったのですが、もう忘れてしまいました。
記憶力の悪いほうなので、今年になってからのことを書きます。

今月5日、釜石サテライトというところで、海洋エネルギー実証フィールドの説明会が行われました。
岩手県には、私たち小型漁船の集合体である沿岸漁船漁業組合というのがあります。
これには、イカ釣り部会、いさだ部会、かご部会があり、その各部会の役員たちが、この説明会に参加しました。
といっても、有志の方々だけの参加です。
私は、大船渡への用事もあって、ついでに参加しました。

中身は、釜石尾崎半島沖で、風力発電と波力発電の実証試験を10年間やり、データを検証する、ということです。
説明会では、「復興のため」、この事業は必要だ、と県職員の方は言っていました。
実証試験で好成績が修められれば、釜石地区に発電設備を作る工場を誘致し、沿岸地域の活性化につながる、という考え方で、一方、漁業への影響はあまり考えておらず、むしろ、これらの発電設備が、漁礁的な効果を及ぼし、魚類資源の増大につながる、と夢いっぱいの話をしていました。
もちろん、漁船漁業者の誰一人として、賛成する人はいません。
その海域で操業する人たちは、確実に収入が減るのですから。

岩手県北部では、遠浅である理由から、着床式(固定式)の洋上風力発電が計画されています。
こちらは、ヨーロッパなどで、すでに実績があります。
しかし、釜石沖の風力発電は、浮体式風力発電であり、これをアンカーなどで設置します。
つまり、固定せず、揺れる風力発電、と言ったほうがいいと思います。
なぜ、釜石沖は、浮体式なのか、という問いに対する答えは、風力の得られる海域の水深が深いためであり、つまり、釜石沖は、岸近くでも水深が深いからなのです。

配られた資料に、ロードマップ案というページがあり、2030年には、岩手沖で5GW(500万KW)の洋上風力発電設備が登場する、という表がありました。
びっくりして、すかさず質問。
「5GWというと、どれくらいの数の風力発電なのですか」
その答えは、軽く1000以上、という回答。
その後、これは、ただ書いただけであり、実際には、そういうことはありません、と。
私は、「じゃあ、こんなこと書くな」と心の中ではつぶやいていました。
でも、やる気がなかったら、5GWなんて書きませんよ。

ついでにもう一つ質問。
「エネルギーペイバックタイムやコストペイバックタイムは、どれくらいになるのですか」
これには、まともな回答はなく、「それを調べるための実証試験です」と。
つまり、発電設備として、浮体式風力発電がまだ使えるかどうかわからない、ということなのです。
確実なものならば、私たちも少しは譲歩できるのですが、まだ何にもわからない事業について、漁業者を犠牲にするのは間違っている。

漁礁効果を記した資料も配られましたが、過去に設置された漁礁で確かな効果は得られていません。
それはなぜか。
漁礁の位置は動くわけではないので、そこは遊漁船(釣り舟)の餌食となるのです。
今や、GPSの時代ですから、ピンポイントで釣り糸を下げ、小さかれ大きかれ、確実に魚は釣られます。
だから、漁礁では、期待したほど魚は増えないのです。

説明会では、国のエネルギー事業に対して、少しでも貢献したい、という話もしていました。
岩手県は、原発が全くなく、その関連施設もない。
これを批判する人がいるのかもしれない。
だから、貢献したい、ということがでてくるのでしょう。
しかし、原発は、今や、日本の不良債権です。
原発に頼らない経済政策をやってくればよかったのに、そうしなかった。
何も、岩手は悪くない。
むしろ、原発を受け入れなかったことに誇りをもったほうがいい。

昨年、新潟から宮古まで、ちょっとした金融機関の用事で新幹線などで往復しました。
嫌でも、家の屋根がたくさん見えます。
そこでわかったことは、太陽光発電をほとんどの家がやっていないこと。
屋根に何も載っていない。

バカくさい話ですよね。
漁業者を犠牲にしなくても、やれることはたくさんあります。



「復興のため」という言葉は、被災地では、錦の御旗に等しく、これを語れば、誰もが反対意見を述べにくくなる、という心理を、県側は利用しています。
彼らは、ずるい。
漁業者の収入が減るのが復興でしょうか。

浮体式風力発電は、すでに福島沖で実証試験が始まっています。

http://www.minpo.jp/news/detail/2014012913585(「福島民報」)

なぜ福島では漁業者からゴーサインが出たのか。
それは考えればわかるはず(放射性物質の話)。
福島沖の風力発電は20キロ沖合いにあり、釜石沖は8キロ。
福島沖のデータから、さまざまな計算ができます。
海底ケーブルの設置データは割り算すればいい。
福島沖のエネルギーペイバックタイム、コストペイバックタイムから、釜石沖に設置した場合を考えれば、それで事業化できるかどうかはわかるはずです。

釜石に発電設備の企業誘致するとしても、実証試験程度で本当に誘致できるのか。
全部で5GWの設備需要があるなら、それは確かに誘致できるでしょう。
しかし、県は、5GWという数字を、表にしていながら、否定した。
現実的な筋書きが全くない。

彼らはバカかもしれない。

ではでは〜。
posted by T.Sasaki at 21:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 大震災・復興 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一年ぶりですか?変わらず怒ってますね。半端な説明にははっきり反対するべきです。漁業者も甘いところを見せてはいけません。得られる電力の等量の漁獲量と漁場を失う事になります。少なくともそうでない実証を求めなければなりませんね。死活問題に役人はタダでOKをもらうつもりですよ。風力一基、波力一基ごと半径数百カイリから工事や振動や音やケーブルや海流の変化で魚がいなくなると踏まなければなりません。自然は超保守的です。山からの伏流水などの障害も発生します。福島や釜石の沿岸や沖合はもう漁場ではなくなります。沿岸や沖合がないところに遠洋もない事は分かると思います。釜石だけではなく宮古湾を巨大防潮堤で囲む構想もあります。これも沿岸を破壊し、北上山系の悠久の伏流水を乱します。思い出しました。閉伊川上流の門馬というところでバイオ発電が始まりますが、不凍液やエンジンオイルや錆び止め薬品や廃液を閉伊川に流すようですよ。そんな川魚や磯魚が喰えますか??彼らはバカ者です
Posted by コーケやん at 2014年02月02日 17:59
コーケやんさん、こんばんは。

一応、騒音などのデータは、他の海域でやった実験からあまり影響ないそうです。

それにしても、「不凍液やエンジンオイルや錆び止め薬品や廃液を閉伊川に流すようですよ。」は、本当ですか。
できれば、その出所を教えてください。
Posted by T.Sasaki at 2014年02月10日 19:26
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