日本の漁業が崩壊する本当の理由 片野歩

世界中で魚類資源が増えているのに、日本だけが減っている。
この現実を、恥ずかしいと思うべきである。

日本の漁業が崩壊する本当の理由.jpg

すべての漁協組合長、理事、参事、そして、任意の漁業団体の会長以下すべての役員たちは、この本を読むべきだ。
読みたくないならば、「日本の漁師は大バカものだ」を参照すること。
これを認識できないならば、役職に就く資格はない!

2018年06月26日

新潟漁協の行く末

再び。

「手段の目的化に注意」という言葉から、常々、新潟漁協のことで思っていることを書く。

現在、新潟漁協は、非常に苦しいのだそうだ。
今年、職員の首を3人も切ったという(表現が悪いが、言葉狩りは御免被りたい)。
新潟漁協管内の漁船数は少なく、その水揚げ手数料や購買収入などだけでは厳しい。
外来いか釣り船から落ちるカネに、かなり頼っていると言われている。
私の記憶では、多い時で80隻ぐらいは来ていて、常時50隻ぐらいは入港していたと思う。
それが、年々少なくなり、昨年は、多くて30隻、常時、15から20隻程度。
今年は、最大20隻ぐらいであり、昨年より入港隻数は少ないと思う。

原因の一つに、いか釣り漁場の遠さにある。
往復100マイルも船を走らせるものだから、燃油高もあり、ここで商売するのは大変だ。
しかし、最大の原因は、要らない法律群である。
新潟漁協は、いろいろな組織に属していて、その申し合わせ事項にがんじがらめにされている。
漁協側は、入港している船主たちから、「この制限は緩和してくれないか」と要求されるが、漁協側は、「規則ですから、どうにもならないんですよ」と諭される。
これは、ずっと続いてきたことである。
したがって、嫌気がさして、他港へ転向した船もある。
だから、たまに外来船が何かやらかせば、漁協側としては、黙認したい気持ちにもなる。
人間だから、「かわいそうだ」という気持ちにもなる。
本当は、漁協側は、黙認したいのである。

しかし、だ。
なぜか、新潟漁協だけが標的にされ、他港に水揚げしている船頭から、その黙認内容に対し、抗議の電話が入るらしい。
もっとひどいのになると、新潟入港船の中に、そういう抗議をする人もいると聞く。
ここに黙認内容を書くわけにはいかないが、腹を割って話をすれば、「この申し合わせはおかしいよな」となるほどのことだ。
このことに関して、入港している船頭たちは、みんな自信を持って言える。
ただ、県外船であるから、おとなしくしているしかない。
(本当に、新潟港入港船は、よってたかって、いじめに遭っているようなものだ)

そこで、一応、私は、組合職員に提案しておいた。
外来船から出資金を募り、準組合員にして、組合構成員の意見を上げる、という形にすれば、新潟漁協側もずっと楽になるのではないか、と。

現状では、このような原因から、新潟漁協はどんどんダメになり、いずれ、佐渡島漁協に合併されることになるだろう。
そうなった場合、佐渡島漁協の人たちは、新潟港の漁業施設をどうやって維持していくのか。
それとも、冷徹に、新潟市の漁業そのものを廃棄するのか。

この責任は、申し合わせ事項を定めたすべての組織にあると思う。
申し合わせなどの規則は、ちゃんとした目的があって、その効力を発揮する。
しかし、結果として、こんなに漁協の職員を切るほどの規則のほうに無理があるのであり、逆に考えてみれば、規則の目的自体に、意味がなくなっているのである。
つまり、外来船に規則を守らせる、というのが、目的となってしまって、それが不幸を生む原因になっているのだ。

「手段の目的化に注意」という言葉から、つい書いてしまった。
このことで、もしかして、私は、新潟県の許可を切られるかもしれない。
そうなったらなったで、しかたがない。

その時は、さよなら。
posted by T.Sasaki at 17:33| Comment(0) | 漁業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「水危機 ほんとうの話」を読んで

こんにちは。

ちょっとした入門書、とはいっても、教科書みたいな本を読んだ。
著者である沖大幹さんは、水全般の学問のことを水文学と呼び(天文学ライクに)、「水危機 ほんとうの話」にわかりやすく書いている。
水資源は、一般的に、地球を循環する水蒸気、液体である水、固体である氷などであるが、水循環はそれだけではない。
バーチャルウォーターと呼ばれる、人間の食料などに使用される水なども含まれている。
であるから、食料の輸入大国である日本は、つまり、水を大量に輸入しているのである。
今日は、本の主題である水文学とは、少し趣の異なる引用のしかたをするが、考え方として、必要なものだと思うから。

このように、世界的なグローバリゼーションの進行によって水はローカルな財から、グローバル財になった側面がある。バーチャルウォーターを輸入しているから、という心理的な問題ではなく、自分たちの生産活動、消費活動が海外における水の適切な管理によって維持されているのである。グローバリゼーションがもたらした緊密な関係を支えているのは水だけではなく、各地の安定した生産と消費であり、それを支える人や社会システムである。だからこそ食料を大量に輸入している日本だけではなく、大量に輸出している国にとってでさえ、他国の社会的な安定と災害軽減が自国に対するのと同じように重要な世界になっているのだ。
(「水危機 ほんとうの話」p170)


世界の紛争の原因は、宗教や政治思想の急進的勢力によるものが多いと思うが、特にひどいのは、イスラエルとそれに敵対的である中東の国であるように思う。
厄介なのが、イスラエルの味方がアメリカであること。
これに死の商人たちが群がるから、この地域の紛争が解決するのは、非常に時間がかかるように思う。
しかし、当事者たちの国は、バーチャルウォーターに救われているように思うのだが、そのありがたみを彼らは感じているのだろうか。
上記の引用のように、もし、世界の主な農業生産国が、戦争に巻き込まれたりしたら、たちまち、バーチャルウォーター不足になるのは目に見えている。
農業生産国と原油生産国の安定は、日本だけではなく、世界の生命線である。
したがって、どこの国の戦争であれ反対する、という態度は、正しいのである。

もう一つ。
環境問題の本を読んで、真剣に、自分のことのように地球環境を考えたことのある人なら、次の引用は救われるかもしれない。
一つ目の引用は問いであるが、二つ目がその答えである。

「人類は死んだ方がましでしょうか?地球温暖化、あるいは地球環境問題を考えると」
こういうナイーブな質問にも真剣に答えてくれそうな方に出会う度に尋ねたが、誰も「生きていていいよ」とは言ってくれなかった。かといって「死んだ方がいいよ」とも言われなかったのでそのまま悩みを忘れたことにして生きていた。
(前掲書p264)

「手段の目的化に注意」
 本来は人類が幸せに暮らすという目的達成のひとつとして地球環境の保全という手段があるのに、主客転倒して人類が滅んでしまっては元も子もない、ということである。つまり、地球環境さえ保全されればヒトの幸せはどうなっても良いというわけでもなく、地球温暖化を阻止できても、持続可能性や快適な暮らしが損なわれるのなら、それは手段が目的化してしまっており、本来の目的達成を阻害しない別の手段を考えた方がいいのである。
 これに気づいた遠因にはいろいろあり、生物多様性の保全は絶対善である、という従前のドグマに対して、新たに出てきた生態系サービスという考え方が、人間社会に貢献するからこそ生態系の保全は重要である、という人間中心主義に回帰していたことに影響されたという側面はあるだろう。また、ある年の「科学技術研究費の使い方」という東京大学が作成して配布した小冊子の表紙に「目的は手段を正当化しない」と書いてあった影響もあるかもしれない。言わずもがな、これは、優れた研究のためだからといって、科学研究費補助金の不正経理が許されるわけではない、という警告である。
(前掲書p265)


だからといって、資源浪費をじゃんじゃんやれ、というのではない。
資源は「分け合って」という考えが基本であり、何で読んだか忘れたが、日本の「コタツ文明」すなわち、暖を分け合う、という考え方をすべてに当てはめていくことが、持続可能性のヒントになる。
分け合うことで、われわれ日本人は、満足感を味わうこともできる。
これがコタツ文明である。

水文学の本の紹介とは、かなりかけ離れていたとは思うが、大学の教授のような人たちも、自分の考えと社会との妥協点をいつも悩んで探しているのだろう。
posted by T.Sasaki at 17:26| Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月23日

安いひらめとまぐろ

こんにちは。

最近、安くなったするめいかであるが、それでも平均単価2300円台であり、今日は、突然3500円もした。
昨日から各地パッとしなくなった。
今朝の主な水揚げ産地は、北海道と新潟のみなで、どちらも薄漁だ。
その中で、珍しく、私は健闘している。
それでも、税込みリッター100円の重油は、何とかならないのか。
物価が高いほうがいい、というアベノミクス、日銀方針は、私たちとって、とんでもない話だ。

出港して航海中、例の女船頭の定置網らしきものを発見したので、Iさんに電話して聞いたら、やっぱりそうらしい。
そのIさん、ひらめが超安くて、休んだほういい、ということで、自主休漁。
確かに、採算に合わないなら、休んで魚を増やすのも必要だと思わされた。
学ぶべきことである。

まき網のまぐろが大漁で、一気に水揚げするためか、東京市場もまぐろが安いらしい。
まき網団体は、いつも魚価下落団体。

一方、佐渡のDさんは、小型まぐろ延縄の割り当てが少ないのが、超不満。
全国の小型まぐろ延縄漁師たちは、みんな怒っているそうだ。
なぜか、まき網に対して、漁獲割り当てを優遇しているらしい。
これは、まき網船団を所有している会社への、水産庁から天下りが原因ではないか、ということをあちこちで耳にする。
何と、7月以降、Dさんの30キロ以上のまぐろ割り当ては、1年間で、たったの80キロぐらいだそうだ。
つまり、1匹か2匹。
これも、とんでもない話である。
何年もやっていて、すでに実績もあるのに、1年でたった80キロ!
こうなったら、もう個人売買をやり、実力行使するのも一つの方法である。
いくら水産庁が法律を作っても、何が良くて何が悪いか、それくらいの判断はみんなができる。
全国の延縄漁師が言うことを聞かなくなったら、水産庁は、国際的に矢面に立たされることになる。
結局は、悪いのは、水産庁の施策なのである。

中身はよくわからないが、全国の定置網も同様で、操業自粛状態のところもあるようだ。
休業手当がつくようではあるが、定置網が休んでしまうと、各産地市場の経済が衰退してしまう。

全国の県漁連の会長たちは、事の良し悪しをよく考えているのだろうか。

さて、ビックカメラに、安い酒でも仕込みに行ってくるか。
家電屋さんに、酒があるなんて知らなかった。
何でもあるみたい。
一杯やったら、寝る。

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2018年06月19日

2そう曳きトロールは、世界中で全面禁止すべき

こんにちは。

今朝、新潟港へ入港したら、でっかいまき網が荷揚げ岸壁を占領していた。
八戸の惣寶丸である。

惣寶丸.JPG

通常、どこの港でも、利用している荷揚げ岸壁や氷岸壁は係船禁止である。
こんな船がいたため、今日の新潟魚市場では、2隻ずつの水揚げとなり、入港船がたったの17隻しかないのに、1時間待ちであった。
運搬船がいないところを見ると、他港へ運んだか。
新潟沖合で獲ったマグロを境港まで運んでいるということをよく耳にするが、惣寶丸もそうやったのかもしれない。
でも、水揚げ岸壁に係船する必要はないと思うのだが。

この会社は、八戸で非常に力があるようで、まき網専用でノルウェー方式高鮮度維持システムの魚市場を市に作らせたらしい。
しかし、そのシステムを使っていない、というニュースを昨年やっていた。
税金の無駄遣いである。
このでっかいまき網は、水産庁補助で建造した次世代型のまき網であり、高鮮度という付加価値をさばにつけ、大量に獲る漁業からの転換が目的であった。
しかし、実際には、運搬船に低鮮度の魚を運ばせている。
この船は、船内で瞬間凍結できるとされ、八戸前沖の「銀さば」として、刺身で提供されている。
転換の目的は、ないがしろにされ、残念ながら、従来の大量漁獲の道具となった。
これでは、水産庁の補助が、乱獲漁法の船を増やしたことになるのだ。

仕込みなどが終わって、風呂に行こうとしていたら、海上保安庁の職員が、航海の指導に来て(毎年来る)、一緒に、運よく(運悪く?)水産庁の職員も来た。
私は、ここぞと言わんばかりに、水産行政の不備を訴えた。
最悪の岩手の2そう曳きトロールを、なぜいつまでもやらせるんだ。
ここに書いていることで、集中砲火を浴びせたが、途中であきらめた。
だって、何も返答できずに、「下っ端なもので」としか言わない。

終わって歩きながらであるが、彼らから、するめいかの産卵場といわれる東シナ海のことを、ちらっと聞いた。
何と!中国にも、2そう曳きトロールがいて、東シナ海で漁業をしているのだそうだ。
するめいかを獲っているかどうかはわからないが、これでは、本当に東アジアに魚がいなくなる。

世界中で、2そう曳きトロールは、禁止すべきである。

現在、日本海するめいか漁は、最悪のペースである。
posted by T.Sasaki at 14:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月13日

今年も鷲崎に来た

再び。

新潟という街は、まるで、漁港を中心にできあがった、と言ってもいいくらいである。
駅も歩いて20分くらいのところにあるし、スーパーなども近くにあり、食料品の仕込みはすぐにできる。
コンビニは、3分。
酒や産直(ぴあ万代)は、1分。
パチンコ屋は、5分。
飲み屋のネーチャンたちは、駅前と古町にいて、どっちも歩いて20分くらい。
カネを無くすには、もってこいの街である。

これに嫌気がさして、天候悪いのに、佐渡島の鷲崎に来た。
非常に静かだ。
世界が違う。

鷲埼漁港.JPG

そこで、「週刊現代」を読書した。
もちろん、鷲崎でこんなものを売っているわけもなく、新潟から持ってきたものである。
だいたいにして、佐渡島にコンビニがあるのかどうか。
15年くらい前に両津港に入ったことがあるが、その当時は、まだコンビニはなかったと思う。
したがって、まだ佐渡島でコンビニを見たことがない。
ということは、私の認識では、「佐渡島にはコンビニはない」のである。

「週刊現代」6月23日号の『75歳過ぎて「食べられなくなる人」の特徴』に、「肉より魚ばかり食べている」というのが書いてある。
「糖質制限ダイエット」もある。
まるっきり与太記事である。
週刊現代に限らず、週刊誌は、こうやってみんなを不幸にする。
私の父など、魚しか食べてこないのに、食欲がありすぎて困っているほどである。

黒い炭水化物」で紹介したように、魚は悪くないし、炭水化物でも、黒い炭水化物を食べれば、それでダイエット効果もあるから、もう糖質制限の話は古いのである。
果物も糖質多くて、それでも、ある特定の果物を食べなければ、太らないことがわかっている。

どの週刊誌記事に言えるのだが、たった数人の話を載せて、読者を誘導する手法をとっている。
「世界一シンプルで科学的に証明された食事」のように、何万人というデータから、結論を導くことがない。
黒い炭水化物」の後半の引用部分あるように、医者や栄養士は、これらの分野の知識が足りないのである。
ほんの数人の医者がこうだから、という話は、もう信用できるものではない。

(ただ、今号の『名医20人が自分で買って飲んでいる「市販薬」』を目当てに買ったから、まあ、いいか)。
posted by T.Sasaki at 16:05| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

飲み食べ放題

こんにちは。

5連休してしまい、その間、誘われたりしていっぱい飲んでしまった。
焼肉飲み食べ放題と居酒屋飲み食べ放題を制覇(笑)。
新潟の物価は高く、もちろん普通の居酒屋も高い。
刺身など、少量で500円もすることもあるから、むしろスーパーMarusinで買って船で飲んでいたほうがずっとお得であり、飲み屋のネーチャンに騙されて、“同伴”なんかしたら、軽く3万円くらい使ってしまうから、最近では、船にこもっていた。
その鬱憤を晴らしたのが、飲み食べ放題。
おかげで肝臓の寿命が少し縮まったと思う。

友だちに無理やり引っ張っていかれた小料理屋のママさんが、酔っ払うとエロばばあで、“同伴”の話になると、今の“同伴”は、軽すぎると。
昔の“同伴”は、ホテルにまず行ってから、客を店に連れてくるのを言ったのだそうだ。
だから、今の“同伴”にカネをつぎ込むのは、「バカじゃねーの」と言われてしまった(笑)。
エロばばあは、胸の谷間やパンツまで見せて、一緒に行った30代の若者を誘惑していた。
こんなの、いるんだなあ。

この連休で地元漁師のEさんやDさんとも飲んだが、その際、資源管理に話がおよんだ。
一人は、小型底曳きをやっていて(9.7トン型で、新潟港に3隻のみ)、もちろん、かけまわし。
サイズ制限や漁期制限を設けて操業しており、サイズ制限に関しては、網目を大きくし、なおかつ、身網に桁をつけて、網目が開くようにしているそうだ。
桁をつけないと、網目は皿のようになるから、小さい魚は抜けない。
小型のかけまわしでさえ、このように取り組んでいるのに、岩手の2そう曳きは、「何でも獲れ」だから、世界有数の漁場にも魚はいなくなるのである。

もう一人のDさんは、おもにまぐろ延縄をやっていて、翌日に東京へ行った。
まぐろの漁獲制限のことで、お役人たちと話す機会を与えられた、とかで、私も翌日の新幹線に誘われた(笑)。
結果は、予想通り、何の変化もなかったようだ。
お役人たちは、小型漁師たちのガス抜きのためにやるのだろうが、小型側にすれば、新幹線代と時間の無駄である。

このDさんが、私に教えてくれた本、それが、このブログの最初に貼り付けてあるものである。
日本の漁師は、大バカものたちなのである。
posted by T.Sasaki at 15:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月09日

黒い炭水化物

こんにちは。

今月に入って高値に支えられ、少し順調になりつつある日本海するめいか漁であったが、悪天候予想で明日から4連休くらいを覚悟しなければならず、ガクッときている。
しかし、漁を休めば、それだけ魚が増える、と考えれば、気休めになるか。

「世界一シンプルで科学的に証明された食事」。
これ、デブの人は必見。
デブ以外も必見。

今まで、私が紹介してきた「炭水化物=悪」論は、少し違う。
人間の体は、栄養成分に対し、それほど敏感ではないらしい。
栄養成分というより、食べ物そのものに注目すべきなのだという。

例えば、果物であるが、これは、糖質を食べているようなものだから、あまり摂取しないほうがいいように感じられるが、そうではない。
糖質といえば、炭水化物であるが、これも、すべての炭水化物が悪い、というものではないらしい。

炭水化物には、白い炭水化物と黒い炭水化物がある。
白いほうは、精製された白米や小麦粉、それを原料とするパン、うどん、と言ったところか。
黒いほうは、このブログで少し書いたことがあるが、玄米や精製していない全粒粉と呼ばれる小麦粉、そして、蕎麦。

白い炭水化物は、血糖値を上げ、動脈硬化による脳卒中や心筋梗塞のリスクを上げることがわかっている。
もちろん、デブになる。
一方、黒い炭水化物は、糖尿病や動脈硬化による病気のリスクを下げ、ダイエットにも有効である。
がんリスクは、大腸がんのみ、下がっている。
なぜ黒い炭水化物が良いのか、というと、精製されないがために残った食物繊維や他の栄養成分による影響によるものではないか、ということである。

この本に書かれているものは、すべて、ある食べ物を摂取した群と摂取しない群を比較検討した研究を取り上げ、さらにそれらの研究の集合体(メタアナリシスという)から、結論を導きだしたものである。
栄養成分ではなく、食べ物そのものを研究している。
食べ物には、いろいろの複数の栄養成分が含まれているから、それが体内に入って、どう作用するかは、本当のところわかっていない。
だから、食べ物そのものに着目する。

理想の食事は、地中海式の食事が理想とされ、次のように具体的に書かれている。

普段どおりの食事を食べながら、塩分と白い炭水化物を減らす代わりに、オリーブオイル、ナッツ類、魚、野菜と果物を増やすことが最も健康に良い食事であると言って良いだろう。
(「世界一シンプルで科学的に証明された食事」p69)


面倒くさいので、あとは、箇条書きに書いておく。

黒い炭水化物以外の糖質は、上記の病気リスクを上げる。
例外は、ダークチョコレートであり、血圧を下げ、アルツハイマー病や脳卒中のリスクを下げる。

鶏肉以外の肉や加工品は、全死亡率を上げる。
動脈硬化による脳卒中や心筋梗塞、がんリスクを上げ、特に、大腸がんのリスクが上がる。

大人の乳製品のとり過ぎは、前立腺がんや卵巣がんのリスクを上げる。

野菜や果物は、全死亡率を減少させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクも下げる。
しかし、がんリスクに対しては、有意な減少は認められない。
ただし、イチゴやメロン(特に赤肉腫のマスクメロン)は、糖尿病のリスクを上げる。
また、フルーツジュースは、同じく糖尿病のリスクを上げる。
ジュースは、不溶性の食物繊維が除去され、果糖が強調されるから、糖質アップされる。
だから、ジュースより、果物そのものを食べろ、というのだそうだ。
ちなみに、野菜類に含まれるβカロチンは、それそのものをサプリメントから摂取すると、全体的な死亡率が向上し、膀胱がん、心筋梗塞のリスクが上がり、喫煙者では、肺がん、胃がんのリスクも上がることがわかっている。
ある栄養成分だけを摂取することは、むしろ健康によくないこともある。

魚は、心筋梗塞やがんのリスクを下げる。
特に、乳がんリスクを下げる。

私は、今まで、食事指導に関し(特に白米)、医師や国は、まるっきり役に立っていない、と書いたことがあると思う。
むしろ、医師や米作農家という商売のために、食事指導するのをやっていないのではないか、とさえ書いた。
実際には、当事者にそういう悪意はないものの、著者の津川友介(UCLA助教授、医師)さんが本の冒頭で書いている次の記述には、思わず笑ってしまった。
そんなものだろう。
引用しておく。

医学部ではあまり食事や栄養のことを習わないため、医師は食事に関するきちんとした知識を持っていないことも多い。アメリカやイギリスの医学部ですら、食事と栄養のことを十分時間をかけて教えていないことが問題視されているのだが、日本ではもっと遅れていると思われる。
 栄養士は、「このような食事をすれば健康になる」というルールを一般人に指導することに関しては秀でているが、そのルールがそもそも本当に科学的根拠にもとづく正しいものであるかどうかを判断するための必要な専門知識(統計学や疫学という学問)を持っていない人が多い。
(前掲書p10)

農林水産省は農家を保護しなければいけない立場であるので、それを「忖度」して白米は糖尿病のリスクを増やすのであまり摂取しない方が良いとは書きづらいのかもしれない。実際に、2015年に厚労省が、玄米や麦など精製度の低い穀物を含む弁当やレストランのメニューに「健康的な食事」のマークを付けてお墨付きを与えようとしたことがあったのだが、自民党の農林水産関係の会合で「白米の生産に影響が出る」ということで取りやめになった。
(前掲書p11)


この本は、新潟のジュンク堂書店で、すでに、ベストセラーの書棚に並べられていた。
白米生産に味方する勢力や言論機関が、みんなからバカにされるのは、時間の問題である。
岩手県は、「玄米の時代」を先取りすべきである。
posted by T.Sasaki at 15:59| Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月07日

「“福島原発”ある技術者の証言」を読んで

こんにちは。

相変わらず、大不漁の日本海するめいか漁である。
いか釣り船のほうがするめいかより多い、と言ってもいい状態だ。
先日、出港して航海中、自然要因が大不漁の原因であろうが、やっぱり、まき網漁業や沖底漁業は良くない、と無線機で言っていた人がいた。
たいていの小型船は、みな同じ認識なのである。

さて、暇人は読書。

名嘉幸照さんの書いた「“福島原発”ある技術者の証言」を読んだ。
まずは、津波浸水による全電源消失の責任は、誰にあるのか、について。
非常用ディーゼル発電機が、福島原発では地下にあって浸水した、というのは有名な話であるが、このことについて、震災以前、すでに、筆者の名嘉さんから福島原発へ提案があり、「東電の技術スタッフも認識していたと思う」とした上で、次のように記述されている。

 今回の原発事故で、もしGEに責任があるとすれば、基本設計の時点で非常用ディーゼル発電機を地下に置くという「エバスコ」の設計を採用したことだろう。
 しかし、それに異を唱えず、危険を認識しながら、非常用ディーゼル発電機を高所に移す措置を講じないまま長年、放置した点で、東電も責任は逃れられない。
(「“福島原発”ある技術はの証言」p182)


その他、海水ポンプがすべて使えなくなったのも致命的であり、これも、震災前から検討課題とされていた。
つまり、東電の責任は非常に大きく、当時の上層部の一声があれば、これらの致命的な欠陥は、すべて改善されていたのである。

名嘉幸照さんは、東北エンタープライズという東電の協力会社の会長であり、福島第一原発の1号機からのことを知っている(1号機から手をかけているわけではない)。
したがって、反原発運動もいろいろと見てきたのであるが、彼にすると、もっと真面目に勉強してほしかったと注文をつけている。

 たしかに反原発の方々の意見の中に貴重なものもあった。が、全般的に見ると、反対すること自体が目的となっている側面が強く、広く国民を巻き込む力に欠けていた。
 事故があれば、ひたすら非難するだけ。どうしてその事故が起きたのか、原子力行政や東電のありよう、原発プラントが抱えるリスクまで深く理解し、掌握したうえで、「原発反対」を言っていたかどうか。
 深い知識と判断力を持つ人もいたが、数は少なく、圧倒的多数は理性よりも、感情的に「反対」を叫んでいるように見えた。
(前掲書p239)


だから、この本を、反原発の人たちは、読むべきである。
すぐに読める簡単な本で、253ページあっても、集中すれば3時間くらいで読めると思う。
私も反核燃運動に少し関わったりしたが、「反対すること自体が目的」という言葉には、同感せざるをえないことが多々あった。
運動家は、やりすぎの傾向があるように思う。
とにかく屁理屈でもくっつけようとする。

ここで、彼らにもう一つ、読んでもらいたい本を紹介する。
「99.9%は仮説」という竹内薫さんの書いたものである。
題名が結論であるが、これは、人間関係に対する処方箋にもなっている。
それは、間主観性、と呼ばれている。

 ●わたしの頭のなかは仮説だらけ
 ●あなたの頭のなかも仮説だらけ

 この二点を理解することから、科学の第一歩ははじまるのです。
 科学的な態度というのは、「権威」を鵜呑みにすることではなく、さまざまな意見を相対的に比べて判断する“頭の柔らかさ”なのです。
(「99.9%は仮説」p233)

 間主観性というのは、ようするに、「相手の立場になって考えてみる」というだけのことなのです。
(前掲書p233)


この本も簡単で、すぐに読めると思う。
冒頭で、飛行機の飛ぶしくみが、現在でもまだよくわかっていない、というのからして、まあ、面白いといったらいいのか、そんな本である。

であるから、原発推進派、反対派とも、対立しすぎて、互いへの理解がなく、社会に対して、役に立っていない、ということなのだ。
これが、おそらく、次のことを解決できないでいる理由の一つにもなっていると思う。
それは、現在の技術革新のなさ、である。

 原子力発電といえば、多くの人は最新鋭の技術をこらしたプラントを思い描くだろう。たしかに、かつては最新の技術でピカピカの原子炉がつくられた。ところが、いつの間にか日本の原発は「化石産業」になってしまったと私は思う。技術の改革、イノベーションにとにかく後ろ向きなのだ。
(「“福島原発”ある技術者の証言」p178)


電力会社側も監督官庁側も、リスクばかり気にして、新しい技術を取り入れることを嫌がる。
そのため、「旧式の機器がけっこう目につき、ガッカリする」のだそうだ。
これには、反原発団体の目を気にしている部分もあると思う。
小さなミスも見せられない。
逆に、「それぐらい、新しいものに変えろよ」と反原発側が言ってやれば良かったのだ。
互いを理解する、とは、こういうことだと思う。

安倍政権の推進する原発輸出の件であるが、名嘉さんは、反対している。
それは次のような理由からである。

たとえばトルコに原発を売ったとしよう。トルコは日本同様、地震国である。仮に、大地震が日本の売った原発を襲い、事故を起こしたらどうするか。放射線災害が発生したとき、
「そちらで対処してくれ」
 と言ってすむのか。プラントの売り主として、責任をとらなくていいのか。
 私は責任をとらないといけないと思う。
 GEが売り込んだ福島の原発事故では、アメリカが陰に陽に、日本を手助けしている。日本が原発を売った場合も同じだ。万が一の場合は、日本人が面倒を見なくてはいけない。
(前掲書p191)

 原発を引き渡した後の故障やトラブルに、日本の技術者が対応する能力があるかも疑問だ。福島の原発事故以後、国内で原発の専門家、技術者の人気が下がり、人材供給に不安を抱える現状を見ると、他国の原発にまで手が回るか、私は懐疑的だ。
(前掲書p193)


そして、どうせやるなら、廃炉ビジネスを確立したほういい、としている。
その他、双葉郡アイランド構想もいいアイディアだと思う。
最後に、ちょっとショックを受けた。

 天界で再開したら、叔父さんはなんと言うだろう。
 お前は、よくやったよ、と慰めてくれるだろうか。半世紀経っても、ダメなままだったな、と叱られるだろうか。
 
 私はまだ、確信が持てないでいる。
(前掲書p247)


自分に起こった出来事を重なるものがあり、私はこみ上げるものを押さえることができなくなり、涙ぐんでしまった。
ノンフィクションのけっこうな物語である。
posted by T.Sasaki at 14:47| Comment(0) | 福島原発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする