ふたたび、こんにちは。
グリーン、ブルー、グレー。
水素の生産で、二酸化炭素を排出するか否かで、呼び名が違う。
太陽光、風力、地熱、水力のエネルギーで生産する水素をグリーン水素という。
一方、火力発電などの化石燃料で生産された水素は、ブルー水素、グレー水素である。
ブルー水素は、発生した二酸化炭素を地下貯蔵したり、二酸化炭素の再利用したものを言う。
グレー水素は、そういうこともしないもの。
したがって、問題とされる二酸化炭素を排出しない水素製造は、グリーン水素である。
現在、蓄電池として使用されている代表的なものは、鉛バッテリーとリチウムイオインバッテリーである。
全固体バッテリーも開発途上であり、完成実用化されれば、電気自動車にとって画期的である。
しかし、その上を行くのが、トヨタMIRAIの燃料電池車である。
水素社会が到来すれば、燃料電池は有利となる。
特に、燃料電池車は、水素ステーステーションの普及にかかっている。
これに関して、まずは、バスやトラックから燃料電池を導入していくのがいいようだ。
(※1)事実、中国ではすでにこの方向で動き、日本を追い越してしまった。
(※2)水素はいろいろと問題点が語られるが、すでに実証試験は各地で行われている。
ドイツでは、電車が水素で動いている。
(※3)スコットランドでは、小型船舶が動いている。
(※4)台湾ではスクーターが開発されている
(※5)燃料電池フォークリフトも流行り始めた。
(※6)純粋に水素を燃料電池で使う以前、すでに、エネファームという家庭用燃料電池が普及している。
これは化石燃料を利用しているので、二酸化炭素ができてしまうが、排熱を利用して給湯までできるので、熱効率は80%以上となる。
同じ化石燃料の火力発電の倍である。
このエネファームの燃料に水素を利用するようになれば、二酸化炭素を排出するこはない。
(※7)まだ、「
エネファームが、何か事故を起こしたという事例も報告されていません」(「水素社会入門」p131)ということから、安全面にも支障がないだろう。
水素は、化学工業原料でも需要な位置を占めている。
半導体など現代社会でなくてはならないものに、水素は必要なものである。
(※8)水素を積極的に活用する社会の未来は明るい。
問題点は、水素の貯蔵と輸送である。
方法として、超高圧圧縮(高圧ガス)、超低温液化(液化水素)、水素吸蔵合金、LOHC(有機物と反応させて液化。代表的なものがMCH)、アンモニア液化などがある。
一長一短あるが、用途により、どれも使える。
高圧ガスが最もコストが安く、有望であるようだ。
水素社会になれば、水素流通の規模は拡大し、技術進歩も兼ねてコストは下がる。
ここで余談になるが、水素吸蔵合金について、えっと思うようなことがある。
液化するよりも合金に貯蔵するほうが、単位体積あたりの貯蔵量が多いとか。
(※9)水素の貯蔵や輸送が活発に行われるようになれば、さまざまなことができるようになる。
太陽光発電や風力発電のように、発電量が自然要因に支配される場合、これらから生産されたエネルギーを水素として保存し、必要な場所に運んで使えるようになる。
これにより、自然エネルギーの発電設備が増加し、化石燃料に頼らず、社会を動かすことができるようになるだろう。
日本の離島などでも、実際に実用化している。
(※10)また、燃料電池の発電で発生する水は、飲料水として、利用できる。
(※11)さらには、海外の安定した自然エネルギーを水素にして日本へ運ぶことができるようになる。
(※12)
しかし、海外に頼る前に、自前でまずやるべきだ。
東芝のシステムは、グリーン水素でエネルギーを賄えるようになっている。
(※13)すでに、実用化できる段階に来ている。
あとは、やる気があるかないか、だけだ。
(1)
トラックやバスなどの大型車両では、ガソリン車はもちろん、電気自動車よりも燃料電池車のほうがメリットがあると考えられるのです。
理由のひとつは、燃料電池は小さくて、軽くて、パワーが出せる、ということ。乗用車くらいのサイズではほとんど差が出ませんが、より大きなパワーを出そうとすると、エンジンやバッテリーはそれに比例して機材自体も大きく、重くならざるを得ません。しかし、燃料電池では、パワーを2倍にするために必ずしも2倍の大きさにする必要はなく、小型でも高出力が可能です。
もうひとつの理由は、大型車両は商用がほとんどであることです。
輸送に使われる大型トラックは、たいていは決まったルートを走ります。大型バスも、路線バス、観光バス、長距離バスなど、走るルートが決まっています。ということは、燃料電池車の場合にネックとなる水素ステーションの問題がない、ということです。あらかじめルート上の充填場所を確認しておけばよいですし、必要であれば、自前で設置したり、定期的な利用を条件に供給事業者と交渉して設置してもらうこともできるはずです。
(「水素社会入門」p102)
(2)
燃料電池車(FCV)は、販売補助金制度などの政策で普及が急速に進んでいます。2018年にすでに日本の普及台数を抜き、2020年末には7200台と、日本の2.5倍に達しています。中国でのFCVは、MIRAIのようなパーソナルユースの乗用車はほとんどなく、長距離トラックや路線バスが大半です。2020年には、燃料電池で走るトラム(路面電車)も導入されています。
(前掲書p173)
(3)
2018年、ドイツでは水素燃料電池で動く世界初の旅客電車が運行をはじめたそうです。航続距離は1000キロメートル、水素を1回充填すれば1日中走行が可能だということで、燃料電池のメリットをよく活かしたシステムだと思います。
ドイツではディーゼル機関車が走る路線がいまも多く残っているため、燃料電池への置換はメリットが大きいでしょう。
(p106)
(4)
燃料電池は、船舶の動力源としてもメリットがあります。すでにイギリスのスコットランドでは、河川を運航する小型船舶で燃料電池を動力としたものが運航しています。また、同じスコットランドですが、水素を燃料とする世界初の海上カーフェリーが2021年には進水する予定です。
日本ではまだこの分野の実証実験は多くありません。2016年に東京海洋大学が燃料電池船「らいちょうN」で試験航行しました。全長12.6メートルで70kWの燃料電池を搭載しています。
(前掲書p106)
(5)
スクーターでは水素吸蔵合金と燃料電池を組み合わせたものがすでに開発されています。開発したのは、台湾のAPFCT(アジア・パシフィック・フューエル・セル・テクノロジーズ)という企業で、50cc/125ccクラスのスクーターです。
水素吸蔵合金を充填したカートリッジを差し替えることで、簡単に燃料補給ができる仕組みになっています。カートリッジは小さくて取り扱いが簡単なうえに、低圧なのおで安全というメリットもあります。
(前掲書p110)
(6)
フォークリフトには、エンジン式とバッテリー式のふたつのタイプがあり、ひと昔前はエンジン式がほとんどでしたが、最近は環境意識の高まりから、バッテリー式が主流になりつつあります。このバッテリー式をベースに、動力に燃料電池を搭載しているのが、燃料電池フォークリフトです。
バッテリー式に比べて燃料電池の良いところは、低温に強いということ。バッテリー式が主流になりつつあります。このバッテリー式をベースに、動力に燃料電池を搭載しているのが、燃料電池フォークリフトです。
バッテリー式に比べて燃料電池の良いところは、低温に強いということ。バッテリーは低温に弱いので、冷凍・冷蔵品を扱う倉庫などでは、燃料電池のほうが適しているといえます。
また、水素は充填時間が約3分と短いのもメリットです。バッテリー式の場合、充填に6〜8時間かかるので、通常はスペアのバッテリーを用意しておいて交換しながら使用します。しかし、電池だけでも1トン近くの重量があり、交換するのもなかなか大変な作業なのです。その点、燃料電池車なら、一休みしている間に充填できてしまうので、作業効率が上がります。
燃料電池フォークリフトの販売は、国内では2016年からはじまっていますが、普及は160台程度。一方、アメリカではすでに2万5000台が導入されています。特にウォルマートとアマゾンの小売大手2社が導入したことで、急速に普及が進んでいます。
(前掲書p111)
(7)
エネファームは、複数の事業者が統一の名称で販売しています。現在は、パナソニック製、アイシン製、そして京セラ製の3機種になっています。水素燃料電池という認識は進まなかったものの、2020年度末には累計販売台数39万台に達しています。
エネファームは、燃料電池ユニットと、貯湯ユニットから構成されます。
燃料電池ユニットでは、家庭に供給される都市ガスやLPガスを改質して水素を取り出し、燃料電池で電気エネルギーに変え、電力を供給します。
貯湯ユニットでは、改質、発電の過程で出る熱を回収して温水をつくり、必要に応じて供給します。
エネファームの燃料電池は、ふたつのタイプがあります。
パナソニック製は固体高分子形(PEFC)で、90℃くらいの温度で稼働するため、こまめな運転が可能です。発電効率は、約40%。
一方、アイシン製は固体酸化物形(SOFC)で、発電効率52%と固体高分子形よりも高いのが特徴ですが、700〜1000℃と稼働温度が高く起動に時間がかかるため、24時間連続で運転します。京セラ製のものもSOFCです。
発電の効率だけを見ると、火力発電の場合の40%とほぼ同じですが、熱を有効利用することで、総合効率は80%以上となります。
現行のエネファームは、水素を製造するために都市ガス、LPガスなどの化石燃料を使用しているので、そこでCO2が発生することになります。
現在、各家庭に水素を供給して、水素で直接運転するタイプの純水素燃料電池システムが実証実験の段階まで進み、多くの研究フィールドで運転されています。これが家庭に導入されれば、CO2排出量を大幅に減らすことができます。また、ガスを改質する装置が不要になり、設備が簡素化されるだけでなく、価格も下がるでしょう。
(前掲書p114)
(8)
たとえば、石油精製や苛性ソーダ製造で使われていることはすでに述べましたが、メタノール合成や洗剤などの化学工業材料としても使用されます。
たとえば、清掃工場などの焼却で発生したCO2を回収して、水素と反応させてメタノールにして再利用することもできます。
また、半導体、太陽光パネル、光ファイバー、液晶パネルなどの製造にも欠かせません。現代のテクノロジーになくてはならない化学材料のひとつなのです。コークスの代わりに水素を用いて製鉄するプロセスが開発されていますが、これが実用化されると、将来は製鉄も化学工業に分類されるかもしれません。
(前掲書p121)
(9)
水素の貯蔵にしても、液化水素と水素吸蔵合金では、同じ体積でも後者のほうがたくさん入るのです。つまり、同じ空間を液化水素で満たすよりも、水素吸蔵合金で満たして、そのなかに水素を吸わせたほうが、より多くの水素を貯蔵できる。これは直感で考えると、どうにも不思議な感じがします。
(前掲書p184)
(10)
長崎県の五島列島では、再生可能エネルギーを活用したエネルギーの自給自足を推進していて、洋上風力発電で得られた電力の余剰分を水素に変換しています。変換した水素は、島内で走る燃料電池車に充填したり、MCH(メチルシクロヘキサン)に変換して定期船で隣の島に運んだりしています。隣の島では、MCHから再び水素を取り出し、電力として活用しています。
(前掲書p134)
(11)
燃料電池で電力を発生させると、同時に水も発生します。これは化学的に合成された純度の高い水なので、飲料水としても利用できます。
たとえば、電気も水道も届いていないような場所に、燃料電池を設置して、水素を届ければ、電力も水も供給できるようになります。
実際、こうした計画がいま、カザフスタンで発案されています。
(前掲書p135)
(12)
南米大陸のアルゼンチン南部にパタゴニアという地域があります。ここは年中強風が吹いていて、世界一風が強い地域といわれるところです。なかでもチュブット州、サンタクルス州のあたりは、アンデス山脈から吹き下ろす偏西風が、毎秒十数メートルの強さで途切れることなく吹いています。
この気候は、風力発電には最適です。しかし、この地域の人口は両州合わせてもわずか80万人程度です。大規模な風力発電設備をつくっても、いまのままではその電力を使う人がいません。だから、つくる必要がないわけです。
しかし、水素というエネルギーキャリアがあれば、ここで発電したエネルギーを、別の場所に運んでそこで使うことができます。たとえば日本で使うこともできます。
日本からすれば地球の裏側ですから、送電線を引いてもってくるわけにはいきません。しかし、液化水素にしてタンカーで運べば、それが可能になります。日本だけでなく、ヨーロッパやアジア各国、北アメリカなどへも、液化水素を運んでいけば電力を供給することができます。
(前掲書p137)
(13)
ロボットが接客することで有名な、佐世保のハウステンボスにある「変なホテル」では、「エネルギーの地産地消」を目的として、再生可能エネルギーを水素に変換して貯蔵し、各部屋の電力や給湯に使用しています。
使われているのは東芝のH2ONEというシステムで、昼間の太陽光で電力をつくり、水素にして貯蔵し、夜間に電力として供給することが可能。また、太陽光の発電量が多い夏につくった水素を貯めておいて、冬に電力に変えるなどの使い方もできます。
(前掲書p116)
posted by T.Sasaki at 17:04|
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