日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

日本の漁業が崩壊する本当の理由.jpg

すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2023年06月16日

腸内環境(免疫について 6)

3回目。

またまた「免疫について」シリーズ。

腸内環境とか腸内フローラとか、よく耳にするが、これは、もちろん大事である。
それをサイエンスの世界から説明しているのが、ドクター崎谷である。
形態形成維持と細胞のゴミ処理」の最後に、腸内のインフラマソームが登場しているが、これがアンテナの役割をしている。
食物繊維の過剰摂取はよくない。(※1)
それだけ食べさせようとする健康食品の宣伝は、何とウソの多いことか!
食物繊維も、ほどほどに。

エンドトキシンなどの毒物が、小腸粘膜から血液中へ放出される現象を、リーキーガットという。
毒物が血管を通じて循環するのだから、全身に炎症を促す。
これは、アルコールの摂取などで起きる。(※2)
したがって、酒は、あまり飲まない方がよい。
でも、無理かも(笑)。

抗生物質の投与は、もともと共生している体内のバクテリアを破壊する。
これにより、アレルギー疾患になる。(※3)
私は、小さい頃、体が弱く、病院に行けば、ペニシリンをたくさん打ったと聞いている。
だからなのか、アレルギー性鼻炎に毎年悩まされる。
30歳を過ぎてから、食物アレルギーにもなった。
私的には、薬害の一つに数えられる。
それから年を取ったら、極端な偏食を避け、腸内微生物のバランスを保つようにすること。
ボケたくないし(笑)。(※4)

腸内環境を良くするために、有益なバクテリアを摂取する療法があるそうだ。
プロバイオとか、呼ばれているらしい。
しかしこれは、逆に有害である。
体内で作られるL型乳酸と違って、投与されるD型乳酸は解毒が難しく、余計に体内のエネルギーを消費する。
バクテリアが消化できないセルロースを摂るほうが、ずっといい。(※5)

精神的ストレスも腸内環境を変化させる。(※6)
だから、再び、「怒るな!悩むな!」(笑)。

さらに、慢性的な騒音やWi-Fiや携帯などの電波も、腸内環境が変化させ、リーキーガットも起こすようだ。(※7)
必要とされるスマホの使用は、結局のところ、現代社会の淘汰圧の一つということになる。
電波に強い人間だけが、健康で生き残る、ということか。



(※1)
 私たちの腸で消化できない、あるいは消化が難しい食物繊維をエサとして、腸内のバクテリアは酢酸(acetate)、酪酸(butyric acid)などの短鎖脂肪酸(遊離脂肪酸)を産生します。
(中略)
 この短鎖脂肪酸は、好中球などの食細胞を刺激して活性酸素種(ROS)の放出や食作用を促します。これは食細胞の細胞内のアンテナであるインフラマソーム(inflammasome)に短鎖脂肪酸が処理すべきゴミ(mess)として認識されることになります。この小腸内の食細胞の活性化によって、他のバクテリアなどの微生物の侵入も防がれているのです。
 さらに、短鎖脂肪酸は、小腸粘膜細胞(上皮細胞)の細胞内にもあるインフラマソーム(inflammasome)も刺激します。その結果、小腸粘膜細胞からは持続的にインターロイキン18(IL-18)というサイトカインが放出されます。このサイトカインは腸粘膜細胞間にあるゴブレット細胞から粘液を腸管内に放出させたり、パネス細胞(Paneth cell)から抗菌ペプタイド(AMPs:antimicrobial peptides)を放出させたりして病原性微生物の侵入を防ぎ、腸粘膜のバリア機能をキープしています。
 一方、短鎖脂肪酸は小腸粘膜上皮細胞、食細胞のいずれのインフラマソームにも作用してインターロイキン1-β(IL-1β)を放出させます。このインターロイキン1-β(IL-1β)は持続的に放出されると慢性炎症を引き起こします。しかし、抗ガン剤治療時のように一過性に小腸粘膜にダメージが及ぶような場合には、リンパ球に作用してインターロイキン22(IL-22)が放出されてむしろ組織修復に働きます。インターロイキンのような生理活性物質もコンテキスト(生命場)依存で正反対になるのです。
 インフラマソームやToll様受容体(TLR)は、食細胞のアンテナ(受容体)です。バクテリア、ウイルス、脂肪酸などの刺激を受けて食細胞を活性化します。この活性化が弱いと腸粘膜維持のように組織の健康の場を維持(ホメオスターシス)できません。
 しかし、食細胞が活性化しすぎると、今度はリンパ球まで巻き込んで“病的”状態である「炎症」を引きおこしてしまいます。これが、私が消化の悪い食物繊維の摂取に警告を鳴らしている一つの理由です。消化の悪い食物は、腸内(大腸内)のバクテリアのエサになり過剰に増殖するとともに短鎖脂肪酸やエンドトキシン(内毒素)を過剰に放出し、炎症を加速することになります。
 それ以外にも酪酸などの短鎖脂肪酸(腸上皮細胞)は、腸粘膜の底にある幹細胞(腸粘膜幹細胞)の増殖を抑えます。腸粘膜細胞(腸上皮細胞)は、三〜五日で入れ替わる新陳代謝の激しい細胞です。したがって、過剰に酪酸があると幹細胞の増殖が抑えられて新陳代謝ができなくなります。また過剰な短鎖脂肪酸は、血液内に吸収されてランドル効果による糖のエネルギー代謝(生命の中心システム)の阻害を引き起こします。その結果、体内に余分な脂肪蓄積が起こります。
 つまり、過度の量の短鎖脂肪酸が産生されて、その結果適度に食細胞が活性化している状態がベストということです。
(「慢性病は現代食から」p16)

(※2)
近年、腸のバリアが壊れる(小腸粘膜上皮細胞間の結合に隙間ができる)ことで、重症の感染症や自己免疫疾患を引き起こすことが報告されるようになりました。
 腸のバリアは、小腸粘膜上皮細胞どうしが隙間なく結合することによって、無秩序に小腸粘膜から血管内に物質が移行することを防いでいます。この腸のバリアがあるおかげで、発がん物質や病原性微生物、あるいはそれに由来するゴミ(マンプス MAMPs、エンドトキシンがその代表)が血液の中に入って全身に循環することを最小限に抑えています。
 この腸のバリアが何らかの原因によって壊されることを「リーキーガット(leaky gut)」と呼んでいます。専門用語では「小腸の透過性亢進(increased intestinal permeability)あるいは腸管漏出症候群」といいますが、最近ではサイエンス誌などに掲載される医学論文でも「リーキー(leaky)(「漏れる」という意味)という単語を使っています。
 リーキーガットの原因は、オメガ3などプーファ(多価不飽和脂肪酸)、セロトニン、アルコールなど様々ありますが、バクテリアそのものでも引き起こされます。
(前掲書p21)

(※3)
 これは日本の研究ですが、五歳児において二歳までにペニシリンなどの抗生物質の使用経験のある子どもは喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患に有意にかかり易いことが報告されています。
 米国の最新の大規模調査では、生後六か月までに抗生物質の投与を受けると有意にアレルギー疾患になることが報告されました。この調査では、胃酸を止める薬(H2ブロッカー、プロンポンプ阻害剤)の投与を受けても同じように有意にアレルギー疾患になることも分かっています。
 抗生物質はバクテリアの増殖を止める物質ですから、抗生物質を服用すると体内に共生しているバクテリアも死滅します。そして投与した抗生物質に耐性のあるバクテリアのみが生き残ることになります。
 この状態は、もともと私たちの体内に共生していたバクテリアを壊した結果に他なりません。現代医療では、胃酸を抑えることでも消化管内の微生物バランスを壊すことになることまで意識が及んでいません。
 これはバクテリアの例ですが、私たちと共生している微生物のバランスが崩れると免疫異常(アレルギー疾患)を引き起こすことになるのです。共生微生物が私たちの免疫システムに大きな影響を与えていることを示しています。
 抗生物質で完全に腸内細菌を死滅させると、興味深いことに逆の効果が出ます。過去の研究で、完全に腸内の無菌状態のマウスは、通常のマウスよりも長生きであることが報告されています。
 これは腸内細菌によるエンドトキシン(内毒素)の負荷が低下することが要因になっていると考えられています。なぜなら増殖した腸内細菌から産出されるエンドトキシン(内毒素)は、血管に入って全身に炎症を引き起こすからです。慢性病や老化のほとんどにエンドトキシンが絡んでいます。
 また、腸内無菌状態のマウスでは、通常のマウスよりも各臓器に脂肪蓄積が少なく、体内産生の抗酸化物質も多い健康体であることも分かっています。実際に無菌マウスに通常に育ったマウスの便移植をすると、60%の体脂肪増加、インシュリン抵抗性および高血糖が起こります。
 アルコールによる肝臓障害も、腸内が無菌状態のマウスは、通常のマウスよりも起こりにくいことも報告されています。アルコールはリーキーガットを起こす代表物質です。リーキーガットが起これば、腸内細菌が産出したエンドトキシンは大量に血管内に移行して、肝臓(その他の臓器にも)に炎症を引き起こします。
(前掲書p25)

(※4)
  現実の社会では、腸内を完全に無菌状態にキープすることは無理ですから、腸内微生物の増殖を抑えること、多様性をいかにキープするか(単一のバクテリアを過剰増殖させない)が鍵になります。実際に加齢とともに腸内細菌の多様性が低下すると、認知機能までが低下していきます。
(前掲書p28)

(※5)
 プロバイオ、プレバイオは、最終的に無菌状態が初期設定である小腸に乳酸を産生するバクテリアを増殖させることで全身にダメージを与えます。(小腸は実際に大腸よりもバクテリアの数が少なく、多様性も少ない)。
(中略)
 なんと乳酸菌のプロバイオ(Lactobacillus species and Bifidobacterium)を摂取したグループで高率に判断力、記憶力、集中力の低下や意識混濁が認められたのです。
 これは過剰な乳酸菌が産生する乳酸が血液中に入り、脳に回ったからです。乳酸は生体毒で、特に脳神経細胞にダメージを与えるのです。
(中略)
 乳酸は単なる代謝産物ではなく、様々な生理活性機能を持ち、それが病気の場も作る原因になる物質といえます。その中でも糖のエネルギー代謝を止めることと、細胞内還元状態(細胞内アルカリ性=病気の状態)にすることは、プーファ(多価不飽和脂肪酸)に匹敵するといえるでしょう。
 慢性病の人では乳酸の値が高くなっています。この場合は糖の代謝が上手く行かずに(不完全燃焼して)、乳酸という廃棄物が作られているわけです。
 私たちの体内で産生される乳酸タイプはL型乳酸とよばれています。一方、乳酸菌が産生する乳酸は、これと違ってD型乳酸といいます。問題はここからです。D型乳酸はL型乳酸よりも解毒するのが難しいタイプなのです(L型乳酸の処理でも貴重なエネルギーを消費してしまうデメリットがある)。
(中略)
 過去にもプロバイオによって、特に状態の悪い人には真菌血症、バクテリア血症(バクテリア、カビが血液中に入る)、腸粘膜の虚血症状が起こることが報告されています。
 治療目的で使用されるプロバイオの代表はビフィズス菌、乳酸菌、サーモフィルス菌です。この三菌の十五種類を投与した動物実験においても、腸管感染症(クリプトスポリジウム症)を悪化させる結果に終わっています。
(中略)
 腸内細菌に関して、治療介入するのであれば、腸内細菌を過剰に増殖させないこと。そのためには、プロバイオや食物繊維(プレバイオ)のような消化の悪い食べ物(バクテリアのエサとなる)を避けて、エンドトキシンを減らすセルロースを含む食べ物(バクテリアが分解できない)の摂取を心掛けるようにしましょう。
(前掲書p34)

(※6)
ストレスが加わるとコルチゾール、エストロゲン、アドレナリン、成長ホルモン、エンドルフィン、オキシトシンといったストレスホルモンが私たちの体から産生されます。これらストレスホルモンこそは、腸内微生物の成長や機能に影響を与えて、腸内環境を変化させるのです。
 さらにストレスホルモンは、甲状腺機能を低下させることで消化管の蠕動運動や分泌液(胃酸や消化酵素など)の産生を低下させます。このことによって小腸内にバクテリアが過剰増殖することで、さらに慢性炎症を引き起こすエンドトキシンが血液中に流入するのです。
(前掲書p45)

(※7)
 慢性的な騒音はアルツハイマー病の発生に関与しています。興味深いことに、この慢性の騒音も腸内バクテリアの構成を変化させる(多様性を低下させる)ことが報告されています。この慢性騒音は、腸粘膜および脳血管内皮細胞のバリアを壊してリーキーガットおよび私が命名した「リーキーベッセル(leaky vessel:血管内皮細胞漏出症候群)」という状態を引き起こすことも分かっています。脳血管細胞のバリアが壊れると、脳神経細胞にフリーで鉄などの重金属や毒性物質が入り込みます。
 さらに、Wi-Fiや携帯などのマイクロ波(電磁波)に暴露すると、腸内バクテリアの構成が変化します。大腸菌やリステリアといったバクテリアが速く成長するようになります。これらのバクテリアは抗生物質耐性になっています。
 Wi-Fiや携帯などのマイクロ波は、歯の充填に使用されるアマルガムや口腔内に装着した歯列矯正器から毒性の強い重金属を放出させます(それぞれ、水銀、ニッケル)。これらの重金属は腸内に移行して、腸内細菌に影響を及ぼします。さらに、腸内細菌だけでなく、皮膚のバクテリアの構成も変化させます。
 Wi-Fiや携帯などのマイクロ波は、正式に国際ガン研究機関(IARC)で「ヒトに発ガンの可能性あり(Group 2B)」と認定されていますが、体内のアトピー性皮膚炎などの皮膚の慢性炎症疾患の大きな原因にもなっているのです。
 以上の例からもわかるように、慢性の騒音やWi-Fiや携帯などのマイクロ波(電磁波)は、目に見えないストレス”として、高プーファ食などと同じく確実に生体にストレスとダメージ(慢性炎症)を与える結果、腸内細菌までもが変化するのです。
(前掲書p47)


2023年10月31日改稿
posted by T.Sasaki at 14:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 免疫について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ストレスがたまらないうちに、家に帰る

こんにちは。

日本海には嫌気がさして、太平洋に来た。

途中、秋田向瀬や新礁で針を下げてみたが、たまに姿を見る程度で、性格的にやってられない。
下手くそだし。
しかし、上手い、下手ということを言っていられない、次元の違う大不漁だ。

漁がない時は、休む。
漁がないから、今年は休みがいっぱい!(笑)。

また北上して、小泊沖にたくさん船がいた。
たった3個獲って、どうせ私は邪魔になるだけなのだから、10時頃、津軽海峡に向けた。
その後、いかが付きだして、夕方までには100個超の船が続出したそうだ。

大畑港に初めて入って、獲ったいかを知り合いにあげた。
一昨年までは、K丸という船でいか釣りをやっていたが、年も年だし、ということで、辞めた。
ちょうどいい辞めごろである。
この人は、お兄さんの下で、ずっと乗組員をやっていたが、そのお兄さんが突然亡くなったことから、しかたなく見様見真似で船頭として舵をとった。
昼いかはできなかったから、その分、大きなハンディだった。
でも最後は、ちゃんと自力で船を解体して、身を汚さずに辞めた。
理想的である。
どこかの誰かさんのやったような、詐欺まがいのことに比べると、雲泥の差だ。

夜が明けて、尻屋から八戸前まで調査したが、何個か獲っただけで、帰りの燃料代は丸々赤字だった。
こういうことばっかりやっていると、ストレスだらけになる。
あとは宮古に帰って、船のメンテナンスやいさだの道具の手入れなどをやって、温泉にでも行ってくるかな(笑)。
ストレスは、病気の元。
posted by T.Sasaki at 14:01| Comment(0) | TrackBack(0) | いか釣り漁業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月10日

形態形成維持と細胞のゴミ処理(免疫について 5)

ふたたび、こんにちは。

免疫について」シリーズは、引用文の山である。
かかりつけ医を選ぶ場合や突然病院のお世話になった場合、医師の言うことが信用できるかどうか、の判断材料になると思う。
病気になる、ということは、基本的に、エネルギー代謝異常とゴミ処理異常であることを認識すべきである。

私たちの体の中では、常にゴミが生まれ、それを食細胞が処理している。
これらは、無自覚に自動的に、行われているのである。
その数は、何と!毎秒百万個!
これがうまくいかなくなっても病気になる。(※1)

ゴミの中でも厄介なのが、病的状態で発生するゴミ、すなわち炎症ゴミ(mess)である。
これらのゴミが処理されないで残った場合、それは、外部からの侵入者のエサとなる。
結果として、その侵入者は増殖することになる。
つまり、感染症に罹りやすくなる、ということだ。(※2)
食細胞は、ゴミの種類を判別し、リンパ球の攻撃の有無を決定する。(※3)
ここで、またプーファの登場となるが、プーファはミトコンドリアを傷つけ、電子、そして、ゴミを散乱させる。(※4)
もちろん、食細胞も死を免れない。
好中球にも、自然死と細胞死(壊死)の二つがあり、細胞死から炎症が引き起こされたりする。(※5)

炎症ゴミ(mess)の増加は、病気を作る。
食細胞による食作用が働きすぎると、逆に、炎症ゴミ(mess)が増えて困るから、ここで、T細胞やB細胞が活躍し始める。
つまり、従来の免疫細胞であるリンパ球が、ここからの炎症ゴミ(mess)の処理を担うことになる。
これが、抗体の正体である。
ゴミ処理が追い付かなくなり、体内にゴミが散乱して炎症物質が放出されると、やがて、がん化する。(※6)
したがって、素人考えでも、炎症を起こさないようにする、ということが重要であることがわかってくる。

新型コロナウイルス感染症と呼ばれるものの報道で、よく抗原という言葉出てくるが、抗原の正体というのは、炎症ゴミ(mess)のことだったのだ。
これには、ダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs,ダンプス)と微生物関連分子パターン(MAMPs,マンプス)とあるが、どちらも、炎症、抗炎症の両方に働く。(※7)
炎症ゴミ(mess)は、本当に厄介なものであり、心配になってくるが、大丈夫、腸内のインフラマソームなどが、最終的にそれを解決する。(※8)

ここからは、余談的なメモ。

もうすぐ還暦世代の人へ(笑。私もなのだ!)。
加齢により、炎症ゴミが必然的に生まれてくる。
したがって、炎症ゴミの出現を抑制すること。
それには糖質の有効利用が必要であり、糖のエネルギー代謝を大事にすること。(※9)

それから、単細胞にも頭脳みたいなものがあるらしい。(※10)
単純な人に「単細胞!」と言うのはやめよう!(笑)。



(※1)
 細胞レベルで“ゴミ”と判断されたものは、食作用(phagocytosis:ファゴサイトーシス)を持つ白血球系の細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、好酸球など)によって処理されます。これらの食作用をプロとして行っている細胞以外にも、食作用を持つものに線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、網膜色素細胞や精巣のサトリー細胞(sertoli cells)などがあります。
 食作用とは、文字通り“ゴミ”を食べることを意味します。食べられたゴミは白血球内で消化されて無害化されます。このようにゴミを食べて場を掃除する白血球のことを総称して「食細胞(phagocyte:ファゴサイト)といいます。
 様々なゴミに対して活性化した食細胞(phagocyte)はゴミを飲み込んで細胞内のゴミ処理場(phagolysosome:ファゴライソゾーム)で分解します。
(「新・免疫革命」p80)
私たちの血液中の赤血球の寿命は約百二十日といわれています。機能が低下した赤血球は“ゴミ”として食細胞の食作用によって処理されます。もし食細胞の食作用の働きが低下すれば、ダメージを受けた老化赤血球から鉄が血液中に放出され、鉄の様々な毒性によって多臓器がダメージを受けます。
 環境の変化に対応して生命体の姿を形成・維持していくことを形態形成維持(morphostasis:モーフォステイシス)といいます。形態形成維持は、環境に適応して生命体の姿を発展・維持していく営みです。その形態形成維持の中心が食作用(ゴミ処理)なのです。
 成人の体内の組織では毎秒百万個もの死滅した細胞(アポトーシス、自然細胞死)を処理しています。
(前掲書p81)
私たちは成長の過程で必要なくなった自分の細胞・組織を食作用で処理しています。病原性を持つバクテリアなどを処理するのも、この形態形成維持の食作用を利用しているにすぎないので、免疫というシステムは形態形成維持(morphostasis)の営み全体の一部分が応用された景色を眺めていると考えると理解しやすいでしょう。
 形態形成維持の基本単位は細胞です。私たちは受精卵という一つの細胞から多細胞に分裂して臓器が形成され、今の形になっています。この一つ一つの細胞が自分の状態を含めて周囲の細胞を監視しています。細胞同士はギャップ結合(GJ,gap junction)や細胞接着因子(CAM,cell adhesion molecule)と呼ばれるタンパク質で結合されています。細胞間は、ギャップ結合などを通じて、糖などの物質のみならず、電気信号などの情報のやりとりをしています(synchronization 同期、coherence コヒーレンス)。
 ここで、細胞の集団の中のひとつの細胞に変調が起こったとしましょう。この細胞は自ら、ギャップ結合などの周囲の細胞との結合を外して(undocking)、細胞集団から離れます。そして自決を選びます。こうやっていわば“自殺死”(アポートシス)を選んだ細胞はその細胞成分が破裂して漏れ出ないように、食作用によって細切れにされて食細胞あるいは近隣細胞にキレイに処理されます。
(前掲書p86)
 細胞内の小器官やタンパク質などの高分子も、日々新陳代謝されています。ダメージを受けたタンパク質や異常タンパク質、あるいはダメージを受けたミトコンドリア、ペルオキシソーム(peroxisome)などはゴミ(debris)と判断されて速やかに分解されて再利用されます。
 この細胞内リサイクルシステムを「オートファジー(autophagy:自食作用)」といいます。オートファジーは飢餓などのストレス下でも活性化します。機能の低下した分子をリサイクルして新しい材料として提供するのです。たとえば、異常なたんぱく質をオートファジーによって完全にアミノ酸レベルに分解すれば、そのアミノ酸は新たなタンパク質を作る材料になります。また、細胞内に侵入したバクテリア、ウイルスなどもゴミとして処理するのもオートファジーの働きによります。
 オートファジーの機能がダメージを受けるとβアミロイドなどの異常タンパクが神経細胞内に集積します。これはアルツハイマー病を引き起こします。このように細胞内外のゴミは速やかに処理されて形態形成が維持されています。
(前掲書p88)

(※2)
ゴミは細胞や間質組織の破片です。これらの破片は、侵入してきた微生物から見ればよだれが出るようなタンパク質、糖や脂肪などで構成された栄養素です。したがって、ゴミが生命場に散らかっていると競合関係にある微生物という“敵に塩をあげる”事態になりかねません。
(中略)
糖尿病や免疫抑制状態(オメガ3やステロイド投与、エイズ)などが危険な理由は、生命場(この場合間質)に糖、遊離脂肪酸(糖尿病)、鉄などの栄養素が浮遊していたり、免疫抑制状態(食作用低下)になったりすることによって、エサとなるゴミ(debris)が散乱することで侵入微生物の増殖に願ってもない環境を作るからです。
(前掲書p91)
同じゴミでも日常のエネルギー代謝によって排出されるゴミは「デブリス(deburis)」と表現しますが、炎症によって細胞が破裂したり、間質が分解されたりするような病的状態で産生されるゴミを「メス(mess)」と呼んで区別します。「メス(mess)」は炎症を引き起こすので「炎症ゴミ」と呼んでもよいでしょう。
 この形態形成維持が破綻した状態で放出されるゴミ(mess)は、後述するようにアレルギー疾患、自己免疫疾患、ガンなどを引き起こします。
 感染して機能を失った好中球などもゴミ(mess)として他の食細胞(マクロファージ)の食作用によって処理されます(その逆、機能不全のマクロファージが好中球に処理されることもある)。この機能不全の食細胞ゴミ(mess)処理に失敗するとエイズなどの免疫不全やSLEなどの自己免疫疾患を引き起こすことも報告されています。
 いずれのゴミ(debris & mess)も食作用によって掃除することは侵入微生物の増殖や炎症を防ぐという生命体の形態形成維持で最重要になってきます。
(前掲書p93)

(※3)
 形態形成維持の中心となる食細胞には以下の二つの働きがあります。
1. ゴミ(debris & mess)を見分ける(樹状細胞)⇒細胞内に取り込み(食作用)、リンパ球の免疫記憶・攻撃を助ける(「抗原提示」という)。
2. ゴミを本格的に処理する(食作用)。
 この二つの食細胞の働きを橋渡しをするのが、リンパ球系です。食細胞の樹状細胞は、ダメージを与えるゴミ(mess)を認識して、リンパ節にまで運び、リンパ球を喚起します。そのゴミ(mess)によって活性化されたリンパ球はマクロファージ、好中球などの食作用を活性化します(B細胞から産生されるIgG抗体は食作用を活性化させる)。
(前掲書p127)
 通常の生命場の維持においては、死滅した細胞は速やかに分解され、ゴミとならないように処理されます。その代表的なメカニズムがアポトーシス(apoptosis)です。このときに核酸(遺伝子)、タンパク質、脂質などの死滅細胞の成分は生命場に散乱することはないために、ダメージを与えるゴミ(mess,damaged debris)とは認識されません。そのために、自分の細胞の成分に対して激しい炎症が起きたり、抗体ができたりすることはありません。
 このようにゴミ(debris)の速やかな処理においては炎症は強く抑制されることが分かっています。炎症が起きないのでゴミとなった自分の組織に反応するリンパ球や抗体ができません。これが、現代医学が「免疫寛容(immnune tolerance)」(自分の組織には基本的にリンパ球g攻撃することはない)と呼んでいるものの本質です。免疫学的無視(immunological ignorance)と呼ばれることもあります。
 通常のアポトーシス(自然細胞死、natural cell death)のあとの処理、つまり形態形成維持の食作用では炎症が起きないメカニズムが、最近になって明らかになっています。たとえば、アポトーシス(「イート・ミー〈eat me〉」サインを出している)の細胞は、食細胞に食作用を受けた場合に、抗炎症へと誘導します(アポトーシスで死滅した細胞からインターロイキン‐10〈IL-10〉やTGF-βが産生される)。その他にもキレイに死滅した細胞成分には、リンパ球の攻撃や抗体産生が起こらないように様々なメカニズムが働いています。
 このように免疫寛容とは、「そのゴミによって炎症が起こらないこと」と理解するとよいでしょう。
(中略)
 しかし、病気の場ではどうでしょうか?
 激しい炎症が起きて細胞が壊死して破裂したような場合(破滅的な細胞死、violent cell death)を考えてみましょう。このような細胞死は壊死(ネクローシス、necrosis)と呼んでいます。ネクローシスでは自分の細胞が破裂します。それによって細胞内から漏れ出てきた細胞成分(spillage)は、生命場にダメージを引き起こすゴミ(mess)と認識されます。その例が細胞内にある熱ショックタンパク質90(HSP90)、HMGB1(high-mobility group protein B1)、ATP、インターロイキン(IL-1β)、遺伝子(DNA)、プーファ(その代謝産物のエイコサノイド)などです。これらの細胞の構成成分は自分の細胞構成要素ですから、自然死の場合ではダメージを与えるゴミ(mess)とは認識されないはずです。しかし、炎症の場で漏れ出したために「生命場にとってダメージを与える」と判断されるようになります(“ダメージ物質”とタグ付けされる)。
(前掲書p147)

(※4)
プーファ(多価不飽和脂肪酸)などによってダメージを受けたミトコンドリアを放置しておくと、過剰な活性酸素・窒素種(ROS、RON)が細胞内に放出されます。これによって、細胞内の炎症をオンにするアンテナが活性化し、炎症性物質を生命場にばら撒く結果になります。プーファ(オメガ3&オメガ6)はミトコンドリアの電子伝達系での電子(糖から取り出した)のフローをせき止めてしまいます。
(中略)
細胞内のミトコンドリアが機能不全に陥ると、電子というゴミが細胞内に散乱します。散乱した電子はその細胞を破壊するだけでなく、破壊された細胞から散乱したゴミ(mess)がさらに周囲の生命場に悪影響を与えます。したがって、ミトコンドリアに決定的なダメージを与えるプーファは形態形成維持の面からも最大の慢性病の原因といって過言ではありません。
(前掲書p94)

(※5)
 自然死した好中球をマクロファージが食作用によって処理すると、マクロファージ内でレゾリンヴィン(resolvins)、プロテクティン(protectins)、マレスィン(maresins)などの「イムノレゾルヴヴァント(immunoresolvents)」と呼ばれている局所ホルモン様物質(autacoids,pro-resolving mediator)が産生されます。こららは局所の炎症を止め、組織修復に働くように作用します。
(中略)
 その一方で、好中球が破裂する好中球壊死という状態があります。エンドトキシンやミトコンドリアからの活性酸素種によって活性化された好中球は、核内の染色体や顆粒の網目状の混合物を細胞外に放出することが発見されています。この網は好中球細胞外トラップ(NETs:neutrophil extracellular traps)と呼ばれています。
 好中球細胞外トラップは細胞内で消化(貪食)しにくい細菌、ウイルス、真菌を細胞外で網に捉えます。捉えられた細菌は好中球やマクロファージに貪食されやすくなります(NETsそのものにも殺菌作用がある)。この過程はネクローシスやアポートシスとは異なるタイプの細胞死ということで、好中球細胞死(NET osis)と名付けられています。
(前掲書p164)
 当初、この好中球のバースト(破裂)による好中球細胞外トラップ(NETs)および好中球細胞死(NET osis)はいわゆる自然免疫に働くと考えられてきました(もはや自然・獲得免疫の概念は意味がない)。しかし、この好中球細胞外トラップの成分そのものが後述するダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs)となり、食細胞のパターン認識受容体(PRRs)に認識されて炎症を引き起こすことで自己免疫疾患の原因になっていることが分かりました。
(中略)
 血管に好中球細胞外トラップ成分への炎症が起こると血管炎が起こります(抗好中球細胞質抗体関連血管炎、anti-neutrophil cytoplasnic antibody(ANCA)-associated vasculitis; ANCA-associated vasculitis)。好中球細胞外トラップ(NETs)成分への抗体(ANCAs: anti-neutrophil cytoplasmic antibodies)ができることで診断されます。
 好中球細胞外トラップ成分中にヒストンなどのタンパク質にシトルリン化が起こることで、ゴミ(mess)になります。このシトルリン化したゴミによって炎症が起きるのは関節リウマチです(シトルシン化したタンパク質に自己抗体ができる)。糖尿病でも好中球細胞外トラップによる慢性炎症が認められることが分かっています。
 この好中球細胞外トラップ(NETs)の成分がゴミ(mess)になることで様々な慢性炎症疾患を引き起こすのは、生命場のエネルギー代謝低下(ゴミを処理する食細胞のエネルギー代謝低下)による不完全なゴミ掃除が原因です。
(前掲書p167)

(※6)
 食細胞が活性化されて炎症が激化していくと、白血球系の食細胞の過剰な興奮からリンパ球への刺激へとフェーズ(phase)が移っていきます。そして、リンパ球への過剰な刺激は、食作用を一層活性化させます。
 これ以上食細胞が活性化するとさらに炎症が激化して生命場が乱れることから、リンパ球が過剰に活性化されると食細胞の機能を抑えるように作用します。しかし、炎症の場で食細胞の機能が低下すると今度はゴミ(mess)が散乱する一方になります。それは形態形成維持(morphostasis)では一番困ることでした。
 そこでゴミ掃除(mess clearance)はT細胞やB細胞が担うようになります。B細胞の掃除役が「抗体」と呼ばれているものです。抗体といえば、病原ウイルスやバクテリアなどの病原体(pathogen)とよばれるものに対するミサイル(magic bullet)のようなイメージがありますが、本来の役割はやはり形態形成維持のためのゴミ処理です。ただし、抗体が出現するのは炎症などの「病気の場」です。
(前掲書p159)
 炎症が激化すると細胞(食細胞やリンパ球も含めたすべての細胞)に過剰なストレスがかかりストレス酵素の一つであるホスホライペースA2が活性化します。この酵素は細胞内のリン脂質に含まれるプーファ(多価不飽和脂肪酸)を遊離させます。そして、アラキドン酸などのプーファからイエコサノイド(eicosanoids)を大量に産生します。
 炎症が激化するとこれらの細胞内にあるプーファやエイコサノイドが生命場に散乱・溢れ出します(Eicosanoid Storm,エイコサノイドの嵐)。これが最も危険なゴミ(mess)になります。
(中略)
 このようなゴミ(mess)が散乱していると、食細胞が過剰に活性化して炎症を起こし、その炎症でさらに分解された自己組織に反応するリンパ球(B、T細胞)が活性化されます。その良い例が代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)です。遺伝子(DNA)、タンパク質(ヒストン)、ミトコンドリアの脂質(カルジオリピン)などの自分の細胞成分に頻繁に抗体ができます。
 処理できないゴミ(mess)の蓄積や、最も危険なゴミ(the most dangerous mess)といえるプーファやエイコサノイドが生命場にばら撒かれることが、自己免疫疾患の温床となるメカニズムの一つです。そのベースは生命場に強い炎症が起きてゴミ(mess)が出ることです。
 生命場にばら撒かれたエイコサノイドでもロイコトリエンE4(Cysteinyl leukotriene E4)やプロスタグランディンD2(PGD2)は、ヘルパーT細胞(Th 2)や自然免疫に関わるリンパ系細胞(ILC2s,innate lymphoid 2 cells)を活性化してアレルギー反応に関わります。プロスタグランディンD2は、いわゆる頭頂が禿げる男性型脱毛症の原因物質としても注目されています。毛根への炎症が脱毛の原因になっています。
 また自己免疫疾患でエイコサノイドによって活性化されるヘルパーT細胞(Th 17)は、炎症の場ではガンの形成、増殖、転移を促進します。プロスタグランディンE2(PGE2)はダイレクトにガンの増殖を促すこともよく知られています。
 さらに感染(炎症を引き起こすもの)や炎症の場では、白血球系の食細胞から細胞外小胞(Extracellar vesicles,エキソソーム(exosome)とマイクロ小胞(microvesicle)からなる、EMVsという細胞成分を入れた小胞が放出されます。この小胞の中にエイコサノイト(その他、タンパク質、核酸なども含まれる)があるため、生命場に炎症を促進するエイコサノイドが小胞から生命場にばら撒かれます。
(前掲書p160)
 炎症の激化では食細胞の食作用が抑制され、リンパ球系の働きが活性化していきますので、ゴミ(mess)は貯まっていく一方です。このゴミ(mess)は、上手くバトンタッチされたリンパ球系で処理できないと、自己免疫疾患やガン発生・増殖の温床となります。
 まさにゴミ(mess)の集積によるいつまでも消散しない慢性炎症(unresolved inflammation)によって、形態形成維持に大きな混乱を起こしている過程(process)、それがガンの正体です。
(前掲書p163)
 炎症の場(病気の場)では、通常は自分の細胞の構成成分に対して起こらない過剰な反応(炎症)や抗体の産生が始まるようになります。前者が自己免疫反応(自己免疫疾患、膠原病)、後者が自己抗体(autoantibody)とよばれているものです。
 実際に炎症の場では、食細胞である樹状細胞(DC,dendritic cell)は、これらの細胞成分に“ダメージを及ぼすゴミ(mess)”というタグ付けを強く行うようになります。炎症の場では、樹状細胞は細胞成分が免疫原性(immunogenicity)を高めるように働く、つまりそれらの構成成分に対して強く炎症が起こるように促すということです。
 自己免疫反応疾患が膠原病(コラーゲン病)とよばれるのは、炎症がコラーゲン線維の多い間質に及ぶからです。そして炎症によって分解される間質成分がゴミ(mess)と認識されて、自己の間質が攻撃を受けることになるからです。
(前掲書p168)

(※7)
 ゴミ(mess)と私が命名したものは、一昔前までの免疫学では一様に「抗原(antigen)」と呼ばれていたものです。その抗原という呼び方は、現代の免疫学ではダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs,ダンプス)と微生物関連分子パターン(MAMPs,マンプス)の二つに置き換わろうとしています。
 抗原やマンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)と呼称するよりも、生命場に炎症を引き起こす場合は、ゴミ(mess)と統一するよりクリアーカットになります。なぜなら、マンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)と呼んでいるものも抗炎症(免疫抑制)に働く場合もあるからです。
(前掲書p171)
 微生物関連分子パターン(MAMPs,マンプス)には、エンドトキシン(内毒素)以外にもバクテリア由来の糖脂質、ペプタイドグライカン、ウイルス由来の遺伝子(ssRNA,CpGDNA)、糖タンパク質、カビ菌のべータ・グルカン、原生動物のリン脂質などたくさんの種類が同定されています。
(中略)
 アガリスクやメシマコブは、免疫賦活作用がある健康食品だと謳われています。これらのキノコ類には真菌由来のベータ・グルカンが微生物関連分子パターンとなるために炎症を引き起こす作用を利用しているのです。したがって、原理的にはガンのワクチンと同じで、このマンプス(MAMPs)による炎症によってガンを縮小することを期待しているのです(この作戦が吉とでるか凶と出るかも“生命場”次第です)。
(前掲書p173)
 急性ストレスによって、脳内のネクローシス(壊死)に見られる細胞破裂型の細胞死(神経細胞および脳内の食細胞であるマイクログリア細胞)によってHMGB-1(high mobility group box-1)というダンプス(DAMPs)=ゴミ(mess)が放出され、食細胞の細胞内にあるアンテナ(Inflammasome,インフラマソーム)を介して炎症反応を引き起こすことがすでに報告されています。
 また、精神的ストレスによって交感神経系が過剰に刺激されると、ノルアドレナリン、ニューロペプチドYが生命場に放出されます。これらの物質は食細胞(マクロファージ)に作用して、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK:Mitogen-activated Protein Kinase)のシグナルをオン(炎症、細胞分裂へ)にし、前述したHMGB-1というダンプス(DAMPs)=ゴミ(mess)を放出させます。このゴミ(mess)によってさらに他の食細胞が活性化し、炎症を加速させることで心臓血管疾患が引き起こされます。
 このように精神的という目に見えない“エネルギー”は、体内でゴミ(mess)という“物質”に変換されて生命場の形態形成維持にダメージを引き起こすのです。
(前掲書p181)

(※8)
 マンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)といったゴミ(mess)の信号をキャッチするアンテナとしてToll様受容体(TLR)、スカベンジャー受容体(SRs:Scavenger receptors)をはじめさまざまなパターン認識レセプター(PRRs)があります。
 その中で、いわゆる非感染性炎症(sterile inflammation)に深く関与しているインフラマソーム(Inflammasomes)という構造があります。骨髄性細胞(食細胞)の細胞質内に存在しています。微細粒子(microparticle,シリカ、アスベストなど)、ATP、コレステロール(尿酸)、クリスタル、エンドトキシン、βアミロイド、リポファッシン(lipofuscin、鉄とアルデヒドの結合体)などの様々なマンプス(MAMPs)、ダンプス(DAMPs)やミトコンドリアの活性酸素種(ROS)で直接・間接的に活性化されるとされています。ちなみにワクチンのアジュバントに使用される水酸化アルミニウム(alum)は、食細胞のインフラマソームを活性化して炎症を引き起こします。これらの細胞死は細胞が破裂してゴミが散乱するタイプのものですから、炎症を引き起こします。
(中略)
 このインフラマソームの活性化による炎症は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患などの様々な自己免疫疾患などの様々な自己免疫疾患と関連しています。
 その一方で、腸の粘膜組織ではインフラマソームの活性化は、組織修復などの形態形成維持に必須の働きをしています。この場合は、ダメージを受けて死滅した細胞から放出されたダンプス(DAMPs)=ゴミ(mess)によって、腸粘膜に存在している食細胞のインフラマソームが活性化します。その結果、放出されるサイトカインは組織修復(腸壁バリアーの形成、粘液分泌細胞の維持)、腸内微生物の維持に作用します。
 つまり、ゴミ(debris)に対する食細胞の処理機構(形態形成維持)としてインフラマソームという細胞内アンテナが存在していますが、炎症の場で放出された過剰なゴミ(mess)では、食細胞のインフラマソームに過剰反応が起こることで炎症を加速させる方向へ傾くのです。インフラマソームの活性化もコンテキスト依存ということです。
(前掲書p182)

(※9)
 加齢に伴う慢性炎症を「インフラメイジング(inflammaging=inflammation+aging)」と呼んでいます。その原因は、外来の病原性微生物にあるのではなく、むしろ自分の細胞が出すゴミ(mess)=ダンプス(DAMPs)が、加齢によるエネルギー代謝低下によるゴミ処理能力低下によって蓄積してくるからです。
 加齢にともなる慢性炎症の持続というインフラメイジングは、自分の細胞内の成分に対する制御不能の自己免疫反応といえるでしょう。もちろん、細胞の破裂や細胞内器官のダメージによって、細胞成分があるべき場所にない場合(misplced)に、つまり生命場に散らばった場合に、通常では起こりえない自分の細胞成分がダンプス(DAMPs)になります。
 現在までダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs)と同定されたものはたくさんあります。これらのゴミ(mess)が危険信号となって、マクロファージ、肥満細胞などの白血球系細胞の受容体(アンテナ)に信号を送ります。このアンテナのことをパターン認識受容体(PRRs:pattern-recognition receptors)と呼びます。Toll様受容体(TLR)、インフラマソーム(inflammasome)、週末糖化産物受容体(RAGE,receptor for advanced glycation end products)などのアンテナがあります。このアンテナは骨髄系の白血球だけでなく、リンパ球、線維芽細胞、上皮細胞などにも備わっています。
 危険信号を受け取った白血球(リンパ球)は、様々なサイトカインやキモカイン(chemokine)を放出し、ダメージを受けている部位に他の白血球やリンパ球を集積させます。この場合、サイトカイン量が多いと、ホルモンと同じく全身に作用します。肝臓に作用してCRPというタンパク質(補体を活性化、炎症、血栓促進)を産生し、脳に作用すると発熱・倦怠感・食欲不振・性欲減退などを引き起こします。
 Tリンパ球もこれに加わって細胞障害に働きます。血液中の補体も動員して組織にダメージを与えます。そして最終的なゴミ処理としてBリンパ球が登場します。
 この過程で十分なエネルギーがないと、ゴミ(mess)がうまく処理できずに炎症が継続していきます。最終的には組織破壊が進むと、血管新生・線維化が過剰に起こり、組織の機能が失われます(炎症の終末像パターン)。ホスト(宿主)の状態によっては、この炎症の場合が自己免疫疾患やガンの素地にもなるのです。
(前掲書p175)
 リンパ球のコントロールに重要な働きをしている胸腺やリンパ節および白血球とリンパ球の産生器官である骨髄は、すべて糖のエネルギー代謝依存です。加齢に伴ってエネルギー代謝が低下してくると、これらの器官の委縮(構造と機能の崩壊)が起こることによって免疫系(形態形成維持)が影響を受けます。これが免疫系に加齢現象が認められることの最大の原因です。
 しかし加齢によっても糖のエネルギー代謝が十分であれば百歳を超えても慢性病に罹りにくいように、免疫系の老化によって機能しなくなることはありません。加齢によって免疫系の老化現象(Immunosenescence)というものが必ず見られるものではなく、むしろその個人のエネルギー代謝レベルによって個々の環境に免疫系が変化していく(modified/modulated immune system)と捉えた方がよいでしょう。
(前掲書p186)

(※10)
神経系を持たない単細胞生物や植物には学習や記憶というシステムがないと考えられてきました。しかし、単細胞生物でも「認識・学習・記憶」といった脊椎動物の神経系が担う働きを持っていることが近年明らかにされています。
(前掲書p132)
単細胞生物に苦味のある物質(マラリアの治療薬キニーネなど)を繰り返し与えると“慣れ”が生じて嫌逃行動が減少します。これは、私たちのような多細胞生物に同じ量の薬物を慢性的に投与した場合に、細胞レベルで起こる「ダウンレギュレーション(downregulation)が起こって薬効がなくなってくる現象と同じです。これはある刺激が繰り返し与えられるとやがて感覚が麻痺していくる現象と言い換えると理解しやすいでしょう。
 さらに記憶についても単細胞生物では、空間記憶や配置、形状に対しての記憶があることも分かっています。さらに単細胞生物が産生するホルモンによって自身の細胞膜構造がダイナミックに変化します。この細胞膜構造の変化が固定化したものが多細胞生物の細胞にも見られる受容体(receptor,本編ではイメージしやすいように“アンテナ”と表現している)と呼ばれるものです。
 ホルモンによって構造が変化するのは、エピジェネティックス変化(epigenetics modification)と呼ばれます。エピジェネティックス変化は、遺伝子の配列は変わりませんが、遺伝子の発現が変化することを指します。ホルモンによるエピジェネティック変化は、「ホルモン刷りこみ(hormonal imprinting)と言います。単細胞生物のテトラヒメナでは、このホルモンによる変化が千世代まで続くことが報告されています。単細胞生物も環境因子の記憶を次世代に伝えることができるということです。
(前掲書p133)


2023年10月31日改稿
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肺がんが治った老人

こんにちは。

両津に住んでいるのだと思うが、水揚げの手伝いにやってくる老人がいる。
Mさんという人だが、彼は、肺がんで、片方の肺を手術でとったそうだ。
残ったほうの肺もがんで、そっちは、放射線治療で治ったとか。
ヨレヨレのはずが、ちゃんと船まで乗ってきて、手伝ってくれる。
今年は、手伝ってもらうような箱数がないから、たまに、ブラブラその辺を散歩にやってきたときに話をする。

「私も食道がんなんですよ、きっと」と言うと、「本当かよ?病院へ行ってきたのか?」と聞かれる。
こういう会話のやり取りは、誰からも言われる。
「そのわりに、顔の血色がいいじゃないか」とも言われた。
「手遅れが一番いいんですよ。あまり思い残すこともないもので(笑)」と返答したら、「なんじゃそりゃ。若いくせに」と変な顔された。
若くないのにねえ。

こんな話を聞くと、病気で死ぬのは、よほど運が悪いとしかいいようがない。
肺がんなんて、今まで、ほぼ死ぬのが当たり前だと思っていた。
posted by T.Sasaki at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月09日

炎症の行く末(免疫について 4)

ふたたび、こんにちは。

免疫について」シリーズ第4弾。
炎症について。

炎症には、急性炎症と慢性炎症がある。
まずは、急性炎症から。
急性炎症は、感染、組織の壊死、異物の侵入などで起こり、炎症性物質が放出されて、血管から血液成分が漏れる。
それにより浮腫ができる。
通常なら、いずれ治癒する。
しかし、糖のエネルギー代謝に異常があると、治癒せず慢性炎症へ悪化する。(※1)

慢性炎症は、組織破壊が進行し、線維化が起こる。
そして、血管新生を促し、がん化への道を歩む。
炎症が治る場面では、急性であれ慢性であれ、糖質という栄養素は重要な役割を受け持っている。(※2)

最も線維化を引き起こす物質はセロトニンで、次にエストロゲン。
炎症を起こしたら、この二つは要注意。(※3)

このエストロゲン、アメリカ国立衛生研究所で発がん物質として認めているし、つい最近でも、ハーバード大学で、乳がんの発がんの原因物質、ガン増殖物質である、としている。

https://ameblo.jp/nomadodiet/entry-12806575143.html(「ドクターヒロのリアル・サイエンス」)

乳酸やプーファは、血管新生を促す。
特にプーファは、糖のエネルギー代謝の敵であり、炎症全般に関わる。(※4)

ここで、メタ炎症について紹介する。
「組織形成場の理論」で触れているように、人間の正常なエネルギー源は、糖である。
しかし、糖からエネルギーを取れなくなると、脂肪からエネルギーを得るようになる。
脂肪からエネルギーを得るようになると、つまり、脂肪分解(リポリシス)するようになると、インシュリン抵抗性を示し、メタボリック炎症を起こす。(※5)

インシュリンの作用は、糖を細胞内で利用させることであり、その他、脂肪を合成する。
糖を利用するから、結果として血糖は低下する。
逆に、細胞が糖を利用できなるような状態を、インシュリン抵抗性といい、血糖は低下せず、メタ炎症が起きていく。(※6)
インシュリン抵抗性は、インシュリン・シグナルの流れのどこかがブロックされて起こる。
ブロックする主役は、炎症性サイトカインやプーファである。(※7)

脂肪は、ただのデブの象徴かと思われるが、何と!白血球に非常に似ているという。
マクロファージが活性化している場合、脂肪細胞はレプチンというサイトカインを放出する。
レプチン欠乏では、感染症に罹りやすく、レプチンの増加により、自己免疫疾患が発現しやすくなる。
メタボの人は脂肪細胞が多いのだから、レプチン過剰は必然的に起こり、自己免疫疾患が多くなる。(※8)

エンドトキシンなどの内毒素は、マクロファージのアンテナに作用してメタ炎症を引き起こすが、モルヒネ、アルコール、グルテンなども作用する。
逆に、マクロファージのアンテナをブロックして、炎症をストップさせる物質もある。
クルクミン(ターメリックの成分)、シナマルデヒアド(シナモン)、サルフォラフェイン・イソチアネート(ブロッコリーなどのアブラナ科)、ポリフェノールのカテキン(緑茶成分)など。
しかし、何でもやりすぎれば良い結果が出ることはなく、マクロファージなどが働かなくなれば、腸内のエンドトキシンなどが増加し、炎症を起こし始める。
したがって、これらの成分だけを抽出するサプリメントは、摂取すべきでない。(※9)


脂肪蓄積は、炎症の元だ。
貯めた脂肪を燃焼させようとダイエットする際にも、炎症が起こる。
炎症が慢性化すれば、さまざまな病気になり、最後は、がん化するのである。



(※1)
 急性炎症を引き起こす誘因としては、感染、組織のダメージによる壊死、異物の侵入、過敏性反応などです。急性炎症では好中球、マクロファージや肥満細胞などの白血球系の細胞(貪食作用を持っているので食細胞とも言われる)から様々な炎症性物質が放出されます。最初に起こる変化は、これらの細胞から放出されたエイコサノイド(多価不飽和脂肪酸〈プーファ〉から産生される)を代表とする炎症性物質によって、炎症部位での血管拡張とリーキーベッセル(血管漏出、血管から血液成分が血管外へ漏れる)です。
 リーキーベッセルを引き起こすのは、肥満細胞、好酸球などの脱顆粒で放出されるヒスタミン、プラディカイニン(bradykinin)、エイコサノイド(eicosanoid,
Leukkoireene リーコリトライイーン)といった物質です。リーキーベッセルによって血管内の血液が組織間質に漏れるため、浮腫が起こります。
 血管拡張を起こすのは、これらの物質から誘導される一酸化窒素(NO)です。血管拡張によって局所の血流量が上昇かつ血流速度低下のため、血液が粘稠になります。血小板、肥満細胞などから放出されるセロトニンは血小板を凝集させるために、さらに血栓を作りやすくします。
 急激なストレスが加わったり、ストレスが蓄積したりする状態になると浮腫が出やすくなります。それはストレスホルモン(CRH、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が肥満細胞を活性化して血管拡張、リーキーベッセルを引き起こすからです。
 この急性炎症の過程では、リーキーベッセルが起こるために白血球の血管内から炎症部位への移行が同時進行で起こっています。
 急性炎症の終末では、ダメージを受けた組織の修復が行われます。しかし、糖のエネルギー代謝が回っていないと、組織修復に失敗するか、いわゆる慢性炎症状態に移行します。この場合の炎症の終末像は、線維化(組織の機能喪失)あるいはガン化になります。
(「新・免疫革命」p61)

(※2)
 慢性炎症の特徴は三つあります。それは組織破壊、線維化、血管新生です。組織に炎症が継続すると、次第に組織が破壊されます。破壊された部位を補うものは本来であれば、幹細胞です。糖のエネルギー代謝が回っている「場」であれば、幹細胞が破壊された組織に補充されて、組織の再構築を行います(これが治癒)。しかし、糖のエネルギー代謝が回っていない場では、破壊された組織に線維化が起こります。
(前掲書p64)
 炎症で破壊された組織の修復に失敗すると線維化(fibrosis ファイブロースィス)で組織をカバーします。したがって、線維化では細胞・組織の機能が失われます。
(前掲書p66)
 炎症やガンの場では低酸素に対応するために必ず新しい血管が作り出されます。これを血管新生(angiogenesis)といいます。
(前掲書p71)
新生血管は脆くてリーキーな状態になっているため、そこから組織に炎症細胞が移行しやすくなっています。
(前掲書p73)

(※3)
 セロトニンは線維化の他にも積極的に炎症に関わっています。肥満細胞、好酸球を炎症の場に誘導します。また、マクロファージ、単核球、樹状細胞に作用して、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、IL12p40、TNF-β)を誘導します。
(前掲書p68)
 エストロゲンは、マクロファージなどの白血球(従来の自然免疫系)には炎症作用を及ぼします。炎症の場ではセロトニン、エストロゲンは白血球、リンパ球に作用し、炎症性物質を放出させます。つまり、炎症を加速させる方に働きます。
 しかし、エストロゲンさえも臓器、場によって抗炎症にも作用します。ホルモンが炎症に及ぼす作用もコンテキスト依存(場による)と言えるのです。
(前掲書p69)
 エストロゲンは炎症全般に関わるため、様々な病態の原因となります。特にエストロゲンが高値の場合は、ヘルパーT細胞がTh2に誘導されて、肥満細胞や好酸球の脱顆粒(ヒスタミン、エイコサノイド、セロトニンの放出)が起こります。そのため、初潮が早くて長期間エストロゲンに暴露されている場合や、生理前後のようにエストロゲン濃度が高くなる場合には、アレルギー疾患の代表である喘息がおきやすくなります。
 大豆のアイソフラボン、ビスフェノールA、フタレートなどの暴露も同じくアレルギー疾患を引き起こすことが分かっています。
(前掲書p70)

(※4)
 糖の不完全燃焼(発酵)では乳酸が産生されます。乳酸は、血管新生を誘導する二つの転写因子(低酸素因子およびNF-κB)を活性化します。
 オメガ3系のリノレイン酸、魚油(EPA)、DHA、オメガ6系のアラキドン酸などからできる過酸化脂質(HOHA)は、タンパク質と結合してCEP(ω-〈2-carboxyethyl〉pyrrole)という変性タンパク質(後述するゴミ〈mess〉にあたる)を形成します。CEPという変性タンパク質はToll様受容体(TLR)に結合して血管新生を促します。とくに脂質にDHAが含まれる場合は、CEPができやすいことが分かっています。
 プーファを細胞内や血液中に遊離させるホスホライペースA2(PLA2s:Phospholipases A2)という酵素(細胞のリポリシス)は、直接マクロファージに作用して(受容体結合)、血管新生およびリンパ管新生(lymphangiogenesis)を促進します。
(前掲書p75)

(※5)
 1960年代にランドル効果(糖‐脂肪サイクル)が発見されてから、メタボリック・シンドロームと炎症の関係が継続的に研究されてきました。ランドル効果とは糖がエネルギーとして使用されると脂肪はエネルギー源としては使用されず、脂肪がエネルギー源として使用されると、今度は糖がエネルギー源として使用されないという現象です。
 研究の結論を先に言うと、高脂肪食によって「リポリシス(脂肪分解)‐インシュリン抵抗性‐炎症」が相互依存して経時的におこりうることがわかってきました。もっと簡単に言うと、現代食のような高脂肪食は、それ自体で体内に慢性炎症を引き起こすということです。この食事によって起こる慢性炎症を「メタ炎症」(metaflammarion:metabolic inflammation)と呼んでいるのです。
 特に西側の先進国や東南アジアの現代食は高プーファ食(高脂肪食)になっているため、食事によって炎症とインシュリン抵抗性(高血糖、リポリシス)が同時に平行して起こります。つまり、現代食によって全身の組織に炎症とインシュリン抵抗性(高血糖、リポリシス)が引き起こされています。ちなみにインシュリン抵抗性という現象は、U型糖尿病と現代医学が呼んでいるものです。
 狭義には、脂肪組織における慢性・低レベルの炎症を「メタボリック炎症(metabolic inflammation = metaflammation)(メタ炎症)と呼んでいます。これは、脂肪組織のインシュリン抵抗性がリポリシスを引き起こすことが、全身のインシュリン抵抗性をもたらす開始サインになるからです。脂肪組織のリポリシスによって、インシュリンの作用する肝臓、筋肉、血管内皮細胞、消化管の細胞あるいは膵臓、脳(神経組織)などの全身の組織もメタ炎症を引き起こします。
 したがって、「メタ炎症」は高脂肪食(高プーファ食)による脂肪組織のリポリシス(脂肪組織が分解されて血液中に脂肪が放出される)によって、脳を含めた全身に慢性炎症を引き起こす病態を総称しているのです。全身の慢性病だけでなく、サルコペニアとよばれる筋肉減少症などの老化現象の直接の原因ともなるのです。
(「慢性病は現代食から」p60)

(※6)
インシュリンは膵臓のβ細胞から分泌されますが、作用する代表的な組織は脂肪組織、肝臓、筋肉、血管内皮細胞などです。
 インシュリンの基本的な作用は、糖の細胞内利用(血糖低下)と脂肪合成です。「インシュリン抵抗性」=「インシュリンに対する細胞の反応性の低下」、つまり、細胞のアンテナのインシュリンへの反応が低下した状態を指します。
 インシュリン抵抗性では細胞内に糖が入ってこないために、脂肪やタンパク質をエネルギーの燃料にせざるを得ません。脂肪(特にプーファ)をエネルギーの燃料にすると、電子伝達系から活性酸素種・窒素種(ROS,RNS)が過剰に発生することから炎症がオンになります。
 重要なのは、インシュリン抵抗性では脂肪組織においてリポリシスが起こること。そして筋肉・肝臓・心臓などに脂肪が過剰に蓄積することです。これはいずれも炎症をオンにしていきます。最近、アルコールを飲まない人に、肝臓に過剰に脂肪が蓄積する脂肪肝が増えています。これを非アルコール性脂肪肝といいますが、この状態では肝炎を起こし(非アルコール性脂肪肝炎:NASH/NAFLD)、やがて肝硬変・肝細胞癌に発展していきます。
 インシュリン抵抗性になるとリポリシスが起こり、全身に炎症が引き起こされるのは必然ということです。糖尿病が“万病の元”というのもこれで納得できるはずです。
 逆にリポリシスを止めるとインシュリン感受性が高まり、糖のエネルギー代謝が改善することも報告されています。リポリシスが止まれば、血液中の遊離脂肪酸がなくなるため、ランドル効果によって糖の細胞内利用が高まるので、これは当然の結果といえます。
(前掲書p69)

(※7)
インシュリン抵抗性で最もよく研究されているのは、インシュリンのシグナルのブロックです。
 インシュリンのシグナルは、
インシュリン+インシュリン受容体⇒インシュリン受容体のタイロシン残基リン酸化⇒インシュリン受容体基質のリン酸化⇒p85との結合⇒Aktのリン酸化⇒グルコース運搬体(GLUT4)活性化&グリコーゲン合成酵素の活性化
 という流れになっています。
 インシュリンは最終的に糖の運搬体を細胞表面に移動させて、糖を細胞内に取り込み、細胞内で糖をエネルギーの燃料として、あるいは貯蔵体として利用する役割をしています。このシグナルの流れのどこかに支障を来すと細胞内に糖を取り込めないようになります。これが「インシュリン抵抗性」です。
 インシュリン・シグナルの中でも、最もダメージを受けやすい部分が糖運搬体(GLUT4)とインシュリン受容体基質(IRS)です。この部位は、リポリシスや高脂肪食などによる過剰な細胞内脂肪蓄積、炎症(炎症性サイトカイン)、小胞体ストレス(プーファ)によってダメージを受ける結果、インシュリンのシグナルがストップします。つまり、インシュリン抵抗性になります。
 糖の細胞内運搬役であるアンテナ(GLUT4)は、プーファ(正確にはプーファから産出されるアルデヒド)によってブロックされます。インシュリンのシグナルのどこかにダメージを受けると、インシュリン抵抗性を引き起こします。そうすると、糖が細胞内で利用できなくなり、脂肪のエネルギー代謝(シックネス・メタボリズム)に変わります。また、インシュリンのシグナルが高脂肪食やリポリシスによってブロックされることによっても糖が細胞内に入れなくなります。
(前掲書p71)

(※8)
脂肪細胞はもともと、マクロファージなどの白血球と同じ作用をもっています。たとえば、いずれもエンドトキシン(内毒素)によって活性化されます。その結果、いずれの細胞も同じ炎症性サイトカインを放出することによってインシュリン抵抗性(インシュリンが細胞に作用しにくい=U型糖尿病の特徴)を作ります。
 この二つは類似しているということだけでも驚きですが、さらに驚くべき事実があります。それは、脂肪前駆細胞(脂肪細胞へ分化する手前の細胞)は、マクロファージへと変化することが可能なのです。
 この事実は、免疫系が活性化されるもの(エンドトキシンなど)は同時に脂肪細胞も活性化し、脂肪組織が活性化されるもの(高脂肪食)は同時に免疫系を活性化するということを意味しています。
(前掲書p64)
 感染症などでマクロファージが活性化している場合は、同時に脂肪細胞も活性化してレプチン(leptin)というサイトカインを放出します。発熱があるときに食事を摂りたくないのは、このレプチンの食欲低下作用によります。感染症で炎症が起きているときは、食事(高脂肪食)によって起こる炎症によってさらに炎症が加速して生命場にゴミが蓄積することを防いでいるのかもしれません。
(前掲書p66)
 レプチンというサイトカインは、脂肪組織から産生されました。ということは、脂肪細胞が多いほど、レプチンの産生量が多くなる潜在能力があるということです。肥満の人は実際にレプチンの血液濃度が高いことが分かっています。
 このレプチンは白血球およびリンパ球の成熟に必要な物質でもあります。レプチン欠乏では、免疫不全となって感染症を引き起こします。特にレプチンはリンパ球のT細胞(細胞障害性T細胞:Teff)を活性化して、過剰な自己免疫反応を引き起こすことで、甲状腺炎や関節炎を引き起こすことが分かっています。
 その一方で、肥満では脂肪組織での過剰な反応を抑制する制御性T細胞(Treg)の数が劇的に低下します。脂肪細胞が増えるごとに制御性T細胞が減るのです。
 したがって、肥満になると攻撃型T細胞(Teff)を刺激するレプチンが増加する一方で、過剰な炎症を止めるブレーキ型T細胞(Treg)が減少するので、このような自己免疫疾患になりやすくなるのです。
(前掲書p67)

(※9)
 エンドトキシンやリポテイコ酸などはマクロファージなどの細胞のアンテナ(Toll様受容体:TLRs)に作用してインシュリン抵抗性や慢性炎症を引き起こします。その他にも同じアンテナ(TLRs)を刺激する物質がたくさん同定されています。グルクロン酸(天然ガム)はその代表です。
 ガンの痛みに使用されるモルヒネも同じアンテナを刺激しますので、慢性投与によってメタ炎症が引き起こされます。お酒(エタノール)の代謝産物(エチルグルキュロナイド etylgrucuronide)も同じアンテナを刺激します。慢性アルコール中毒もメタ炎症を引き起こすということです。
 その他、リーキーガットの原因となる小麦のグルテンに含まれるグライァディン(gliadin)も同じアンテナを刺激しますから、小麦の過剰摂取は要注意です。
 その一方で、高脂肪食とは反対の作用をもつ物質も見つかっています。ファイトケミカルあるいは抗酸化物質ともよばれる成分は、このアンテナ(TLRs)をブロックします。クルクミン(ターメリックの成分)、ヘレナリン(北米および北ヨーロッパに分布するキク科のアーニカ)、シナマルデヒアド(シナモン)、サルフォラフェイン・イソチアネート(ブロッコリーなどのアブラナ科)、ポリフェノールのカテキン(緑茶成分)、パーテノライド(夏白菊)などです。
 これらの物質は免疫細胞のアンテナ(TLRs)をブロックしますので、メタ炎症を抑えるには有効です。しかし、これらの物質を抽出したものを投与すると、免疫抑制に傾きますので、ゴミが生命場に溜まることになります。
 実際に免疫細胞のアンテナ(TLRs)などそ遺伝子操作して欠損させた無菌マウスでは、エンドトキシンを増加させるようなバクテリアが腸内で増殖し、最終的にインシュリン抵抗性、肥満などのメタボリック・シンドロームへと発展します。
 つまり、免疫細胞のアンテナを高脂肪食で刺激しすぎても、ファイトケミカルでブロックしすぎても、同じ全身の炎症を引き起こすということです。まさに「陰陽(yin-yang)の関係です。しがたって、形態形成維持の面からもポリフェノールなどのファイトケミカルは抽出して摂取するものではありません。
(前掲書p85)


2023年10月31日改稿
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まぐろはえ縄の期限付き限定許可

こんにちは。

あまりに漁がないので、D親分のところへ、まぐろはえ縄の見学に行ってきた。
写真や活〆や神経〆の動画をいろいろと撮ってきたが、カメラマンは下手くそで、公開できる代物ではない。
それでも、経験として役に立った。

今でこそ、佐渡のまぐろ、と言ったらD親分なのであるが、最初の頃は、来る日も来る日も獲れなくて、ようやく大物が1匹来たと思って、電気ショッカーを投入した時、外れていってガクッと来た、という想い出を、彼は語ってくれた。
D親分のところの随一の乗組員M君には、非常に迷惑を掛けてきたが、彼は優しい人柄なので、私に何にも言わなかった。
邪魔ばかりしてきたように思う。

それにもかかわらず、帰港してからは、みなと荘というところで反省会をやってもらい、非常に楽しかった。
D親分の人柄もあって、次から次へと客が飛び入り、いろいろな話を聞かされた。
しかし、最近の私は、アルコールを少し余計に飲むと、記憶に自信がない。
ほとんど忘れた(笑。昼から夕方まで飲んだだけだが)。
徳島から来ている乗組員が、アホになったのだけ覚えている(笑)。
D親分の取り計らいで、みなと荘にそのまま泊めてもらった。

翌朝、両津まで帰路で、車を運転しながら、いろいろと考えた。
するめいかの超大不漁だからこそ、経験できたことだ。
もし、30個でも50個でも獲れる確信があるのなら、遊んで歩かない。

D親分は、いか釣もやるし、まぐろ釣りもやる。
夜に獲ったするめいかを餌とし、夜明け前に、まぐろ縄の投縄をする。
特に近年、まぐろ資源の増大が顕著で、いか釣り漁業の困難さは年々増している。
D親分の場合、いか釣がダメな場合、すぐにまぐろ縄に切り替える。
この戦略は正しい。

まぐろだけ突出した資源回復は、何をもたらすか?
他魚種の減少である。
まぐろは、たくさんの餌を食べる。
まぐろ養殖では、1kg太らせるのに、13kgから14kg必要だ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24138410R01C17A2X11000/(「日本経済新聞」)

自然界のまぐろ資源が、どれくらいあるのか実数でわからないが、まぐろに食べられる魚の数量は、年間まぐろ資源増大量から、年間漁獲量を引いて、これに13kgを掛け算すれば、計算できる。
特に、いか類、いわし類、さば類への圧力が大きいと思われる。
これらの魚種は、一応、TACと言って、年間漁獲数量を割り当てているが、異常に多くなったまぐろの捕食分を勘案して割り当てないと、他魚種の資源回復は、まず、見込めない。
バランスよく魚類資源の増大を目指さないと、このようになってしまうのである。
国際条約ばかりを気にし、国内生産者の意見を聞かない水産庁は、無能である。

このまま同じことをやっていては、目も当てられない。
そこで、だ。
まぐろが増えすぎて、特に困っているいか釣漁業に対して、優先して、まぐろ釣りの許可を与え、TACも配分する。
ただし、まぐろ資源のバランスのとれた減少、および、するめいか資源の復活がなされた場合までの限定許可とする。
現在のところ、まぐろTAC以外は機能していないが、この辺の数値目標は、水産庁の得意のするところだろう。(笑)

という結論に達したところで、ドライブは終わった。



先ほど、D親分のところへ徳島から来た若者の話を書いたが、D親分は、たくさんの若者に漁業体験をさせて、一生懸命若者を育てている。
が、非常に難しいという。
言葉は悪いが、アホばっかりなのだそうだ。
教えてもすぐに忘れるし、言うことと成すことが違う。
元海上自衛官を乗船させた時など、日本の自衛隊を心配したほどだ。
一説には、「自衛官募集」で応募する人は、アホが相当数いるらしい(相当数と控えめに書いておく)。

その中で、前述M君は、逆に素晴らしい乗組員である。
体格は、私と同様に貧弱に見えるが、何でもやる。
ところが、悲惨なことに、今度の毒ワクチンで、1年くらい体がおかしくなって、D親分のところから去った。
運よく回復し、現在に至る。

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2023年06月05日

免疫と抗体(免疫について 3)

3回目。

免疫について」で紹介したリンク先を再び、どうぞ。

https://medipalette.lotte.co.jp/bodycondition/3141(「Medi Palette」)

ごらんのとおり、自然免疫と獲得免疫と分けて書いてあるが、自然免疫にも免疫記憶があり、獲得免疫が働く部分でも、自然免疫が重要な役割を担っている。
そのため、自然免疫と獲得免疫を区別することに意味はない。(※1)

外部から攻撃や毒物で炎症が起こると、T細胞が反応し、サイトカインという抗炎症物質が産出される。
しかし、このサイトカインは、抗炎症だけでなく、炎症促進になる。(※2)
よく聞くサイトカインストームは、炎症促進の嵐ということである。
また、場”、すなわち、その人の健康状態により(コンテキスト依存とも言う)、炎症にも抗炎症にも働く物質はサイトカインだけではない。(※3)
サイトカインを誘導させるための薬剤の処方は、医師によって行われる。
どう判断するかによって、患者の命運が決まることになる。
良い医者とヤブ医者の違いがここに表れるのである。

抗体の中でも、古いB細胞(B-1a細胞)から出される自然自己抗体は万能だ。
これは、ワクチンをしなくても、もともと人の体にある抗体である。
新しいB細胞(follicular B-2 cell)の抗体も確かに重要ではあるが、現在、非常に多くなっている自己免疫疾患を止めるには、古いB細胞(B-1a細胞)から作られる自然自己抗体が欠かせない。(※4)
したがって、ワクチン由来の抗体よりも、自然自己抗体を大事にするようが、ずっと健康を維持できるだろう。

T細胞の分化や成熟やB細胞の抗体産生に不可欠なホルモンは、胸腺で作られる。
胸腺という組織について、私はぜんぜん知らなかった。
しかし、感染症などの外部からの攻撃に対して、非常に重要なものである。
これを委縮させると、病気やがんになる。
人間は、加齢とともに胸腺は委縮する。(※5)

しかしその前に、ストレスを溜めると、胸腺が委縮する。(※6)
怒るな!悩むな!(笑)

胸腺ホルモンを作る甲状腺ホルモンは、糖のエネルギー代謝も司る。
甲状腺ホルモンは、コルチゾールなどのストレスホルモンの影響も弱めてくれるホルモンでもある。(※7)
したがって、胸腺‐甲状腺ラインを弱体化させることは、生命維持に重大な影響を与えることになる。

(※1)
 獲得免疫の“獲得”とは、「一回目の病原体の侵入で病原体を記憶し、その病原体に特異的に反応する」ということです。獲得免疫は、記憶(memory)と特異性(specificity)を持つことが自然免疫と区別される拠り所です。
 しかし、自然免疫を司る白血球(顆粒球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞)にも記憶があり、二回目の病原体の侵入には速やかに対処していることが明らかになっています。
しかも自然免疫を司る白血球(マクロファージ、好中球)には、次項で詳述するように、パターン認識受容体(PRRs:pattern recognition receptors)があり、病原体関連分子パターン(PAMPs:pathogen-associated molecular patterns
)やダメージ(傷害)関連分子パターン(DAMPs:damage-associated molecular patterns)という、従来“抗原”と呼んでいたシグナルに特異的に反応することがわかっています。
 これは特別に自然免疫記憶(innate immune memory)、あるいはトレーニングされた免疫(trained immunety)と呼ばれています。自然免疫でも獲得免疫の特徴である記憶(memory)と特異性(specificity)を兼ね備えているのです。つまり、免疫システムに自然(innate)と獲得(acquired)に分類すること自体が、定義上も意味がないばかりでなく、サイエンスとして不適切なのです。
 自然免疫では、マクロファージ、好中球などの骨髄系の白血球が主役として働くとされています。しかし、近年になってむしろリンパ球が主役とされていた獲得免疫でのキープレイヤーがマクロファージ、好中球などの白血球であることが分かってきました。
 獲得免疫で働くリンパ球(B、T細胞)は、好中球やマクロファージによる長期の抗原提示(antigen presentation)やサイトカインによる活性化が必要です。つまり、リンパ球が働くのもマクロファージや好中球の様々なアシストがあって初めて可能になるということです。
(「新・免疫革命」p38)

(※2)
ヘルパーT細胞から放出される様々なサイトカインという物質も、“場”によって炎症・抗炎症のいずれにも作用します。サイトカインは炎症に関わる細胞の分泌する物質というイメージが強いですが、元々は胎生早期の器官形成に必須の物質です。
 ある細胞には増殖のトリガー(引き金)となって作用し、違う細胞には成長抑制に作用します。たとえば、TGFβ(transforming growth factor-β)というサイトカインがあります。このサイトカインは、制御性T細胞を誘導するため、従来は炎症を抑制する働きが主体と考えられていました。しかし、IL-6の存在下では、ヘルパーT細胞を炎症性サイトカイン(IL-17)を産生するように誘導(上皮細胞で炎症を起こす)します。つまり、TGFβというサイトカインも“場”によって炎症・抗炎症のいずれにも作用するということです。
 IFNγ(リンパ球)、TNF(どの細胞でも分泌)などのサイトカインも細胞の置かれた“場”によって炎症・抗炎症のいずれにも作用します。
(前掲書p48)

(※3)
 オメガ6系プーファのアラキドン酸に代表される多価不飽和脂肪酸(PUFA:プーファ)から誘導される生理活性化物質をエイコサノイド(eicosanoids)といいいます。
 エンドトキシン(内毒素)、IL-1β、TNF-αなどの炎症シグナルによって、COX-2(cyclooxygenase 2 : コックス・ツー)という酵素が誘導されます。COX-2は、アラキドン酸(オメガ6系プーファ)からプロスタグランジンE2(PGE2)というエイコサノイドを誘導します。当初PGE2は、炎症の初期には局所の血管拡張作用、好中球、マクロファージ、肥満細胞などを活性化するため、炎症や細胞増殖(ガン形成)を促進する物質として考えられていました。しかし、炎症が持続すると逆に抗炎症作用が強くなります。
 炎症性エイコサノイドのロイコトリエンから誘導されるリポキシン(lipoxin)というエイコサノイドは、
  ・エストロゲン受容体をブロック
  ・食作用・アポートシスを促進
  ・線維化を止める
  ・PPARγ(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma)の活性化
などを通じて抗炎症に作用します。エイコサノイドも“場”によって、炎症・抗炎症のいずれにも作用します。
(前掲書p50)

(※4)
ワクチンをしていない人や魚などの他の脊椎動物の血液中には、自己抗体が普通に認められます。このような正常時にも認められる自己抗体は、「自然自己抗体(natural auto antibodies,NAAbs)」と呼ばれています。
 この自然自己抗体を作るB細胞(B-1a細胞と表記されている)は、進化の中でも食細胞に近い最も古いリンパ球です。このリンパ球はマクロファージなどの食細胞と同じく、食作用さえ持っています。みなさんのご存じのワクチンなどで免疫記憶するB細胞は比較的新しいリンパ球です。この古いB細胞(B-1a細胞)は免疫記憶の機能がないため、特定のゴミに反応(特異的に反応)することはありません。しかし、古いB細胞(B-1a細胞)から産生された自然自己抗体は、自己の組織、変性した組織そして外来の微生物などを見分けることができます。古いB細胞(B-1a細胞)は、胎児・新生児期に主に産生されますが、生涯を通じて骨髄から補充されています。
 一方の免疫記憶を持って特異的抗体を作るB細胞(follicular B-2 cell)は、加齢につれて発達し、自己組織以外のゴミに抗体を作ります。
 さて、古いB細胞(B-1a細胞)が自然自己抗体(Naabs)を作るのであれば、この抗体が自分の組織を攻撃していわゆる自己免疫疾患になることが危惧されます。しかし、「事実は小説より奇なり」です。この自然自己抗体(NAAbs)は、その逆の作用をするのです。
 自然自己抗体の働きについて現在までに分かっていることを列挙しましょう。
  ・バクテリア、ウイルスなどの病原性微生物に対する最初の防御作用(first line defense)
  ・自然死(アポトーシス)した細胞、死滅したガン細胞あるいは老化細胞などの掃除
  ・炎症による組織ダメージを最小限にする
  ・共生微生物の維持とコントロール
  ・自己免疫疾患を予防する
 このように自然自己抗体(NAAbs)は、自分の細胞、変性した自分の細胞あるいは外来のゴミ(ウイルス、バクテリア)も認識することができます。自然自己抗体が少ないほど自己免疫疾患の代表である全身性エリテマトーデス(SLE)の重症度が高くなります。自然自己抗体がないとSLEの症状が加速するのです。SLEだけでなく、自然自己抗体の欠損によって動脈硬化(これもプーファが引き起こす自己免疫疾患)も引き起こされます。
(前掲書p53)

(※5)
 胸腺という組織は約五億年前に軟骨魚類とともに誕生しています。これ以降はじめてリンパ球が登場します。胸骨の裏側でちょうど心臓の前方部に位置しています。チャクラ(エネルギーフローの大動脈)ではちょうど4番目にあたる部位にあります。ハーブのタイム(thyme)の葉の形に似ていることからthymus(胸腺)と呼ばれるようになりました。
 胸腺は脊椎動物にとって非常に重要な組織です。なぜなら、免疫および内分泌(神経伝達物質およびホルモン産生)の二つの顔をもつ唯一の器官だからです。
 内分泌では、胸腺が産生するホルモンおよび神経伝達物質はコルチゾール(グルココルチコイド)、ソマトスタチン、サブスタンスP、ニューロペプタイドY、成長ホルモン、オキシトシン、バゾプレッシン、カルシトニン、メラトニン、インシュリンなど広範囲に及びます。これらの胸腺から産生されるホルモンはT細胞によって全身の組織へ運ばれるのですから(packed transport)、まさに胸腺は立派な内分泌器官です。
 さらに胸腺はT細胞に作用するホルモン(胸腺ホルモン、thymic hormones)も産生します。サイマリン(thymulin)、サイモシン(thymosin)、サイモポエティン(thymopoietin)、胸腺液性因子(THF,thymic humoral factor)などが同定されています。これらは、T細胞の分化や成熟およびB細胞の抗体産生に不可欠のホルモンです。
 これらの胸腺ホルモンは、リンパ球に作用するだけではありません。視床下部、脳下垂体に作用してホルモンの分泌に影響を与えます。実際に胸腺を切除すると脳下垂体の前葉が委縮します。特に性腺ホルモンといわれる黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH,luteinizing horumone-releasing hormone)、黄体形成ホルモン(LH)は胸腺ホルモンがないと分泌が促進されないので、視床下部―脳下垂体―性腺系の働きは胸腺に依存しているといってよいでしょう。
胸腺が加齢によって委縮することないサメでは、ガンは人間のように加齢によって劇的に増えることはありませんし、ガンで死亡するこはほとんどありません。人間が加齢によってガンをはじめ様々な病気に罹りやすいのは、決して遺伝子変異が蓄積することが原因ではなく、加齢によって胸腺が委縮(あるいは機能低下)するからです。
(前掲書p135)
 胸腺との相互作用で最重要の組織が三つあります。前述した視床下部―脳下垂体の神経組織に加えて甲状腺と松果体です。
 甲状腺ホルモンは胸腺ホルモンの産生を促進します。また甲状腺機能低下では胸腺が委縮します。
 ラットの実験では新生児に松果体を切除すると胸腺が委縮し、体重減少、成長障害などの衰弱症候群(wasting syndrome)を起こすことが知られています。成人ラットでも松果体を切除すると胸腺は委縮しますが、松果体から分泌されるメラトニンというホルモンを補充すると胸腺は回復します。松果体のペプタイドホルモン(Epithalamin,epitalon)は、胸腺の委縮から守る作用があります。
 胸腺―甲状腺―視床下部・脳下垂体―松果体はこのように密接に関連し合っています。そして、第4チャクラ〜第7チャクラに相当する器官であることと一致してるのは大変興味深い事実です。この第4チャクラ〜第7チャクラのエネルギーフローが停滞すると形態形成維持に悪影響が出てきます。
(前掲書p139)

(※6)
 すでに1941年にストレス学説のハンス・セリエによって、コルチゾール(いわゆるステロイドホルモン)の投与で即座に胸腺が委縮することが報告されています。これは宇宙飛行士が地上に戻ってくると胸腺が著明に委縮していることが分かっています。これは宇宙ステーション滞在におけるストレスによってコルチゾールが大量に分泌されることが原因です。
急性ストレスでの胸腺の委縮は回復可能ですが、問題なのは慢性的なストレスによる胸腺の慢性萎縮です。
 慢性ストレスの特徴はコルチゾール(糖質コルチコイド)というストレスホルモンの上昇です。実際に、コルチゾールの長期投与によって胸腺組織が死滅していきます。
 低栄養も直接的な胸腺の委縮をもたらしますが、コルチゾールの上昇(ファスティングや極端な糖質制限)によって間接的にも胸腺の委縮をもたらします。実際にアフリカのウガンダにおいて、高度の栄養失調によって入院した子どもたちは超音波検査で胸腺を認めることができませんでした。
(前掲書p140)
 コルチゾールと同じくストレスホルモンであるエストロゲンもダイレクトに胸腺細胞や骨髄の未熟細胞を死滅させます。
 さらにエストロゲンは、コルチゾールを上昇させることで間接的に胸腺を死滅させる作用もあります。ちなみに男性でも自己免疫疾患に罹りやすくなるのは、ストレスによってテストステロンがアロマテースというストレス酵素によってエストロゲンに変換されるからです。
 これらの複数の胸腺へのダメージ作用で、エストロゲンの細胞内濃度が高い女性の方が自己免疫疾患に罹患しやすくなるのです。
(前掲書p143)


(※7)
 糖のエネルギー代謝を回すマスターホルモンは甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンは骨髄での免疫細胞の産生を促します。甲状腺ホルモンを切除したオタマジャクシ(tadpole)の興味深い実験があります。甲状腺がなくなったオタマジャクシはどうなるのでしょうか?このオタマジャクシはいつまでもカエルに変態することなく、サイズだけ大きくなったのです。つまり、甲状腺ホルモンがないと食作用でしっぽをアポトーシスさせることができなくなったということです。このことからも、甲状腺ホルモンは食作用を高めて形態形成維持に重要な働きをしていることが分かります。
 また甲状腺ホルモンは、細胞内のゴミ掃除のオートファジーあるいはダメージを受けたミトコンドリアを処理するマイトファジー(mitophagy)を促進して、形態形成維持に寄与します。これによってミトコンドリアの機能が高まることが報告されています。甲状腺機能低下症では様々な感染症に罹りやすくなります。また、炎症の場では活性型甲状腺ホルモン(T3)の濃度が下がっています。マウスの実験では、活性型甲状腺ホルモン(T3)はエンドトキシンショックから守ってくれることが分かっています。
 甲状腺が機能して初めて炎症がコントロールできます。甲状腺ホルモンはコルチゾールなどのストレスホルモンの影響を低下させてくれますので、精神的ストレスによる炎症にも有効です。
(前掲書p215)


2023年10月31日改稿
posted by T.Sasaki at 11:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 免疫について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

組織形成場の理論(免疫について 2)

こんばんは。

私は、下に記す文章を読んで、ちゃんとした免疫の働く健康な体ならば、がんにも打ち勝つと考えた。
1950年代に、アメリカニューヨークのソウサム医師が行ったショッキングな人体実験だ。
さまざまながん細胞の皮下注射実験である。
結果は、次の通り。

健常者の皮膚にガン細胞を注入した場合
局所に炎症反応が起こったが、2〜3週間で完全にガン細胞は消失した。

何らかの病気の人の皮膚にガン細胞を注入した場合
ガン細胞が消失するのに2倍の時間(4〜6週)がかかった。

ガンの人の皮膚に注入
ガン細胞が消失するのが極めて遅いか、その人が死亡しても残存していた。
(「ガンは安心させてあげなさい」p14)


この医師は、皮下注射した人たちの同意を得てなかったということで、1年の謹慎処分を受けたそうだ。
非道だ、といえば、その通り。
しかし、きっと、この医師に確信があったのだと思う。
そうでもなければ、いくらなんでも、こんな人体実験はやらない。
正常で余裕のある免疫力の下では、がん細胞でさえ太刀打ちできないのである。
この例から、免疫のイメージがわかったと思う。

がんのワクチンは、まだ成功していない。
そんなものは要らない。
ワクチンより有効なものは、正常な免疫力を保つことなのだ。

免疫について書き進める前に、場”の話を紹介する。
がんは、細胞の変異によるものではなく、病気の場で形成されていく、という理論が、19世紀にはすでに提唱されていた。

それは現在では従来の「体細胞遺伝子変異説」に代わる理論として、米国タフツ大学の生物学者であるソーネンシャイン(Sonnenschein)らによって「組織形成場の理論(TOFT:tissue organization field theory)」とまとめ直されています。
(「ガンは安心させてあげなさい」p46)


文字通り、ヘルスネス・フィールド(healthness field)とは健康の場であり、シックネス・フィールド(sickness field)とは病気の場である。
その促進形が、キャンサー・フィールド(cancer field)、がんの場。

それでは、健康の場とは、体内ではどのようになっているのか。

 健康の場(ヘルスネス・フィールド)では、エネルギーの源は糖(グルコース)あるいは果糖(フルクトース)です。このエネルギー源である糖、果糖が甲状腺ホルモンの助けをかりて酸素と完全燃焼して、最終的に多大なエネルギー(ATPという)と二酸化炭素(CO2)および水が産出されます。
 「糖の完全燃焼」で作り出される二酸化炭素(CO2)は、特に健康の場を形成・維持さらには発展させていくには必須の物質です。二酸化炭素(CO2)の生命維持作用は、組織に酸素を届ける(ボーア効果という)、細胞内外のミネラルバランス、タンパク質のアルデヒド結合のブロック、鉄によるフリーラジカル産生抑制、リッキーガット(腸管漏出症候群)の防止、血管拡張作用など多岐にわたります。
 この中でもとりわけ重要なCO2の働きは、細胞内を酸化状態にキープすることです。
 ミトコンドリアでの糖の完全燃焼で絶え間なく産生されるCO2の一部は、細胞内で炭酸イオンと水素イオンに分離して細胞内を弱酸性にキープします(さらに炭酸イオンとなって、ナトリウムやカルシウムといった細胞が過剰に刺激を受けたときに細胞内に蓄積するアルカリイオンを細胞外へ汲み出してくれる)。
 細胞内の酵素などの機能も弱酸性で働きます。また細胞内の水分も弱酸性の状態で秩序だって存在しています(これを分極した層状構造の水”という意味で polarized multilayer water [PM water]という)。
 細胞内が弱酸性でキープされているのがいわゆる細胞の初期設定状態であり、健康のバロメーターなのです。
(前掲書p53)


驚くことに、体内は弱酸性がベストなのだという。
だから、無理にアルカリ性食品を食べるのは間違っている。
そして、健康を維持するには、糖のエネルギー代謝を大切しなければならない、ということがわかると思う。

では、病気の場では、体内でどのようなことが起こっているのか、というと、要らないストレスに対応するため、糖や酸素を大量に消費している。
酸素が欠乏すると、結果的に乳酸が発生し、白血球やナチュラルキラー細胞の働きを阻害する。
これにより、炎症が加速し、細胞内はアルカリ性となる。
つまり、乳酸の発生が、体内を還元ストレスにさらすということになる。
還元ストレスを受けている状態が、病気の場なのである。(※1)
還元ストレスを引き起こす原因には、乳酸の発生のほかに、プーファ、一酸化窒素、鉄、水銀、ヒ素、カドミウムの重金属などがある。

還元ストレスという言葉は聞いたことがなかったが、酸化ストレスというのは、よく聞く。
これは、結局のところ、還元ストレスが引き金になるようだ。
悪いのは、プーファと鉄である。(※2)
その他、還元ストレスを増強する物質として、コルチゾール、アドレナリン、アルドステロン、エンドトキシンなどがある。

それでもやはり、プーファが、病気の場を作る物質としては最強だ。
正常なミトコンドリアからもフリーラジカルズが発生していて、プーファが近くにあるとそれと反応しアルデヒドを作る。
アルデヒドの発生は、細胞にとって大きなストレスになる。(※3)

これらのことは、細胞内の電子の流れでも説明できる。
ミトコンドリアでの酸素の受け渡しで、人間は生命維持のエネルギーを得ている。
これには電子が介在する。
酸素不足などで電子に渋滞が起こると、細胞内は還元状態、すなわちアルカリ性となり、鉄を触媒として、活性酸素種や活性窒素種を大量に生むことになる。
これらがプーファと結合し、アルデヒドという毒を生む。
結局、電子の受け渡しの渋滞とプーファの存在が、酸化ストレスを発生させている。(※4)
そして、この応用が、新型コロナ病の重症化阻止に役立つ。
メチレン・ブルーという色素が、活性酸素などを発生する前に、渋滞した電子を回収するのである。(※5)

冒頭で紹介した人体実験は極端な例だが、細胞レベルの実験は、世界中で行われている。
正常組織を異種の組織に移植すると、がん化する。
逆に、がん細胞を正常組織に移植すると、がん細胞は正常細胞に戻る。
したがって、がん細胞の増殖は、まわりの細胞環境による。(※6)

これらの考えを元に、病気をならない体、がんをならない体を作るために、何を食べたらいいのか、を考えているのが、崎谷先生である。
しかし、過去に「還元ストレス」ががんの原因である、と主張した人たちは、ひどい目に遭っている。(※7)
このような事実が一般人に認知されてしまうと、抗がん剤、その他の薬剤が売れなくなっては困るからだ。
だから、このようないじめが横行するのである。
崎谷先生が、いじめられないように願うしかない。

毒ワクチンには、SV40遺伝子というがん遺伝子をまぜているという。

http://takahata521.livedoor.blog/archives/19566680.htmlメモ・独り言のblog

お話になりません。



(※1)
 細胞は過剰なストレスを受けると、それに対処するために膨大なエネルギーを消費します。この状態が慢性化すると、次第にエネルギー源となる糖と酸素が欠乏してきます。
 酸欠の状態、あるいは酸素の細胞内利用がブロックされた場合(一酸化炭素中毒やシアン化合物中毒)、糖は不完全燃焼を起こし、乳酸に変換されます(これが「発酵」である)。糖は完全燃焼すると前述したように、二酸化炭素に変換されます。しかし、糖は不完全燃焼すると、エネルギー産生量が完全燃焼の7%程度しかなく、最終産物が乳酸になるのです。
 低酸素状態では、細胞から低酸素因子(HIF1:hypoxia inducible factor 1)というストレスタンパク質が放出されます。このストレス物質は、糖が代謝されてミトコンドリア内に入る際に必要とされる酵素(ピルビン酸脱水素酵素:PDH)をブロックすることで糖の不完全燃焼(=乳酸の産生)が起こります。
(中略)
 ガンの周囲環境に蓄積した乳酸は、生命場を維持していく中心となるゴミ掃除役の白血球(マクロファージ)の食作用やナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きをストップしてしまいます(これを一般的に自然免疫:innate immune と呼ぶ)。
 また、乳酸はリポリシス(脂肪分解)を起こさせます。それによって血液中の放出されたプーファ(オメガ3)は、食作用(=生命場のゴミ掃除)を根本的に止めてしまいます。これは「生命体の恒常性維持」(tissue homeostasis=morphostasis:モーフォステイシス)という基本設計を喪失してしまう最も重大な問題を引き起こします。
 その一方で、乳酸は局所に炎症を加速させ、ガンを増殖するシグナルを放出させます。
(中略)
さらにガンの増殖に必要な血流を供給するために、新しく血管を造生します(血管新生:angiogenesis という)。乳酸は最も強力な血管増殖作用をもっています。
 乳酸は、生命場を維持するための掃除役を妨害する一方で、炎症を起こさせて生命場を乱すのですから、病気の場(シックネス・フィールド)を形成する主要なファクターなのです。しかも、細胞内をアルカリ性(還元状態)にします。
 このように糖・果糖のエネルギー代謝障害(ミトコンドリアの酸素呼吸障害)によって細胞内に乳酸、NADHなどが蓄積し、最終的に細胞内が還元状態(アルカリ性)になることを「還元ストレス」といいます。
(「ガンは安心させてあげなさい」p56)

(※2)
 鉄は生体内でフリー(あるいはADPーFeなどのキレート体でも)になると、還元物質(ビタミンCなど)と反応して「ハイドロキシルラジカル」という最も危険な活性酸素(フリーラジカル)の産生を触媒します。(これをフェントン反応という)
 この危険を回避するために鉄はフェリチンというタンパク質と結合させて格納していますが、フェントン反応によって、フェリチンから遊離された鉄は還元物質(ビタミンCやスーパーオキサイド)によって、還元酸化反応を繰り返す過程でハイドロキシルラジカルを(・OH)を発生させるのです。
 細胞内が還元状態(アルカリ性)になると、フェリチンからフリー(あるいはキレート態)の鉄が放出されます。フェリチンから遊離した鉄はフェントン反応によってハイドロキシルラジカルを放出し、これがプーファと反応してアルデヒド(過酸化脂質、RCCs:reactive carbonyl compounds)を発生させます。
 これがいわゆる「酸化ストレス」の正体です。酸化ストレスとは、プーファとハイドロキシルラジカルの脂質過酸化連鎖反応(触媒として酵素を必要としないので「自動酸化」という)で発生したアルデヒド(RCCs)が生命体にもたらすダメージのことを言います。細胞内を還元状態にする還元ストレスが酸化ストレス(アルデヒドによるエネルギー代謝障害)を引き起こすのです(本当は還元・酸化ストレスと分けることに意義はない)。
 アルデヒド(RCCs)を産生する脂質過酸化反応というプーファの自動酸化は、還元状態で放出される鉄が必須です。実際に、鉄の利用をブロックする薬剤(デスフェラール)を投与すると、脂質過酸化反応を軽減することができます。
 また還元状態で遊離させる鉄によってトリプロファン・ハイドロキシレースという酵素が活性化します。この酵素はトリプロファンというアミノ酸から猛毒のセロトニンという物質を作り出します。セロトニンはストレスホルモンの一種で組織の繊維化、細胞増殖などに関わっています。
(前掲書p63)

(※3)
 アルデヒドは、タンパク質、遺伝子(DNA)に強く結合して機能・構造を変化させ、最終的にはエネルギー代謝を低下させるため、生命場は維持できないくなります。
 通常でもミトコンドリアでは活性酸素種・窒素種(ROS・RNS)といったフリーラジカルズが発生しています。このミトコンドリアから発生するフリーラジカルズは、細胞やミトコンドリアの増殖・分化、組織再生や生命場のクリーナップ(自然免疫とも呼ばれる)などに必須の物質です。ただし、ミトコンドリアから漏れ出るフリーラジカルズ(電子と酸素が反応したもの)でも、近傍にプーファ(オメガ3&6)があればアルデヒド(RCCs)を形成します。
 それよりも問題なのは、細胞内還元(アルカリ)状態で鉄との反応で強力なフリーラジカル(ハイドロキシルラジカル)が持続的に形成されることです。この反応性の高いフリーラジカルは、細胞内のプーファ(オメガ3&6)と反応し、アルデヒド(RCCs)を大量に発生させることが生命にとって危険な「酸化ストレス」を作ります。
(前掲書p88)

(※4)
量子レベルでみると、私たち生命体は糖質(グルコース、フルクトース)から、電子を引き抜いて、それをミトコンドリアで酸素に受け渡すという作業を行っています。この作業の間に、大量のエネルギー(ATP)や二酸化炭素を産出することで生命場を維持することが可能になっています。
 実は、エネルギー代謝だけでなく、外界の環境の変化(嗅覚、味覚、聴覚)、人体内での環境の変化(ホルモン、酵素反応)の感知・反応などの基本的な生命現象は、すべて電子(振動、波動)のやりとりが基本になっています。(生体内の反応を従来の「鍵-鍵穴説(lock and key hypothesis)」ではとても説明できない)。
 さて、乳酸が蓄積すると糖の完全燃焼はブロックされますが、実は乳酸を産生する糖の不完全燃焼(発酵、解糖系)さえも乳酸によってブロックされてきます。
 あるいは、その先のミトコンドリアの電子伝達系という、最終的に電子が酸素に受け渡される部分で電子に渋滞が起こると、ミトコンドリアから電子が漏れ出します。
 すると糖質からの電子は行き場がなくなり、渋滞して細胞内に蓄積します。電子が細胞内に蓄積した状態を還元状態といい、細胞内はアルカリ性になります。
 健康の場であれば、この電子は最終的に酸素が処理してくれます。しかし、ミトコンドリアで酸素への電子の受け渡しが遮断されている状態では、どこかに電子を預けないと漏電してしまいます。
 電子それ自体は非常に反応性の高い物質で、早く誰かと対[pair]になって安定したいと希求しています。過剰に細胞内に蓄積した電子を処理するために、乳酸に変換するのですが、前述したように乳酸自体がこの変換(糖の不完全燃焼、発酵、解糖系)をブロックします。そうすると行き場のなくなった電子(漏電)は、次第に細胞内のさまざまな物質と反応します。
 この漏電こそが還元ストレスから酸化ストレスへのスイッチの切り替えになります。
(中略)
 それでは具体的に、漏電によって還元ストレスから酸化ストレスが生まれるメカニズムを、電子の側面で説明していきましょう。
 漏電した電子と細胞内の鉄が反応して、最終的に細胞内の酵素を還元し、活性酸素種を放出させます。フリーの鉄(タンパク質に結合していない鉄)や細胞内でキレート状態になっている鉄(Fe2+ ADP,Fe2+ クエン酸)は活性酸素・活性窒素種(フリーラジカルズ)を作る強力な触媒です。
 細胞内にビタミンCのような還元物質が豊富にある場合も、同じく鉄と反応して、強力な活性酸素種(ハイドロキシルラジカル)を放出して、酸化ストレスに転換します。
 鉄が酸化・還元を繰り返すことで大量の活性酸素種を発生させますが、これは前述したように「フェトン反応」といいます。
 還元物質が鉄と反応することで、「還元ストレス」から「酸化ストレス」へと変換されるのですが、このときに大量に発生する活性酸素・窒素種が細胞内のプーファ(オメガ3&6)と反応することで、猛毒のアルデヒド(RCCs:reactive carbonyl compounds)が発生します。
 アルデヒドは、タンパク質、遺伝子(DNA)に強く結合して機能・構造を変化させ、最終的にはエネルギー代謝を低下させるため、生命場は維持できなくなります。
 通常でもミトコンドリアでは活性酸素種・窒素種(ROS・RNS
)といったフリーラジカルズが発生しています。このミトコンドリアから発生するフリーラジカルズは、細胞やミトコンドリアの増殖・分化、組織再生や生命場のクリーナップ(自然免疫ともよばれる)などに必須の物質です。ただし、ミトコンドリアから漏れ出るフリーラジカルズ(電子と酸素が反応したもの)でも、近傍にプーファ(オメガ3&6)があればアルデヒド(RCCs)を形成します。
 それよりも問題なのは、細胞内還元(アルカリ)状態で鉄との反応で強力なフリーラジカル(ハイドロキシルラジカル)が持続的に形成されることです。この反応性の高いフリーラジカルは、細胞内のプーファ(オメガ3&6)と反応し、アルデヒド(RCCs)を大量に発生させることが生命にとって危険な「酸化ストレス」を作ります。
(「ガンは安心させてあげなさい」p80)

(※5)
新型コロナウイルスを感染させた細胞実験では、ミトコンドリアの糖のエネルギー代謝を回復させるメチレン・ブルー(methylene blue)という色素で、ウイルスの増殖を抑制した結果が報告されています。この研究では、メチレン・ブルーがダイレクトに新型コロナのスパイクタンパク質と結合して、感染を防ぐとしています。しかし、メチレン・ブルーの主作用は、ミトコンドリアの電子伝達系において滞っている電子をフローさせることであり、サリチル酸(アスピリンの主成分)と同じく「アンカップラー」と呼ばれています。アスピリンが新型コロナウイルス感染症なる病態の重症度や死亡率を低下させるのも同じ理由です。新型コロナウイルスは、ミトコンドリアの電子伝達系複合体Tにダメージを与えるため、ここで電子が渋滞します。この電子をメチレン・ブルーやサリチル酸は回収して、過剰な活性酸素・窒素種が発生しないようにするのです。
 新型コロナウイルス感染だけでなく、脂肪のエネルギー代謝でもミトコンドリアの電子伝達系複合体Tが渋滞します。電子がここで渋滞すると、この部位で電子と酸素が反応してしまうことで、過剰な活性酸素・窒素種を産生します。これが鉄さらにプーファ(PUFA、多価不飽和脂肪酸)と反応することで脂質過酸化反応が起きます。このことによって、さらにミトコンドリアの糖のエネルギー代謝が低下します。
(「ハチミツ自然療法の最前線」p45)

(※6)
 ガンが徐々に形作られていく「病気の場」を私は特別に「ガンの場」(キャンサー・フィールド:Cancer field)と呼んでいます。ガンは細胞そのものに問題があるのではなく、その周囲の場”に問題がある、そのガンの形成する場”を特別に「キャンサー・フィールド」と呼んでいるのです。
 キャンサー・フィールド(ガンの場)を証明した興味深いいくつかの実験を紹介しましょう。
 ある正常細胞を異種の組織に移植するとガンができることが以前より知られています。たとえば、卵巣を脾臓に移植する実験では、卵巣にガンができるのです。移植された細胞にとっては、異種の環境であり、細胞間のコミュニケーションに齟齬があったと考えられます。そのために、新しい環境に適応するための十分なエネルギーを得られなかったことが、発ガンにつながったのです。移植された細胞が周囲から、エネルギーの源になるものを得られない状況に陥った場合は、ガンにすらなることができずに細胞死となって死滅していくでしょう。
 逆にガン細胞を正常細胞、特に発達過程の正常組織(胎児細胞)に移植すると正常細胞に戻ります。また、乳ガン細胞を正常の乳腺組織(あるいは乳腺組織を模した組織)に入れると、乳ガン細胞は正常の乳腺(上皮細胞)に戻ります。
 ガン細胞が正常細胞に戻るというのは驚きかも知れませんが、実験では過去数十年で何度も確かめられている事実です。これをガンの「再プログラミング(reprogramming)」といいます。
(「ガンは安心させてあげなさい」p46)

(※7)
 実は、二十世紀初頭から、細胞内に過剰の電子が蓄積する「還元ストレス」こそが、ガンの原因であるということは、ウイリアム・フレドリッヒ・コック(Wiliamu Frederick Koch)や、その研究を引き継いだアルバート・セント・ジョルジ(Albert Szent-Gyorgyi)らの先行する研究によって突き止められていた事実でした。
 その当時、米国の連邦捜査局(FBI)は、コック博士の還元ストレスを打ち消すガンの根本治療を止めさせるために二度も家宅捜索し、起訴までしました。この米国当局が後ろ盾になっている米国のメインストリーム医学界による執拗な嫌がらせによって同国を去らざるを得なくなったコック博士は、南米に移り住み、そこでガンの特効薬を開発しています。
(前掲書p90)


2023年10月31日改稿
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バラいかの成熟

こんにちは。

もう、驚き!
バラいかが、成熟している。

バラいかとは、30尾入れより小さいするめいかを、数を勘定しないで箱に入れる規格の小さいもの。
今や、これでも5000円する時代だ。
それだけ、全国的に水揚げが少ない証でもある。
30尾入れの規格は、太平洋や北海道よりも1p小さい。
ということは、太平洋の40尾入れ、ということだ。

資源状況が危機的になると、小さくても成熟し始まる、という話を聞いたことがある。
そんな中、国の指定漁業である沖底に、いつまでもするめいかを獲らせるような状況を続けていると、いか釣り漁業は、一つの産業として終焉を迎えることになる。
来年も、このまま、同じようなことをやるのだろうか。
posted by T.Sasaki at 11:03| Comment(0) | TrackBack(0) | いか釣り漁業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月01日

虎狩り名人の三代記

3回目。

「ヤンコフスキー家の人々」という本を、ある議員の秘書からいただいた。
著者は、宮古市在住の遠藤公男さんという方で、「豊かな三陸の海を守る会」の顧問だったかなあ、そういう役職にも就いている。
プレゼントされたからには、読まないと失礼なので読んでみたが、370ページもある分厚い本を、一気に読んでしまった。
ソ連崩壊時の冒険的ノンフィクションで、面白い。

ヤンコフスキー初代が、ウラジオストクの西側にある無人の半島を、牧場などに開発し、成功を納めた。
その三代目が生存しており、遠藤先生はロシアへ行って、本人から取材し、この本を書いた。
ヤンコフスキー3代とも虎狩りの名人で、あとがきに書いてあるように、もともとは沿海州の野生動物のことを本にしようとしていた。
が、話を聞いているうちに、ソ連のレーニン、スターリン時代からソ連崩壊までの政治の犠牲に、ヤンコフスキー家がなったことがわかった。
遠藤先生は、野生動物よりも、無実の人たちがラーゲリと呼ばれる強制収容所で重労働を強いられたり、財産没収されたりと、ひどい話を聞かされ、世界じゅうに散らばったヤンコフスキー家の生き残った人たちを取材して回った。

親日のロシア人であり、初代ヤンコフスキーなどは、子どもたちを日本に留学させている。
マルクスやレーニンの思想を背景に、共産主義がいいのか、自由社会がいいのか、という対立をヤンコフスキー家の中でも議論され、最終的に、共産主義の化けの皮がはがされ、アメリカの自由社会に軍配を上げた。

1962年、ソルジェニーツィンという人が、『イワン・デニーソビッチの1日』という本を出し、ラーゲリの実態を暴露している。

 69年、ソルジェニーツィンは国家の検閲廃止を訴えて作家同盟を除名された。しかし、『イワン・デニーソビッチの1日』は西側に評価されてノーベル文学賞に輝いた。73年、彼は『収容所群島』を西側で出版。ソ連におびただしいラーゲリが存在し、二千万もの人がそこで命を落としたことをさらけだした。世界の読者はあまりのことに信ずることができない。クレムリンはこの作品を否定し、ソルジェニーツィンは国外追放となった。
(「ヤンコフスキー家の人々」p354)


当時、マルクスに思想に憧れた人々は、共産主義を羨ましいと思ったらしい。
が、ソルジェニーツィン同様、それ以前に、アーサー・ケストラーという人が暴露している。

副島
アーサー・ケストラーは、もともとはジャーナリストから出発した人で、21歳でパレスチナへ行ったときに、ドイツの通信社の通信員になり、そこからパリへ行ったり、ベルリンへ行ったりしている。その間にドイツ共産党に入った男です。それからソビエトに行き、そこでソビエト体制の裏側の真実を史上初めて目の当たりにして書いた。ソビエトというのはひどい体制の国だ。西欧知識人たち(ロマン・ロランやアンドレ・ジッド、バーナード・ショー、H・G・ウェルズ)が賞賛しているような地上の楽園、労働者たちの理想の国ではない。たくさんの人が投獄され処刑されている、と書いた初めての人です。『真昼の暗黒』‘Darkness at Noon'という本です。1940年刊です。
(「世界人類を支配する悪魔たちの正体」p35)


しかし、だ。
本当は、決して、自由社会のアメリカがいいのではない。
現在の自由社会は、人間牧場なのだ。
そのことは、みんな理解していると思う。

それから、北朝鮮の親分、金正恩の祖父は、金日成であるが、これは本物ではなかったようだ。
私はこのことを知らなかったので、その記述を載せておく。

 十月十四日、平壌のモランボン公園の広場に数万の市民が集まっていた。数日前から飛行機で「金日成将軍歓迎平壌市民大会に集まれ」というビラがまかれていた。人々は手に手に花を持って公園広場に集まった。正面の舞台は大きな木の箱で、脇に平壌のソ連軍最高司令官チスシャコフらの将官が並び、スピーカーが大音響で紹介した。
「ただいま、白頭山の南面に立てこもり、抗日解放軍に勝利した英雄、金日成将軍が登場します!」
 人々が固唾を飲んで見守ると、舞台の箱から童顔の青年が姿を現した。老将軍を想像していた市民はポカンとした。金日成という若者は三十代半ばで黒い式服の両手を上げた。市民はだれかの音頭でようやく「マンセー!」と叫んで花を頭上に投げた。
 ワレリーは首を傾げた。白頭山の南面はワレリーたちの猟場だった。そこに金日成のアジトなどなかったのだ。金日成は「解放万歳」のメッセージを読み上げ、ソ連軍の将官たちに囲まれてそそくさと車で去って行った。
「金日成はあんな若造じゃないぜ。あれはソ連軍のご都合で替えたんだな」という声があちこちでした。だが、そんなことをいう者はきびしく取り締まられるようになる。金日成というロシア語の達者な若者は、ソ連軍のバックで、反対者を排除して北朝鮮の指導者となってゆく。
(「ヤンコフスキー家の人々」p187)

posted by T.Sasaki at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする